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ヒロイン志願ですけど、男同士の恋愛(ボーイズラブ)を応援しますわ!  作者: 石月 主計
第1話:想いは口にしないと伝わらないですわ!

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12.守りたいもの

森の奥へ進むほど、道は険しくなり、ごつごつとして歩きづらくなっていた。四人とも荷物を背負っているせいで、足取りはどんどん重くなる。


エンジェルでさえ珍しく口数が少ない。けれどキャサリンが気になっていたのは、テオドールとエリオットが、相変わらず目を合わせようとしないことだった。まるで、どちらかが先に声をかけられるのを待っているかのように。


ようやく森の最深部にたどり着く頃には、夕陽が木々の隙間から赤く差し込んでいた。


「もう、クタクタだわ……」


エンジェルがどっさりと地面に腰を下ろし、両脚を投げ出す。


「でも、いい運動になったでしょ?」


キャサリンが笑顔で声をかけると、エンジェルはうんざりとした顔を向ける。


「アタシたちはね、運動じゃなくて“冒険”をしてるの。お忘れなく」


「だったらマスターも連れてくれば良かったね。ちょっと痩せて素敵になったかもよ?」


「やだ、それじゃ魅力が半減しちゃうわよ。ふくよかだからこその推しなのに」


そんな軽口が飛び交い、自然と笑い声がこぼれた。今日になって、四人でこうして笑ったのは初めてかもしれない。


「このあたりに月影の記憶があるのかなぁ……」


キャサリンがふと辺りを見回す。だが、それらしきブローチは見つからない。


「あのおじいさんの話では、この辺りに落としたってことだったわよね。獣とか魔物とかに持っていかれてなければ……」


「満月の光で輝くんでしょ? だったら、夜を待つしかないね」


キャサリンが空を見上げる。幸い、雲一つない晴天だった。まるで、四人に味方してくれているかのように。



焚き火を囲んで、空に浮かび始めた満月をぼんやりと見上げながら、キャサリンがぽつりと呟いた。


「ねぇ……月影の記憶って、なんだかお守りみたいだよね」


その言葉に、皆の視線がブローチのありかを探すように動いた。まだ見つかっていないけれど、確かにどこかにあるはずと誰もが信じていた。


「願いを叶えてくれるわけじゃないけど、なんか……持ってると気持ちが強くなるっていうか」


キャサリンの言葉に、誰からともなく頷きが返ってくる。


「ふーん。じゃあ、アンタは何を守りたいの?」


エンジェルが問いかけると、キャサリンは少しだけ考えてから笑顔を見せた。


「うーん……“想いが届く瞬間”かな。誰かだったり自分だったり。そういうのって、尊いでしょ?」


「……アンタらしいわね」


エンジェルは肩を竦めたが、どこか優しい目をしていた。


「俺は……“自由”かな」


エリオットが手元の矢を弄びながら、ぽつりと呟く。


「誰かに決められたくないし、誰かのために自分を偽るのも嫌だ。……だから、自分で決めて、自分で守りたい」


「それって……カッコいいな」


キャサリンが素直な感想をこぼす。


しばらく沈黙が落ちたあと、今度はテオドールが静かに口を開いた。


「私は……“仲間”かな」


「仲間?」


キャサリンが尋ね返すと、テオドールは焚き火を見つめたまま続けた。


「昔は一人で戦っていた。仕事でも、日常でも。けれども、こうして一緒に旅をして……やっと“誰かを背中で守る”ってことの意味が分かってきた気がする」


「……テオドール」


エリオットが視線を向ける。テオドールは照れ臭そうな笑顔を見せた。


「じゃあアタシは、“推し”かしらね。……ふふ、笑うとこじゃないわよ」


とエンジェルがニヤニヤしながら加わった。


「“あの人”の佇まいとか、ぶっきらぼうなところがね。アタシのお守りみたいなもんなの。……守りたいって思うし、失いたくない」


エンジェルの言う“推し”が誰なのか、みんな分かっていたが、茶化しはしなかった。ただ、焚き火の音と虫の声の中、みんながそれぞれの思いを胸に抱いていた。


キャサリンは思う――


(月影の記憶が見つかって、みんなが幸せになってくれるといいなぁ)


「そろそろ、いい頃合いじゃない? 月影の記憶を探しに行きましょう」


エンジェルが先に立ち上がって、他の三人も後に続いた。


二手に分かれると効率が良いだろうという話になり、キャサリンとテオドール、エンジェルとエリオットでペアを組む。


「いい? 何かあったら大声で叫ぶのよ。聞こえたら、もう片方はすぐに駆け寄るように」


エンジェルの言葉を合図に、四人は暗闇の中、月影の記憶を探し始めた。

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