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【第十一話】

「んー!この焼き鳥美味しい!」

 公園に向かう途中に匂いに釣られて吸い込まれた焼き鳥屋。一本百円という安さも相まって一人五本も買ってしまった。僕が持っているのは塩。東雲さんが持っているのはタレ。なんか東雲さんが五本以上食べてる気がするけども、嬉しそうな顔を見られたしそれでいいや。

「この公園ってなんか思い出でもあるの?好きって言ってたけども」

「そうね。私が物心ついた時にお父様が連れてきてくれたの。その頃はなんのしがらみもなかったから。すごく楽しくて、あの頃の感覚が欲しくて来ちゃうんだ。でもダメなのよね。何が楽しかったのか分からないの」

「金城君は一緒じゃなかったの?」

「いなかった。あの時はお父様と私の二人きりで。移動も電車だったのを覚えてる」

 あのお父様が電車に乗ってる姿はなんか想像できないな。そもそも東雲さんの自宅ってどこにあるのか聞いてないな。電車を乗り換えてこの公園まで来たのかな。そんなことよりも今の僕には東雲さんに聞いてみたいことがある。ただ一言「楽しい?」という言葉。でもそれを口にして、「やっぱりあの時のような気分にはなれない」と言われてしまったら、この関係が終わってしまうような気がして。でも東雲さんはこう言ってくれた。

「今日は良樹と一緒にここに来て良かった」

 良かったと言うのは楽しいという意味なのだろうか。怖くて聞けない。もしも聞いてしまって「そうだよ」と言われたら勘違いは本気に変わってしまいそうになる。

「涼子にとってさ。僕は一体どんな存在なの?」

「ん?よく聞こえなかった。なに?」

「んー。いや、なんでもない」

「そう?それじゃ、あれに乗ろう」

 そう指を指したのは池に浮かぶボート。手漕ぎボートとスワンボートがある。

「どっちに乗りたいの?」

「お父様と来たときは手漕ぎボートだったんだけど、あの時スワンボートにも乗りたいって思ってたから、今日はスワンボートかな」

 三十分八百円。思ったよりも安い。僕達はスワンボートに乗り込んでペダルを踏み出す。意外と重たい。僕が力を込めて回すとボートは走り出した。

「わー。進んでる!」

「そりゃ進むさ。こっちは一生懸命漕いでるしな!」

「じゃあさ、あの辺まで行こうよ」

 指示をされた方向に向かって舵を切ってペダルを回す。目的の場所に着いて東雲さんを見ると鞄から財布を取り出して一枚の写真を僕の顔の前に突き出してきた。

「この辺でね?私がお父様を撮影したらしいの。これはその時の写真。良樹の顔と比べてる」

「比べてどうするのさ」

「どっちが楽しいのかなって。さっきの電気屋でカメラ買えば良かったなぁ」

「スマホがあるじゃん」

「違うのよ。こうファインダーを覗いてパシャリとやるのが良いのよ」

 あくまで、その頃の自分と比べたいようだ。僕が写真を見せてと言う前に写真を財布に仕舞って両手の人差し指と親指をエル字にして両手を使って構図を作る。

「うーん。こんな感じかな」

「で?どう?」

「うん。楽しい。やっぱり私、良樹と一緒にいると楽しいかな」

 本当に勘違いしてしまいそうになる。東雲さんが彼女になるなんて考えたら天にも昇る気分になる。

「ねぇ知ってる?この池の祀られてる弁財天様ってとっても嫉妬深くてカップルでボートに乗ると別れるんだって」

「え?そうなの?まだ付き合ってないし関係ないんじゃない?」

 そう言葉にしてからしまった、と思ったけどももう遅い。

「なぁに?私と付き合いたいの?どうしようかなー。お父様のお眼鏡に適わなかったらコンクリート詰めにされるかもよ?」

「涼子が言うと本当に聞こえるからやめてくれ。ってか、今までの行いがバレたら本当にコンクリート詰めにされそうだから黙っててくれ」

 そういうと東雲さんは少し不貞腐れたような顔をしたけどもすぐにいつもの東雲さんに戻った。

「はあ……」

「どうしたの?」

「お父様からの呼び出し」

 そう言って見せられたのはお父様と書かれた着信画面。

「ちょっと出るから静かにしてて」

 そう言って通話ボタンをタップして話を始めた。

「はい。もしもし。こんな時間に電話なんて珍しいですね。え?今から?別に構わないけども……。時間は……一時間後くらいなら間に合うと思う。今出先だから一旦家に戻って準備をしてから……え⁉︎」

 そう言って東雲さんは電話から耳を離して周囲を見回し始めた。

「はぁ……。ずっと見てたの?別にデートとかじゃなくて亮太の誕生日プレゼントを一緒に選びに来てもらったのよ。やましい事なんてないから安心して。それじゃ」

 通話を切って大きくため息をついてから頭を軽く掻いて僕の方を向いてきた。

「良樹。落ち着いて聞いて欲しいんだけど、今からお屋敷に行くから一緒についてきて」

「え?」

「見られてたのよ。今日一日中。ほら、あそこ」

 指差した先には近藤さんと同じような風体の男が二人。いかにもというような感じだ。

「大丈夫かな。涼子には近づかないようにって言われてるんだけども……」

「それかな。ちょっと何を言われるのか心配。でも、何を言われても私は良樹の味方だから安心して」

「なんにしてもお父様の前では涼子ってよぶのはマズイよな」

「そうね。それはやめておいた方が良いかも」

 東雲さんは、また大きくため息をついてからボートの係留場の方に舵を切って漕ぎ始めた。僕も足に力を込めてペダルを回す。程なくして係留場に到着したと思ったら、ボート乗り場受付のところに例の二人組が来ていた。

「お嬢様。お車を用意してございますので。そちらの方もご一緒にとお父様より……」

「聞いてるわよ。今日は近藤はいないの?」

「近藤様は別件で出かけていらっしゃいます」

 このボディーガードみたいな人達にも上下があるのだろうか。近藤さんは東雲さんに近いところにいるから偉いみたいな。

 そして僕達は前後に挟まれる格好で公園の外に向かって歩き始めた。こんなことをしなくても逃げないのに。

 公園の外に待っていたリムジンに乗り込んで一人は運転席に、もう一人は後部座席の僕達の向いに座った。四人が向かい合わせに座れる配置の椅子は僕にとって初めてのことで戸惑ったけども、東雲さんは慣れた様子で座ったので僕もそれに従った。

「お嬢様。相良様の件なのですが……」

「分かってるわよ。良樹の件でお父様が何か言ってきたんでしょ。先になんの件なのか言ってくれても良いのに」

「いえ、相良様の件というよりも金城様の件でお話があるようでして」

「え?なんで?」

「すみません。詳しくは伺っておりませんので」

 なんだ?僕の件じゃない?じゃあなんで僕も一緒になんだ?

 高速を走って程なくしてから都心の一等地にあるとは思えない敷地のお屋敷に到着した。交差点まで壁が続いてるから、あの辺まで敷地なのだろう。どんだけデカいんだ。

 本邸らしき場所の車寄せに停まると運転手がドアを開けてくれた。これが高待遇な客人扱いなら良かったんだけどな。今はなにをされるのか分からなくてビクビクしている。

「良樹、そんなに緊張しなくても大丈夫だから。お父様も話せば分かるタイプだから。理由があれば」

「だからその理由が問題なんじゃないの……」

 そう。僕は東雲さんのなんなのか。友人?ただの友人が金城君も滅多に入らない東雲さんの家に入り浸るか?「君は涼子のなんなのか?」って聞かれたらなんて答えるのが正解なんだ。

「なんとでもなるでしょ?さ、行きましょ」

 玄関を潜ると馬鹿でかい玄関ホール。こんなところまでエアコン効かせていたら電気代凄いだろうな、なんて貧乏くさいことも考える程に行き届いている。まぁ、流石に「執事メイド」的な人たちは居なかったけども。

「涼子様。お父上は自室に居られますので」

「分かったわ。良樹も一緒に来て」

「あ、うん」

 玄関ホールから階段を登って右手に進んだ突き当たりが目的の部屋のようだ。

 東雲さんがノックをすると中から返事が返ってきた。それを聞いてドアノブに手を掛けてカチャリと回す。そしてドアが開く。

「お待たせ致しました。お父様」

「ああ。相良君もそちらに座りたまえ」

 東雲さんのお父様はデスクに座って忙しそうに書類に目を通している最中だった。僕達は言われるがままに応接セットのソファーに体を沈めた。

「で?金城君の件でなにか話があるって聞いて来たのですが、なにかあったのでしょうか」

「最近の涼子の様子を見てな。金城家からクレームが入った」

「クレーム?」

「そうだ。知ってるとは思うが我々東雲家と金城家は……」

「その話はやめてって言ってるじゃないですか。私は亮太と結婚する気はないです」

 結婚……。やはり金城君は東雲さんの許嫁というわけだったのか。そこに僕が絡んで来たものだからややこしいことになったって感じかな。

「まぁ、話を聞きたまえ」

「金城家からのクレームというのは、その件ではない。私も頭が痛いのだが亮太君が嫉妬してるようでな」

「嫉妬?」

「そうだ。最近、涼子はそこの相良君と一緒に居る時間が長いだろう?だからそれでどういう事なのか、とね」

 なんか話の流れ的に僕が東雲さんと会うのはお父様的には問題ないように聞こえるけども?どうなんだ?

「だから今日は金城君の誕生日プレゼントを……」

「聞いている。だが、それにも相良君が一緒に、となるとな。今回は向こう様も見ていたようでな」

 見ていた。金城家の者が僕達の行動を監視していたという事だろうか。東雲さんのお父様は大きく息を吐いてからこう言った。

「涼子は相良君と一緒にいるのが楽しいのだろう?」

 楽しい、と来たか。好きなのかと聞かないあたり、気を使っているのだろうか。

「楽しい、ですね。亮太とは違って私の趣味を理解してくれましたし、知ってくれました。亮太は……自分の趣味を私に押し付けるきらいがあってちょっと」

「だろうと思っている。だから話の根が深いのだよ。私は父親として娘の幸せを願う。相良君がそうであるなら私は応援しよう。だが、知っての通り金城家は東雲財閥の最重要取引先だ。その一人息子が駄々をこねているだけで取引が傾いては困るのだよ。今日はその辺について相談をさせて貰いたくて相良君にも来てもらった。相良君は涼子の事が好きかね?」

 今度はストレートに聞いてきたな。これはどう答えるのが正解なんだ?僕は東雲さんの方を見たけども、自分で答えて、というような目線が返ってきただけだった。ここは正直に答えた方が良いのだろうか。応援すると言っていたし。でも東雲さんにその気が無かったら僕の空回りという事になってしまう。

「どうなんだね?別に答えがどうであろうと何をするわけでもない」

「一緒にいて楽しいです。願わくば今のような関係が続けば良いと思っております」

 好きか嫌いか。そんなの好きに決まってるけども、自分の中でもラブとライクの違いはよく分かっていない。大財閥の一人娘だから惹かれているのかと聞かれたらノーとは言えない気もした。

「そうか。涼子はどう思っている?」

「私も良樹と一緒にいて楽しいわ」

「それは金城君と比べてどちらが楽しいかね」

 東雲さんは軽くため息をついて一拍置いた後にこう言った。

「楽しい。良樹と一緒にいる方が楽しい。飾らない私でいられる」

 金城君とは腹を割って話すことすら出来ないのだろうか。いや、しないようにしているのか。

「そうか」

 そう言って書類を見る手を止めて席を立って僕の正面に座ってきた。

「君には一度、涼子には会わないように、と忠告をしたね?」

「はい」

「それでも会いに行く理由は何かね」

 なんだ?求めに応じた、というのが客観的な事実だけども、そこに自分の意思を重ねると答えは自ずと出て来た。

「好き、だからですかね」

「それはラブ、かね。ライク、かね」

「今はまだライク、でしょうか。ラブと言うにはまだ僕は東雲さんのことをよく知っていないと思います」

「そうか。私は君の家のことは調べた。素性は特に問題はないと判断している。だが、家柄という点では……」

「釣り合わない、ですか?」

「正直な」

 分かり切ったことだ。一介のサラリーマンの家と東雲財閥と比べるまでもない。

「だが、娘の言うことを無下にも出来ないのでな。君は金城君から涼子を奪うことが出来るかね?」

「お父様、奪うって……」

「例え話だよ。方法はいくらだってあるんだ。家柄というのが問題であれば、その家柄を引き上げれば済むだけの話だ。肝心なのは本人同士の意思だ。涼子の意思を私は尊重する。だからよく考えてくれ。金城君も幼馴染なんだ。涼子にとっても無下に出来ない存在だろう?」

「それは……」

 家柄を引き上げるってどう言うことなのか分からないけど、この流れは東雲さんが僕のことを選んでくれるのなら、目の前のお父様は味方に付いてくれると言うことなのだろうか。

「相良君。君の意見ももっと聞きたいのだが良いかね?」

「はい」

「仮に涼子と対等に付き合いたいのなら、君のお父上には我が社に来てもらう事になる。理由が理由だけに私の側近から、そのような目で見られることが考えられる。そのことを了承して貰えるだろうか」

「どうでしょうか。父とは比較的良好な関係を保っておりますが、そのようなこととなると聞いてみないとなんとも……」

「そうだな。なるべく早い方がいい。お父上に来週末に予定がとれるか確認して貰えるだろうか」

 そう言って名刺を渡された。

「ここの携帯まで電話をくれたまえ」

「了解しました」

「それでは今日の話はここまでだ。私は仕事に戻る。涼子は折角返って来たんだ。ゆっくりして行きなさい」

 そう言ってそソファーから立ち上がって再びデスクも戻っていった。

「それじゃ、私たちも行きましょ」

 東雲さんは先に立ち上がってドアに向かって歩き出したので、僕は慌てて追って行った。

「はぁー、緊張した」

「何でもなくて良かったじゃない。お父様のことだからなんか無理難題を出すかも、とか思ってたのに」

 父親を差し出すっていう無理難題を言われたけどな。そんなことは東雲さんにとっては些細なことなのか、廊下を歩いてさっきまで居た部屋の反対側の扉を開いた。

「ここ、無意味に広くて落ち着かないのよね」

「うっわ。お嬢様の部屋だ。ベッドに屋根ついてるの初めて見た」

「天蓋ね。あんなの飾りよ。使った事がないわ」

「そういえば、なんで高校生でこんな部屋まであるのに一人暮らししてるの?」

「言ってなかったっけ?」

「聞いてないな」

「お母様とね、喧嘩したから」

「は?喧嘩して家出したってこと?」

「ま、そうなるわね」

 そんなのであんなマンションの一室ってどういう事だよ。お父様が気を遣ったのかな。

「なんかその言い草だと仲直りしてないみたいだけど……」

「そうね。この部屋にさっさと来たのもお母様に会わない為だし」

「何が原因で喧嘩したの?」

「ゲーム。私がやってたゲームを全部捨てたのよ。信じられる?部屋に勝手に入るのも信じられないけど、私物まで勝手に捨てるとかないでしょ?」

「なんか理由があったんじゃないの?」

「あんなものをやってるなら友達の一人や二人作りなさい!だそうよ」

 お母様のモノマネだろうか。そんな感じでプンプンしながら僕に話してくる。確かにゲームが原因で友人が出来ないわけじゃない気がするし。

「でも友達作れば問題ないんじゃないの?」

「なんでよ。友達とか面倒じゃない。仲間内の関係とか」

 じゃあなんで僕とは、と言いそうになったけども、口を詰むんだ。

「人間関係は確かに面倒だ。かく言う僕も友達はそんなに多くないし」

 実際に親密と呼べるのは和人と亜美位なものだ。

「そうなの?」

「じゃなければ毎日のように涼子の部屋に遊びに行けたりしないって」

「なんだ。そうなんだ」

 そう言って東雲さんは少し嬉しそうな顔を覗かせたが、すぐにいつもの顔に戻ってしまった。

「ね。その亜美さんってどんな人なの?」

「この前に会ったじゃん」

「だってあの時はかしこまった感じだったじゃない。真の姿、みたいな」

「ふむ……暴れ馬?」

「なにそれ」

「僕も和人も振り回されっぱなし。それと……これは多分なんだけども亜美は一人のことを……」

「あー!いけないんだ!そんなこと他人に話しちゃダメダメ!そんな話をしてるって周りが知ったら余計に引っ付かなくなるじゃない。隠れてこっそりと関係を見守るのが良いのよ?」

「その方が面白いものが見れると思ってるだろ」

「そんなことないわよ?告白とか」

「思ってるじゃん」

 なんだかんだ言って、こうして東雲さんと話すのは楽しい。側から見たらどんな関係に見られるのだろうか。金城君が嫉妬してるとか言うくらいだからもしかして恋人らしく見られているのだろうか。

「そう言えば亜美のお兄さんの事はどうなったの?」

「それは近藤に聞いてみないと分からないかな。今日の帰りには来るんじゃないかしら」

 自宅に帰る気満々だ。ここが実家だってのに。なんて話していたら部屋のドアがノックされた。東雲さんが返事をするとドアは開き、一人の女性が入ってきた。

「はぁ……。何でここに来るのよ」

「なんでもなにも。久しぶりに返って来たんでしょ?挨拶くらいしなさい」

 僕が目線を送ると小さな声で「お母様」と言って来た。ゲームを捨てたお母様。そんな風には見えないけども……。

「そちらの方は?」

 まぁ、聞くよね。自室に招き入れるような人間だし。ましてや一人娘の。

「こちらは相良良樹さん。私のいっこしたの友人」

「まぁ、亮太さん以外に友人が出来たのね!」

 大袈裟に反応して僕の方にやって来たので、何を聞かれるのか身構えてしまった。

「この子、あまり友人が少ないから仲良くしてあげて。して、二人は何をして遊んでいるのかしら?」

 何だか棘のある言い方に僕も少し不快感を感じたが、東雲さんは更にそう感じたらしく。

「何でも良いでしょ。高校生分相応の遊びしかしてないわ」

「まさかゲームでもしてるんじゃないでしょうね」

 なんでこんなにゲームに拘るのか。自宅にゲームがあると知ったら何をするのだろうか。

「映画見たりしてる」

「どこで?」

「どこでって……」

 これはまずい。僕が東雲さんの家に行っ映画やらゲームやらをしてるなんて言ったらなにが起きるのか分からない。

「僕の家です」

 と咄嗟に答えた。

「まぁ、そうなの?うちの子がお世話になってまして」

「いえ、僕も楽しいので……」

「亮太は一緒じゃないの?」

 何かと金城君のことを出してくるな。多分この人は金城君と東雲さんと引っ付けたいのだろう。それもあって東雲さんは家を出たのだろう。

「亮太はそういうのじゃないから」

「また、そんなことを言って……」

「兎に角。私は私だから」

「もう分かったわ。相良さん、これからも娘をよろしく頼みますね」

 そう言って部屋を後にした。

「はぁー。助かった。ありがとうね」

「僕の家で遊んでるってやつ?」

「そう。でも周りからも見られるから、今後は私の家じゃなくて良樹の家で遊ぶのでいい?ゲーム機とか全部送るから。あの様子だと私の家にも来そうだし。また捨てられたら嫌だもん」

「そういうことなら了解」

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