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12話 人と魔族

「姫様…私が何を伝えたいかお分かりですか?」


「ごめんなさい…分からないわ…」


ネフィアに連れられ木陰に移動した私たち、私達を助けてくれた冒険者達は何かを察した様子で待機している


「なぜ彼らの助力を受け入れようとしたのですか?」


「そ、それはその方が王国への近道だと…あと情報も聞き出せると思って…」


「それなら彼らを殺して記憶操作の魔法で情報を抜き出せば良いのですよ、姫様、それにあの村人も魔獣のエサになれる良い結末を辿るところでした、なぜ邪魔したのですか?」


(殺して記憶を盗み見る???魔獣に喰われるのが良い結末???何を言っているの???)


魔王城ではあんなに私を好いていたであろう彼女が残酷なことをさも当然のように口にする、そしてその思考に則っていない私を心底理解できないと言いたげな顔を向けてくる。


(どうして???私がなにか間違えたの???)


いや…私はわかっているはずだ、それが魔族の性質だと、だって私が決めたことなのだから…


自ら彼等を庇う私は魔族としては異端な行動なのだ


「わかんないよ…」


「姫様?どうされましたか?」


彼女が悪びれず聞いてくる、ほんとに気になっただけなのだろう、心底不思議そうに私を見ている…だからこそ余計私は湧き上がる感情が抑えられなくなってしまった


「ネフィアは!大事な人が殺されそうになっているところを見て!何も思わないの!?自分にその人を助ける力があるってわかっているのに見捨てるの!?意味わかんない!どうしてそんな残酷なことが言えるのよ!!!!」


「ひ、姫様!?一体何を!」


「もういい!1人にして!」


「姫様!!お待ちを!」


………


大声で怒鳴ってしまった私は感情のまま目にも止まらぬ速さで遠くの崖へと駆けて行った、その時大きく木々をなぎ倒して行ったが今の私には力を制御するような余裕はなかった。


「どうして…私は魔族になってしまったの…」


1人になった私は崖の端で膝を抱え座り込んでいた、そして心から漏れ出る言葉をそのまま口に出していた。


「どうしてあんな設定つけちゃったんだろう…」


「全部私が悪いのかな…」


何も分からなかった、いや、分かりたくなかった、人間なんて種は私達魔族に管理されるべき下等種、人間が魔獣の餌や魔族の糧になれるのは名誉なこと…そんな性質が私の心と相反する、強烈な嫌悪感だった


でもこの設定を考えたのも私で…


その場で動くことができなくなった私は背後の気配に気付くことはなく


「姫様…」


「ネ、ネフィア!?」


「姫様…少し話を…」


「来ないで!!!」


「…!?……かしこまりました………」


ネフィアは心配そうに私の元に近付いていた、当然だ、彼女からしたら不思議に思ったことを聞いただけで私が一方的に怒鳴り散らかして1人で涙を流していたのだから…


(いっそ私が魔族の性質に染まっていたら…)


この世界に魔族として生まれ変わってしまった、最初は体の違和感程度だったが直ぐに慣れた、しかし心の違和感は拭えなかった、私と周りにいる魔族達の価値観があまりにも違いすぎて…別の生き物であるという現実と孤独感を突きつけられて…


「あーー、その…なんだ…」


そこに先程聞いていた男の人の声が聞こえた


「内容は察する程度でしかないが…そこの嬢ちゃんは悪い判断は下してねーんじゃねぇかな?お姉さん?」


「……なぜあなた達がここに???」


「今しがた着きました…なんというか…揉めているようでしたので…気になって」


「そうだな、大方1人で飛び出したこの子を心配してお姉さんがその子を叱ったんだろう…まぁ大切な人がそんなことしたら怒るのは当然だろうがな」


彼らは私が無茶したことについて揉めていると思っているようだ、実際傍から見たらそう見えるだろう


「いえ…あなた達には関係ありません、下がってください」


「いんや、関係ならある、俺たちはそこの嬢ちゃんに感謝しに来たんだ、気持ちはわかるがちょっと待っていてくれないかなお姉さん」


「感謝???」


「おうよ!」


ネフィアは理解できないといった顔をしている

そして彼等は私に近づいて…私の頭撫で始めた


「ありがとな嬢ちゃん、お前さんが身を呈してあの蛇の気を逸らしていなかったら…あの人は助からなかったはずだ、お前さんのおかげだ、ありがとな」


「え、あ、うん、こちらこそありがとうございます…」


「でもやっぱり無茶しすぎ、あなたのお姉さんも怒っている、目の前で自分の身内が魔獣の餌になりそうな行動なんてしたら怒るのは当然のこと」


「そうだな、2人ともちょっとすれ違っちゃっただけの事だ、だからお互いあまり揉めすぎないでくれ、無理にとは言わないがこんなとこにいたらまた魔獣が来ちまうかもしれないから、こっちもヒヤヒヤするしな」


そんなことを言って私をなだめてくれた、私は涙がさらに溢れてきて…


「ごめんなさい…ごめんなさい…!!あ゛ぁぁぁぁぁ!!」


大きな声を上げて泣いてしまった、ネフィアがより心配そうにこちらを見てそして抱きしめてきた


「こちらこそ…ごめんなさい、私も何も事情を聞かずに責め立ててしまいました…愚かな私を…どうか罰してください…」


少しだけネフィアの顔が疑念の表情を宿していた…きっと私がこんなに取り乱しているからだろう…さすがに彼女には私が前世で人間だったことを伝えた方がいいのかもしれない


「なんか思ってたのと違う謝り方だな…」


「ノンデリ男…ちょっと黙って」


「ルーノ…今のはさすがにないわ…」


「あぁ!す、すまねぇ!やっちまった!」


抱き合う私達から離れた3人組が何か言っている、よく聞こえないが仲が良さそうだった


冒険に出るのなら楽しく冒険したい、そして私の目標…そして私の前世、ネフィアには打ち明けないといけない事だった、私とネフィアは冒険者達に感謝と別れを告げ1度魔王城に戻るのだった。

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