2物語の前
『田中!お前わかってんのか? 会社に損害を与えたんだぞ!』と糞上司がどなった。
意味が分らなかった。
いつも通りに仕事をこなし、糞上司にその報告をしたらこうなった。
『はい、すいませんでした』と謝る俺。
こうなると、この糞上司に何を言っても無駄なのだ。
思えばこいつが上司になって、いつもこんな感じ。心当たりはないが俺はこの糞上司の標的にされていた。
こいつの仕事のやり方は前任者と違った。それはいい。
だがそれを周知に知らせるのに自分の言葉ではなく、俺を叱ることでそのやり方を周りの部下に分からせていたのだ。
そのことを知ったのは最近で、周りの連中は前任者のやり方をして叱られたことはない。
が、まったく同じことで俺が怒られてるの見て、その従来通りのやり方を改めていたらしい。
「なんでイチローさん、目の敵にされてるんでしょうね?」
後輩の五条が話しかけてきた。 五条は年が親子ほど離れた後輩で、俺のことを慕ってくれている。
「まったくだ、なんでかな~?心当たりがないわ~」
「で、今回はなんと?」
まあこいつも俺の叱られた原因を知っておきたいのだろう。
「客先に行って、定期メンテと点検・補修を終えて、帰る前にうちに発注されてた商品の納品をしたんだが、その確認の際、足りない部品があったんだ。 客の担当の発注漏れだったんだが、その部品なら社用車に常備されてたから、それを渡した。」
「え、何がダメなんですか、いつもそうしてるし・・・ 無料でその部品を渡したことになってるんですか?」
「そんなこともないはずなんだ、お客とも必要であることの確認もしてる。あとは営業サイドで追加の請求をすればいいはずなんだが・・・」
「その場合、どうすればよかったんです?」
「渡す前に、上司に確認の電話だそうだ。 俺にそこの裁量権はないらしい」
「ふ~ん、なるほどね~」
そうつぶやく五条を見て 『いいよなお前は』 と思った。
*********
いやな一日だった。
イチローは家に帰るなりゴロンと横になった。
『会社辞めて~~』とつぶやく
だが今年で46歳になるイチローには、それが無謀であることを知っている。
この年で転職して上手くいくはずもない。
ストレスがたまる一方だ。
そんな俺のストレス発散がアニメを見ることだった。
そのきっかけは後輩の五条。
奴が新人の頃、仕事を一緒にする際に会話が続かなかった。
共通の話題を探るが、どうもかみ合わなくて、唯一どうにか話ができそうなのがアニメだった。
当時の俺は、完全にアニメは卒業していたのだが、もともとそんなにアニメが嫌いじゃなかったので、五条おすすめのアニメを見たら、、ハマってしまった。
他のおすすめを聞いて見まくった結果、深夜アニメを録画しまくり、最近は『今期はいいアニメが多いな~、特におすすめは・・・』と、すっかりアニメ談義をするような間柄に。
今日は特にお気に入りの作品が録画されている日。
異世界転生作品で、内容は無職で引きこもりの主人公がトラックに轢かれて死亡、異世界に転生して、今度こそは本気で生きる!ってアニメ。
とても面白かった、とにかく作画がいいのと、最初はエロいだけのアニメかな~と思っていたが、そんなことはなかった。
続きが知りたい、この衝動が抑えられずネットで検索したら、原作が無料Web小説で読めるという。 さっそく読んでみたら、一週間で読み切ってしまった。
結末を知ってしまうと、その話をしたくて仕方なくなるんだけど・・・アニメだけ見る派の五条には 話を振れなくなった。 ネタバレ厳禁なのだ。、
それにしても,このWeb小説サイトは大手らしく、いくつもの小説がアニメ化されている。
そしていくつかの作品を読んで、あろうことか・・・・・・俺にも書けるんじゃね!?と思ってしまった。
思ってしまったのだ。
こうなると俺はやらなければ気が済まない性格で、今までもブログ書いてアフィリエイトで儲けようとか、YouTubeに投稿して儲けようとか、全然儲かりそうもないポッドキャストにも挑戦していた。
まあ、どれも中途半端で辞めてしまってるんだが・・・
早速、小説を書くための情報を集める。
やはり書くなら異世界転生物かな~とか、面白い話って設定がしっかりしてるとか、そのあたりを取りあえず何とかしたいと思っていたら、とあるソフトにたどり着いた。
【The most powerful novel creation software (小説家になるための最強アプリ)】というソフト。
質問に答えていくだけで、登場人物や小説の世界観を設定できるみたいだ。
有料で高かったが、思い切って買ってしまった。
まずは主人公の設定。
初作品だし、特に物語のアイディアもなかったので、俺の性格とかを設定する。
名前は仮で本名を入れておいた。
もちろん年齢は今より低く、顔も童顔で女装してもいける感じの顔・・・あ〇ち充の主人公みたいな イメージで、性格も明るくて社交的にした。
こうなりたいという願望を設定したのだ。
そうなると俺じゃないってことになるんだけど、まあ小説だし、異世界に転生したらそれもありかな~と。
続いてヒロインの設定
名前はネットでヨーロッパ系の名前を調べて、エミリーと名付けた。
顔は俺の好みをイメージして、かわいい系で、童顔で、こっちは浅〇南みたいな感じかな~。
性格は明るくて、社交的で、、あれ? まあいいか、 あとは、ドジっ子なところがあって、たまに天然発言をする。
まあ設定しながらも、俺はこんな子が好きなんだな~と改めて思っていた。
あとは、冒険者としての仲間も欲しい!
パーティリーダーとして俺の親友をイメージした。
そいつは俺と違ってリア充でだれとでも仲良くなれる。小中高と一緒で家も近かったこともあり、よく一緒に遊んだりした。
その親友が結婚してからも、会う回数は減ったがたまにあったりしてる。 いいパパさんをしてるみたいだ。
名前はレナルド。
性格は、親友そのままで、顔も親友そのまま若かったころのイメージで設定
もう一人女性のキャラを設定。
名前はアルマ。
顔は・・・すべて整った大人びた宝塚出身女優のイメージ。
性格もお姉さんキャラで、エミリーを妹みたいに扱う感じで、この子も明るくて社交的な・・・あら、全員社交的か・・・まぁいいか。
で、なんとなくだが、『主人公のイチローが好き』って設定も入れた。
続いてマップをソフト内にプリインストールされてるものから選ぶ。
あとは世界観とかいろいろあったが、、、とりあえず後回しにして、小説の冒頭だけでも書いとこうか。
このソフトで本文を書くとWeb小説とうまい具合にリンクして投稿もできる仕様だ。
え~っと、顔とか設定してるし、異世界転生じゃなく異世界転移にしようかな~。
転移場所は、そうだな~、昔のPCで壁紙にしてた草原とかがいいかな~。
のんびり書いていこうと思います。 感想などよろしくお願いいたします。