表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武器を取れ、ドラゴンを殺す  作者: 運果 尽ク乃
二日目 虚無と残酷の声がする

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/224

A0205 血戦



後虎(アトラ)!」「アトやん!!」


 モアの振り下ろした両手剣は、凄まじい反射神経で振り返った【牛頭(ごず)】の左腕に防がれた。

 モアは口の中で悪態をついた。ばァ〜かばァ〜か! ざこアトラ! アンタなんて心配してないんだからねェ〜! ホントのホントなんだからァ〜!!


 だから。いつものアホ面下げて。すぐに。早く!


 クレイモアは【牛頭】の分厚い左腕を切開、骨まで削いで切り落とす。見た目以上の怪力で振り下ろされた一撃は、【牛頭】の兜代わりの牛の頭蓋骨をかち割り、頭部を致命的に切込んだ。

 吹き出す鮮血、半分潰れた左目が飛び出す。クレイモアの切っ先は顎骨を削り頬に赤い筋を入れ、鎖骨に切り込んで止まった。


 倒しきれない! モアはプライドを傷付けられながらのけぞった。【牛頭】が右手のアトルアトルを振り回す。

 長さ30センチ程度の木の棒と書くと危険は少なそうだが、むくつけき大男の振り回す麺棒だと考えれば馬鹿にできない。


 左頬を張られるモア、目の奥がチカチカする。口の中が切れた。しかし根性で踏みとどまる。堀が作ってくれたサンダルで良かった。ピンヒールだったら踏ん張れなかった。


「ウザァ〜、さっさと死んじゃえ、ざァ〜こ!!」


 しかし、クレイモアを構え直すよりも【牛頭】が早い。打撃を受ける、モアは唇を噛み締めて苦痛の声を噛み殺した。

 先程石槍の突き刺さった脇腹から血が吹き出す。だが、この程度の痛みがなんだ。


「モアちゃん!」

「調子、乗んなァ〜!」


 その間に、堀達がその他の敵を倒していた。

 口の中に溜まった血を吐き捨てる暇もない。手負いの【牛頭】の嵐のような乱打に、入り込む隙もない。


「後虎ちゃんは『彼』が!」


 誰だって? いや、聞く必要はなかった。モアもそいつの存在は知っていた。

 だが、名前も知らない。顔も分からない。


 宍戸の所に居たオドオドしたガキだとは分かっていた。

 不安はあるが、それより今は眼前の【牛頭】! 下がれば下がっただけ踏み込んでくる、距離を取らなくては。クレイモアを切り込める距離を。


 【牛頭】が失われた左腕を振るう、目潰しだ。顔面に降りかかる熱い血しぶき。避けられない。視界を奪われたらおしまいだ!

 モアは爆発しそうだった。モアのばか! ばかばかばァ〜か! アトラなんかに気を取られてるから!


 しかし鮮血と、それに続くアトルアトルの打擲(ちょうちゃく)は空中で阻まれていた。

 ドブネズミ色の広い背中、右手にはトゲ付きの鉄棍棒。堀だ。【バリア】でモアを守り抜く。


「アッハ! オジサンしゃがんでェ〜!!」


 慌てて首をすくめて体勢を低くする堀。モアはその背中を踏んで跳躍。脇腹から吹き出る血、激痛。だから、それがどうした!


 この首をやろう。ただし、まえらき刃に耐えたのならば。


 剣呑極まる断頭の刃。今度は見事に【牛頭】の素っ首叩き落とした。


「アッハ……地の利もあって数も勝って負けてやんの、なっさけなァ〜い……」


 唇の端から血の糸を垂らしながらモアは【牛頭】を面罵。しかしいつもの勢いはない。


「呉井さん、怪我が!」

「はァ〜? 内蔵(なかみ)イってるゥ〜?」


 実際、この傷はヤバイとモア自身わかっていた。堀の言う通り、相手の武器が鉄だったらあの時点で倒れていたかもしれない。

 集中力が切れたのか、急激に視界が暗くなる。それでもモアは倒れない。倒れるのはプライドが許さない。


「アトやんは……?」

「それが―――」


 堀の答えを、モアは最後まで聞いていなかった。器用にも立ったままで意識を失う。


「堀さん、呉井さんを安全な場所へ」

「しかし」


 朱里の言葉に、堀は視線を坂下に向けた。

 【敵】の、ザコだけとは言え増援を、蒔絵が撫で斬りにしていた。この場は【敵】にとって重要な場所だ。


 少なくとももう一人、【幹部級】の敵が近くにいる。それがいつ戻るかも分からない。


「可能な限り早く、この場を台無しにしておくさ。爆薬が【武器】の奴がいれば助かったんだがね」

「違いありませんね」


 冗談に笑うも、ここで堀も抜けたら戦力は半減だ。


「堀さん! ダメだ! 後虎さんは流されました!」


 駆けて来る翔斗、川べりで悄然(しょうぜん)とする『彼』の手には、びしょ濡れの鞄。後虎のものだ。

 堀は腕の中のモアと『彼』を見比べた。どちらも危機、どちらも見捨てられない。


「君! 後虎さんを頼みます! 俺は呉井さんの応急処置をしたらすぐに追いかけますから!

 近くにまだ【敵】が居るはずです。十分に気を付けて!」


 頷く『彼』。堀は一瞬だけ躊躇(ためら)うも、地面にモアを横たえた。

 そして厳しい目付きの朱里を、懇願(こんがん)するように見上げた。


「バニースーツの脱がし方って分かりますか?」

「私に聞かれても困る」


 とりあえず二人して試行錯誤して、なんとか傷を確認し、汚れを洗い流した後に堀の持っていた清潔な布で縛り付けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ