15.向かい合わせの夜
その夜の見張りは、先にキャサリンとエンジェルが務めることになった。遠慮するのも構わず、二人はテオドールとエリオットをテントの中に押し込む。
「それじゃ、朝までごゆっくり」
そう言って、エンジェルはテントのフラップを、隙間が無いようにピタッと下ろす。真っ暗な中でテオドールとエリオットの体が密着していた。
二人はもう一度唇を重ねる。初めは遠慮がちに、次第に貪るように唇や舌を食んできた。
「エリオット、好きだ」
テオドールが抱いた腕に力をこめる。
「オレも好きだよ、テオドール」
エリオットも精一杯の力で抱きしめ返した。
「……ちゃんと、温かいな」
テオドールがエリオットの頬にそっと触れる。エリオットがその手を包み込んだ。二人の唇がもう一度重なる。
「……テオドールは、どうしたい?」
「エリオットがしたいように。私はそれが一番嬉しいから」
夜風がそっと吹き込んで、テントのフラップがわずかに揺れる。静寂の中、満月だけが優しく見守っていた。
*
テントの外で、キャサリンは焚き火を見つめながら頬を染めていた。
「……エリオットとテオドール、ちゃんと気持ちを伝え合えたんだね」
「ええ、やっとね。時間かかりすぎよ」
エンジェルは肩を竦めるが、その声はどこか嬉しそうだった。
「でも……何か、ちょっと羨ましいな」
「ん?」
「本気で誰かに想ってもらえるって、いいなあって」
エンジェルは一瞬だけキャサリンを見て、そっと笑った。
「アンタだって、いつか巡り合うわよ。ちゃんと“中身”を見てくれる誰かにね」
「えー、中身だけ? 見た目も褒めてくれなきゃ困るな~」
「はいはい、欲張りお嬢さん」
焚き火がパチリと弾ける。夜はまだ深く、けれども、どこか温かだった。




