3再び物語へ
「ぎゃ~~~~、痛い~~~~~」
過去最大の痛みが・・・徐々に引いていく。
目が開き、パソコンの画面がぼんやり、やがてはっきりと見えてくる。
ここは自分の部屋だと認識できた。胸を打つ鼓動が激しい。 夢だったのか?
あの痛みは現実としか思えない、トラウマになるくらいの痛みだった。
それにしてもあのブタ野郎、俺を切りつけてきやがった。 あいつらエミリーに何をするつもりだ、イヤな感じがする。守ってあげたいが、どうすればいい? そもそもさっきの出来事は俺の小説の世界でのことなのか?
ふとパソコンの画面が目に入った。
な? 投稿されている。
内容を読むと、さっきの体験がそのまま小説として投稿されていた。
寝ぼけながら、小説を書き上げ、そのまま投稿したのか? なんとなくだけど、ありえない気がする。やはり俺の小説の中に転移してたのか?その体験をこのソフトが小説に仕上げて投稿した。それだと辻褄が合う気がするのだが・・・確かそんな仕様はあったけど、、設定したっけ?
【小説家になるための最強アプリ】の設定項目画面を開くと、登場人物が勝手に増えていた。ギルドマスターの"ブルーノ"はもちろん、名前を知らない人物の名前も追加されていた。
ギルド内にいたエミリーに話しかけた中年は"ロルフ"という名前で、俺を襲った二人組 ガタイがいい男は"テオ" 太った男が"フランク" という名前で登録されている。
何か理解できて来た。この【小説家になるための最強アプリ】のせいで、この奇妙な体験をしたのだ。ひょっとすると、パソコンの前で小説を書くと、どうゆう理屈かわからんけど、トランス状態になって小説の中に入り込むのではないかと推測。
しかもその体験がそのまま小説になって投稿される。 ある意味最強の物語制作ツールなのかもしれないが・・・
このソフト、使うのはチョット怖いな。と、思ってしまう。何度か読み返してみたが、これって面白い話なのか? 俺的にはエミリーとの会話とかは、あの楽しい時のことが思い出されてニタニタしてしまうんだけど・・・
投稿した作品も消して、小説を書くのはあきらめようか。 と、頭をかすめた。
しかし、どうしてもエミリーのことを考えてしまう。 俺の考えた物語なら彼女はこの世に実在しないことになる。 でも、ホントにそうなのか? あの出来事が、どうしても偽物の出来事に思えない。あの二人に襲われて泣き叫ぶエミリーが脳裏に浮かび、いてもたってもいられなくなる。
このままじゃ終われない。
でも今のままじゃ俺はまた殺されるかも、何かいい方法はないものだろうか?と設定画面を開き考える。
俺の設定をムキムキの剣の達人にしてみようか。と早速書き込んでみたが、エラーが出てダメだった。
この小説はもう動き出しているので、その設定は矛盾してるってことなのか?
矛盾しない設定はないだろうか? 設定をもう一度よく見たら、エミリーやレナルド・アルマのジョブ項目が剣士となっていた。 そんな設定はした覚えがないので、ソフト側がそう設定していてしまっているってことになる。 しかも主役の俺のジョブは空欄だった。
ここは何か設定できるかもと、魔法使いを選んだ。 ついでに、すべての魔法を使えるように設定した。これはエラーも出ず受け付けてもらえた。 あと、いろいろやって、初期装備に魔法使いっぽいフード付きローブ、杖、革靴を装備。 お金も金貨・銀貨・銅貨を数枚所持させた。
特に靴は必要だと感じてた。 異世界では裸足で転移したんだけど、小石とか踏むと痛い痛いw
思いつく限りの設定をいじってみたが、ほとんどエラーが出た。このまま転移しても上手くいかないだろうな~
異世界のマップも改めてチェック、大きな大陸が2つとそれより小さい大陸が一つ、アロエ村は一番大きな大陸の南の方に位置している。近辺にいくつかの集落と、ちょっと大きなクルトという町が北側ある。
で、マップを見る限り、その地区の周りは高いエベレスト級の山で囲まれていて、唯一越えられそうな山がクルトの北側にあり、それを越えると大きな王国がある。
もう,設定も思い付く事は全てした・・・はず。 あとは、転移した後どうするか? おそらくの予想だが、再開したら前と同じイベントが起きるはず。 俗に言う死に戻りってやつだ。
草原でエミリーが横になっていて、その様子をあの”テオ”という悪党がどこかで見ているはずだ。
とりあえず、エミリーと仲良くして~、あとは様子を見てるテオを探し出して、俺の魔法で懲らしめる。 あれ?完璧じゃねw しかも失敗しても、死に戻るわけだから・・・いや、もう死ぬのは嫌だな。死なない方向で頑張ろう!
よし!あとは本文をパソコンに書き始めればOKな筈。
俺はパソコンのキーボードを叩き文字を入力する。
***
俺は再び草原に立っていた!
のんびり書いていこうと思います。 感想などよろしくお願いいたします。