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第94話 11歳の現状②

前回の続きです。





天正7年(1579年)2月 上総国 天羽郡 湊城



 南方の開発も順調だよ。八丈島には備蓄倉庫を追加で建造したから、食糧が足りなくなることはなさそうだ。それからサツマイモの乾燥の仕方も教えといたから、干しいも作りも始まって、より備蓄性は高まってる。


 ちなみに、俺が『乾燥』って言葉を使ったのが悪かったのかもしれないんだけど、各地で『乾燥芋』って名前で定着しちゃった。まあ、方言ではそんな言葉もあったみたいだから、あんまり気にしないことにしてる。


 で、この『乾燥芋』なんだけど、旨いし、火が要らないし、片手でも食えるってんで、行軍食に採用されちゃったんだ。俺としては乾パンあたりが推しで、研究も進めてたんだけどね。確かに春先の行軍には良いかもしれない。夏前までしか保たないんで、万能じゃないのが難点だけどね。




 そうそう、八丈島では、懸案の大坂峠のトンネル工事も始まったんで、金槌とかノミとかツルハシとかの工具も大量に輸送してる。



 工事とかのために鉄をたくさん使って良いのか、って?


 実は、鉄鉱山のある日立で高炉の運転を始めたんで、鋳鉄はふんだんに使えるようになったんだよ。


 え、高炉? 実はね、高炉って紀元前からあるんだよ。意外でしょ?


 最初に造られたのは中国の前漢らしいよ。ヨーロッパのヤツはだいぶ時代が下るんだけど、12~14世紀の間ぐらいにはあったらしいから、もう『枯れた技術』って言っても良いかもしれないね。


 そんなに古くからあるのに、なんで主流にならなかったのかっていうと、はがねは鋳造できなかったからなんだ。そう、高炉で造られる鉄は脆いんだよ。だから、反射炉とか転炉とかを使って、鋼にしてやるって工程が必要になるんだな。


 そんなわけで、高炉で造った鉄器は、間違っても武器とかには転用できないんだけど、数打ち物の工具だったら何とでもなる。今は八丈島の工具と鉱山が中心だけど、今後は農具とかにも手を広げて、『壊れたら地元の鍛冶屋に治してもらえ』ってどんどん各地に販売していく予定だよ。



 ちなみに、高炉で作った鋳鉄の半分は、船で安房の天津港に運んで、反射炉2号で鋼にしてる。


 気付いちゃったんだよ。『反射炉で造るの、何も大砲にこだわる必要ないじゃん』って。


 大砲だと大量の鋼が必要だから、大きく作らなくちゃいけなくて、いろいろと大変だけど、鉄砲レベルなら、もうちょっと気軽に作れるんじゃなかろうか?


 こう考えて2号炉を造ったんだけど大正解だった。信頼性とか耐久性とかは未知数だけど、大量生産が可能になったんで、数を揃える目処は立った感じかな?


 これまでも財力に物を言わせて鉄砲を買い集めてはいたけど、自家生産できるとなれば、別のところに投資ができるから助かるよ。今は金がいくらあっても足りないからね。




 豆南諸島と小笠原の開発はこれからかな。父島には船着き場と居留地を造って、ここを拠点に探険を進めさせてる。ちなみに、第2次調査隊からは、「父島と母島には稲が自生してた」「聟島に置いてきたサツマイモが、物凄い勢いで繁殖してた」って報告が来てる。


 誰の仕業かは分かるよね?


 自然分布じゃなくて人為的な移入なんで、これ以上の発見はないはずだけど、これぐらいやっておけば、初期の入植はずいぶん楽になるんじゃないかな?



 あ、それから、屏風島(須美寿島)と小笠原近海のサンゴ漁は休止中だよ。採っても売りさばき先が見当たらないからね。


 ちなみに、最初に採った分は全部里見家(ウチ)で買い上げることにした。買い上げ金額はイタリアでの水揚げ価格(※調べた)に準じてる。


 こんな具合なんで持ち出しが甚大になっちゃったんだ。だけど、逆に言えば、買い上げたサンゴは好き勝手に使えるってことだから、現物は賄賂に使ったり加工実験に使ったりとか、とりあえず有効活用してるよ。


 今は、螺鈿らでんとか、象牙とか、鼈甲べっこうとかの細工ができる職人さんたちを探して、加工法を模索してもらってる。加工品を作れるようになれば、わざわざヨーロッパに輸出しなくてもミンとかに売れるからね。間違いなく大儲けになるはずだよ!



 胡椒とチョウジも今は備蓄中。あ、ちなみにね、これらはスペイン人たちには存在を臭わすことすらしてない。アイツら侵略してくるからね。


 特に、チョウジの方が問題でさ、この当時チョウジはモルッカ諸島でしか採れなかったんだよ。小笠原にそんな貴重な物があるとわかったら、間違いなく攻めてくるだろ?


 だから、マリアナをいただくまでは知らん顔をしといて、獲得後に、『モルッカ諸島に遠征してこっそり手に入れてきた』って理屈で売り飛ばすんだ。絶対こっちも大儲けだよ。



 早く『マリアナ諸島切り取り次第』のお墨付きが来ないかな?


 いつ来ても良いように、ガレオン船の建造と遠征軍の選抜は抜かりなく進めてるからね。お墨付きさえ出たら、すぐにでもグアム島に向かわせて、拠点を整備するんだ。



 原住民(チャモロ人)と戦争をするのか、って?


 いやだなぁ、そんな面倒くさいことしないよ。向こうが力ずくで奪いに来た時は容赦はしないけどね。


 まあ、幸いこっちには、ガダオとグアパンっていう『通訳』がいるから、大きな争いにはならないと思うけどね。基本的には、安納芋とかサトウキビとかラム酒とかと交換で、族長から開発権をもらって、要塞とかドックとかを造っちゃう方向で考えてる。


 で、一番大きいグアム島を手中に収めたら、ロタ、テニアン、サイパンって島伝いに拠点を増やしてく予定。


 情報って徐々に伝わるから、各島で『スペイン人と違って、何もしなければ襲ってこないし、お願いを聞いたら旨いものもくれる』って評判が立てば、より楽に拠点化ができるんじゃないかな?



 サイパンあたりまで拠点化できたら、北マリアナとか小笠原の小っちゃい島にも香辛料を生やしちゃうんだ。


 しちゃった後に言うのもなんだけど、きっと、後世の科学者はメッチャ困るだろうな。


 待てよ! もしかしたら、俺のやったこと、世界の七不思議とかになるんじゃね!?

 そう考えたら、なんかワクワクしてきた(笑)


 今後も気にせずやろうっと!










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こちらは前作です。義重さんの奮闘をご覧になりたい方に↓ ※史実エンドなのでスカッとはしません。
ナンソウサトミハッケンデン
― 新着の感想 ―
[一言] >世界の七不思議 WIKIに里見の七不思議とかの項目ができそうだなあd(´▽`)ハハハハハ
[一言] どうせならハワイやポリネシアまで範囲広げてみよう それと、どっかで香木作り替えて朝廷に献上してつながりを強化しても良いかな
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