第三話:夜の廃校と、かくれんぼ大会
月が校舎の窓を照らす夜――
誰もいなくなった廃校の中で、こっそりと動き出す着ぐるみたち。
「さーて! 今夜の遊びは…!」
ラビラビが手(?)をぴょいっと上げて宣言した。
「かくれんぼ大会に決定〜!!」
「ええっ、また? 先週もやったじゃん」
猫の“みけ”が尻尾をくねらせながら抗議する。
でも、口元はすでにワクワクしてる。
「だって楽しいんだもん。廃校って隠れる場所いっぱいあるし!」
「まぁ、鬼は誰やるの?」とクマノスケ。
「今回は…ウサギの君だ!」
「え、なんでぇぇ!?」
ぶーぶー言いながら、ラビラビが壁に向かって数を数えはじめる。
「いーち、にーい、さーん……」
「行くぞ〜〜!」
「隠れるよ〜!」
みんながばたばたと走り出す。
⸻
「……ここの掃除用具入れ、けっこう広いな」
ポンタはモップの影に潜り込んで、しっぽだけひょこんと出していた。
(あ、しっぽしまうの忘れた…)と思ったけど、もう手遅れ。
クマノスケは職員室のロッカーの中。
むぎゅっとなって入ってるせいで、ちょっと暑い。
「ふう…昔の先生たち、ここで昼寝してたんだよな…懐かしいな…」
思わず居眠りしかける。
みけはというと、理科室の人体模型の横。
「まさかこの影に…って思うでしょ?でもここ、意外と見つからないのよ〜」と得意げ。
⸻
「じゅうきゅーう、にじゅーう……もういいかーい!」
「まーだだよー!」
夜の校舎に、声が響く。
でも、誰も怒らない。不思議と優しい音。
「にじゅーいち……にじゅーに! もういいかいっ?」
「もういいよーーー!!」
ラビラビはパタパタと耳を揺らして走り出す。
「さーて…まずは…この匂い…ポンタだね!」
「えええ!なんで分かるのー!?しっぽ見えてた!?」
つぎつぎに見つかる着ぐるみたち。
でも、みけだけがなかなか出てこない。
「……あれ? みけ、どこ行った?」
音楽室、図書室、視聴覚室。
どこを探しても見つからない。
――でも。
「ふふーん♪」
しあわせそうな声が響いたのは…まさかの、校長室のソファの上。
「え、そこで寝てたの!?」
「だってふかふかだったんだもーん!」
⸻
夜のかくれんぼは、こうして毎回バタバタで、最後は誰かが寝て終わる。
でも、笑い声が響いた校舎には、不思議とあたたかな気配が残る。
きっと明日、七海がここを歩いたとき、
「あれ、誰か笑ってた…?」って思うかもしれない。
それは――“きぐるみたちの夜”の、ほんのかけら。