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ヒロイン志願ですけど、男同士の恋愛(ボーイズラブ)を応援しますわ!  作者: 石月 主計
第1話:想いは口にしないと伝わらないですわ!

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13.あと一歩の勇気

キャサリンは、たいまつで地面を照らしながら、目を凝らした。後ろを歩くテオドールも注意深く辺りを見渡す。


「……こんなに暗いと、ちょっとした光でも目立つはずだよね」


キャサリンが、足元の草をかき分けながら言った。


「ああ。何か反射してないか、よく確認しないとな」


テオドールの声は落ち着いていたが、どこか張り詰めたものを感じさせる。


「……ねえ、テオドール。あの、さっきはありがとね。お守りの話のとき、“仲間”って言ってくれて」


「……礼を言われるようなことじゃないさ」


「でも、なんか嬉しかったよ。そういう風に思ってくれてるんだなって」


テオドールは、わずかにうつむきながら歩みを進めた。


「……最初は、ただの仕事だと思ってた。でも、気づいたら……いつの間にか、大切な人を守りたいと思ってる自分がいた」


キャサリンはその横顔をそっと見上げる。どこか寂しげな目をしていた。


「特に、エリオット……でしょ?」


ぴたりとテオドールの足が止まる。


「……分かるよ。すごく、分かる。あの人、なんていうか……放っておけないよね」


しばらくの沈黙のあと、テオドールが小さく笑った。


「……あいつ、気は強いけど本当は臆病だ。俺とは……似てるんだと思う」


「だったら、ちゃんと伝えてあげたら? テオドールの気持ち」


「……それができたら、苦労しない」


「うん、そうだよね。でもね」


キャサリンは月の光を仰ぎながら、柔らかく笑った。


「想いは口にしないと伝わらないよ」


その言葉に、テオドールは何かを飲み込むように息を詰まらせた。



暗闇の中、エリオットとエンジェルは少し距離を置きながら、地面や茂みに視線を走らせていた。


「……ねえ、エリオット」


「なにさ、集中してるのに。何か光った?」


「違うわ。あんたの顔に書かれているのよ」


「……え、何か書いてある?」


エリオットは両手で顔をペタペタと触った。


「“気まずいです”って文字が浮かび上がってるわ」


エンジェルが片眉を吊り上げてニヤリと笑う。エリオットはため息まじりに肩を竦めた。


「……そんなに分かりやすいかな、オレ」


「分かりやすいっていうか、見てるこっちがムズムズするのよ。ねえ、そんなに逃げてばっかで、後悔しない?」


「……逃げてるつもりなんか、ないけどさ」


「じゃあ何? 言いたくないの? それとも……言って、傷つくのが怖いの?」


エリオットの手が、わずかに止まった。


「エンジェルって、なんでそう……えぐるようなこと、さらっと言うんだよ」


「経験よ。私も黙ったまま終わったことがあるから」


その一言に、エリオットが初めてエンジェルの方をまっすぐ見た。


「……そうなんだ」


「でもね。言わなかったことをずっと後悔してるの。だから決めたわ。“怖くても口にする”って」


エリオットは黙ったまま、目線を地面に落とす。夜の静寂の中で、彼の喉がゴクリと鳴った。


「……怖いよ。本当のことを伝えたら、嫌われるんじゃないかって」


「じゃあ、一つ言っておくわ」


エンジェルが一歩、エリオットに近づく。たいまつの炎が二人の顔を明るく照らした。


「“怖い”って言えるのは、アンタが彼を大事に思っている証拠よ」


エリオットの瞳が少しだけ揺れる。


「……言えるかな、オレ」


「大丈夫。今の顔で言えば、きっと全部、伝わるわよ」


エンジェルの言葉に、エリオットはこくりと頷く。はにかんだ笑顔には、キラリと涙が光っていた。

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