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武器を取れ、ドラゴンを殺す  作者: 運果 尽ク乃
四日目 十二対十二

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S0401 応援要請

 ちゃんと仲間と相談しろと笛吹(うすい)に叱られた管金(すがね)は、彼を広間に残して仲間達の下に戻った。


「うわぁ、小野さんが死んでる!」

「……寝てんだよ」


 笛吹のことについて、反応は薄かった。なにしろ小野と石見(いわみ)は手ひどく負傷していたし、そもそも話をしたことすらない相手だ。


「管金さんが信用できるというなら、私は構いません」


 比較的傷の浅いテッサはそんな風だった。

 小野が呼吸すら辛そうにため息をつく。


「……管金、お前も限界だろ?」

「そ、そんなことないよ?」


「おっぱい揉んでいいから……正直に言え」

「……ぐ」


 小野の交渉術は巧みであったが、管金は見事に男子としての欲望を調伏してのけた。


「元気いっぱいです」

「私、のも…………どう……?」


 不意打ちの十字砲火に、管金はぎょっとして振り返った。

 だがその石見の顔色と、紫のひび割れた唇。どす黒いスカーフに正気を取り戻す。


「バカなこと言ってると本気で揉むよ……で、もしおれがもう無理ならどうなのさ?」

「……笛吹くんとやらに頼らねーと何もできんだろ」


 小野の視線は石見を向いていた。石見も限界近いが、悪臭ただよう血のぬかるみの中で睡ってしまう小野も相当だ。

 管金は右腕が上がらない事を伝えていない。


 無駄な心配をさせたくなかった。最初はそれを気付かれたのかもと思ったが、違うなら隠し通すつもりだ。

 幸運にも、小野も石見も顔すら向けない。テッサは物言いたげに、だが黙ってくれていた。


「じゃあおれ、笛吹と狩りに行くよ」

「……その、右手で…………?」


 ぎくりと動きを止める管金、石見はいつから、どうやって気付いたのだ?

 テッサも弾かれたように管金の右腕を見る。小野は苦しげに顔を傾けた。


「笛吹くんを呼んで来い」


 笛吹は呼び出しに快く応じた。

 管金は彼にまだ心変わりの理由を聞いていない。だが、何度も話すのは面倒だろうと考えていた。


「ひどい状態だな」


 ばらまかれたままの【敵】の死体、重傷の石見と小野。そして篝火から立ち昇る甘い悪臭に笛吹は閉口した。


「オレは可能なら一秒でも早くここを離れたいね。一酸化炭素中毒になりそうだ」


 換気のなされていない洞窟の中だ。酸欠の心配もあった。

 笛吹は年頃の男子らしくなく、大変刺激的な小野たちの格好に興味を示さない。


「まず動くか、それとも話すか?」

「話だ……まずは、自分の立場ってのを、再確認してくれ」


 小野が目を閉じたまま、苦しそうに口を開いた。

 ぶっきらぼうな言い方に、笛吹が目を細める。


「見ての通り、あたしらは全滅寸前だ。あんたの立場は……選ぶ側。助けてくれるなら、お願いしたい」


 浅い呼吸。喋ることすら苦痛を伴うのだ。

 小野が咳き込み、のたうった。実は普段通りの話し方なのだが、笛吹は好意的に解釈した様子だった。


「対価が、欲しいなら……提示してくれ」

「話し相手と安心した睡眠だな」


 笛吹は管金を見た。何か言いたそうな目つき。

 テッサが心配そうに管金を見る。


「バカはヤだってさ!」

「話の分かる馬鹿は嫌いじゃない。だが正直、管金は体を動かす方が向いているだろう?」


 小野が薄く笑う。石見も微笑んだ。管金自身は小首を傾げる。

 え? 手放しで褒め殺し中?


「【幹部級(ボス)】を死者なく倒したあんた達に、オレは敬意を持っている。死なせたくはない」


 笛吹は姿勢を正した。真面目な顔をすると整った容姿が際立つ。


「【ラストイル】からの【情報】で、オレは【ドラゴン】の居場所を感知できる。

 同時に、強い力を持つ【敵】【幹部級(ボス)】も。


 ここに辿り着いたのもその【情報】の力だ。問題は【ドラゴン】と【【幹部級(ボス)】の見分けがつかない所だな」


 管金たちは、【幹部級(ボス)】の存在を知らなかった。いや、【(かんなぎ)】は異様にタフだったが、強敵は【奴隷戦士】の方だったし。


「【幹部級(ボス)】と【ドラゴン】は合計六匹。山に三匹、ここに一匹、草原側に二匹。

 山の三匹はすでにいない。内一匹は……」


 笛吹が話しの最中で口を閉じた。わざわざ言う必要はない。


「偶然倒す場に居合わせた。二対一で、相打ちだった……」


 居合わせた。

 笛吹は自分の言葉にひとり頷いた。そうだ。あれは笛吹の手柄じゃない。鶴来(つるぎ)と長良。二人の戦士の手柄だ。


「【幹部級(ボス)】の相手ですら、チームを組んでも厳しいのに、ひとりで【ドラゴン】は殺せまい。それと……」

「……信じ、ます…………だから」


 石見が蚊の鳴くような声で囁いた。

 これまた普段通りだが、笛吹は負傷のせいだと勘違いしただろう。


「あまり…………自分を、責め……ないで」

「!」


 石見には笛吹が、罰を求めているように見えた。

 その二人を助けられなかったと、責任を感じているのだ。


「ひとつ、質問があります」


 白髪の房をいじりながらテッサ。笛吹は頷く。


「【敵】の感知は、どの程度の精度でしょう。

 射程は? 【幹部級(ボス)】以上でないと探知できないのですか?」


「大体の距離と方角がわかる。ただし近くないと【幹部級(ボス)】以外は曖昧だ。近くても【ザコ】の数を特定するのは難しい……ちなみに、おそらくこの洞窟内にはもういない。外から来た場合は近付いてきたら分かる」


 欲しい答えにテッサが頷く。【敵】がいないなら、安心して休める。

 だが、いるのが【敵】だけとは限らない。


「じゃあまず、捕まってる人達を解放する?」

「……なんだと?」


 管金はたどたどしく張井と『要塞』、ネアンデルタールの説明をした。

 笛吹は釈然(しゃくぜん)としない様子で頷く。


「ならば、まずはそいつらを解放して、怪我人を楽にできる場所に移動だな」

「貯蓄食料があると嬉しいですね」


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