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第83話 また領地が増えちゃった ※地図あり

※後書きに地図を載せてあります。

天正6年(1578年)5月 上総国天羽あまは郡 みなと



 こんにちは、安房国主 里見梅王丸こと酒井政明です。

 今日は新しく本城にした湊城にいるんだ。この湊城っていうのは、長浜湊に新しく築いた海城だよ。国主の立場で考えると天神山城は手狭なんでね。



 え?『安房国主』なのに、なんで上総の城にいるのか、って?


 実は、また所領が増えちゃったんだよ。つい最近になって、望陀もうだ郡と海北かいほう郡、市東しとう郡、市西しさい郡も任されることになったんだ。もとの所領はそのままだから、石高で言うと、合計30万石分ぐらいある。


 で、その中で、安房の所領はっていうと、全体の1/3にも満たないんだもん。こうなると、統治しやすいところに拠点を置きたくなるよね。



 え? 何でまた増えたか、って?



 上杉の『越山』ね。あれ、無くなったんだよ。

 なんでって、史実どおり上杉謙信が死んじゃったからね。



 ちなみに、『謙信倒れる』の一報が飛び込んできた時、里見家ウチは古河城に4万の兵を結集してた。結構集まったでしょ?


 先日『野戦で決着を付けよう』ってことに決まってたからね。


『狙っただろ!』って?


 当然! そりゃ狙うでしょ!!

 史実どおり謙信さんが倒れてくれたら、それに乗じて不満分子を思い切り叩けるかもしれないんだからさ!


 いろいろ歴史が変わってるから、史実どおりに行かない可能性もあったよ。けど、領内では大砲も鉄砲も量産体制が整ってたから、仮に謙信さんが元気に越山してきても、野戦陣地と十字砲火で何とかなるんじゃないかって思ったから提案したんだ。だから、決して一か八かの賭けでやったわけじゃないんだよ。



 ちなみに、どうやって軍勢を集めたかって言うと、事前に


『関東公方にあだなし、関東の和を乱す不忠者(謙信)を討つ。されば、3月9日までに、古河城に参集せよ!』


って檄文を東関東の諸将全てに送ったんだよ。しかも、足利義氏さん、藤政さん、頼淳よりずみさんの連名でね。



 何でそんなことをしたのか、って?



 裏切り者のあぶり出しに決まってるじゃん!



 だって、上杉の越山の理由をよく読むと、『関東の諸将の要請に応じて』ってセリフがあったんだ。つまり、これって表向き里見や北条に従ってる誰かが援軍要請を出したってことだろ?


 でも、誰が裏切るのかは、手紙を見ただけじゃわかんない。だから、関東公方家連名の檄文で、全員呼び寄せてみた。そういうわけだよ。


 送られてきた檄文を見て、参集するのは味方、来ないのは反逆者。わかりやすいだろ?



 結果、同盟してたのに来なかったのは、小山秀綱さんと結城晴朝さん。晴朝さんは重臣の水谷正村みずのやまさむらさんを送って来たけど、そんなんじゃ許さない。こっちは正木憲時さんが戦死する原因を作ったの、忘れてないからね!


『謙信倒れる』の報を聞いて慌てて飛び出してきたけど、もう遅い。こっちの方が情報が早い上、動かせる状態で4万の兵が集まってるんだ。小山も結城も古河の目と鼻の先だし、びの使者を出してくる前に、城下まで押し寄せてやった。


 この人たちは、『不忠である』ってことで、所領を半分奪って古河公方家に献上。地位は里見の従属大名に落としといた。


 あ、水谷正村さんは結城から引き剥がして、里見の家臣に加えたよ。彼、優秀だからね!



 次は一度降伏して従属大名になってた連中だ。具体的には、那須、宇都宮、皆川、芳賀はが、江戸、多賀谷あたりだね。


 この辺の輩への対応は、攻め込まれる前に降伏してきたら減封。攻め込まれてから降伏したら減知移封(領地を削って移動)って処置することに決めてた。前にも言ったけど、こいつらプラナリアみたいなもんで、下手に頭を潰すと変なとこから生えてきて逆に面倒くさいからね。


 結局、滅ぼしたのは、那須資胤さんと江戸重通さんぐらいだった。最後まで抵抗されちゃうとどうしてもね。一応、庶流を探して捨て扶持を与えといたんで、プラナリア化は避けられたと信じたい。




 え、佐竹はどうした、って?


 それがね、ちゃんと来たんだよ!



 佐竹義重さん、悪運が強いね!


 もしかすると、『戦場で裏切ってやろう』って魂胆だったのかもしれないけど、来ちゃったものは仕方ない(笑)。しかも、那須攻めや江戸攻めでは先頭に立って戦功を挙げるもんだから、加増せざるを得なかったよ。うーん困った!




 話を戻すと、3月からの一連の戦闘は終わったんだけど、今は戦後処理の真っ最中なんだ。滅ぼした大名こそ少ないけど、領地を減らしたり、他に移した大名はたくさんいるから、区割りが大変だし、論功行賞もしなくちゃいけないだろ?


 義弘さん(父ちゃん)は常陸と南陸奥を、義頼(義父)さんは下野と下総を担当してて、2人とも目が回るような忙しさみたい。


 それも何とか一息ついて、義弘さんはやっと佐倉(鹿島)城に戻っきた。と、こんなわけ。


 でも、義頼さんはまだ済んでないんだ。なんか、下野の戦後処理が終わったら、降伏した連中を率いて、北条の唐沢山城攻略を手伝いに行くんだって。


 北条にどこまで付き合うのかはわかんないけど、越後では御館の乱が絶賛開催中みたいだから、しばらくは戻って来れないかもしれないね? かわいそうに……。



 こんなわけで「お前も手伝え!」って任されたのが、今回増えた所領なんだ。10歳の俺にどうかとは思うんだけど、義弘さん、義頼さんが倒れそうなくらい頑張ってるんだ。流石にこれじゃあ文句は言えないね。




 こんなことを考えながら海を見ていると、長浜の湾に一艘の早船が飛び込んできた。


 その船は一直線に城の方に向かってくる。よく見たら帆に付いたあの旗、『緊急事態』のしるしじゃん! 一体何が起こってるの!?


 とにかく何があってもいいように、準備しなきゃ!!!




「宗右衛門! 船を受け入れる準備を! 正木堯盛(淡路守)は、一番早いガレー船を準備しといて! いつでも出港できるようにね」


「「はっ!」」




 数分後、広間に息も絶え絶えの使者が現れた。




梅王丸様(若様)! 里見義弘(副帥)様、本日佐倉城にて昏倒されました!」




 えええええええええええええ!!!!











挿絵(By みてみん)

梅王丸管理地域(※1578年5月)



挿絵(By みてみん)

上杉謙信に呼応した勢力(赤)

※中央部の空白は古河公方家、簗田家、水谷家の領域です。

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こちらは前作です。義重さんの奮闘をご覧になりたい方に↓ ※史実エンドなのでスカッとはしません。
ナンソウサトミハッケンデン
― 新着の感想 ―
[良い点] 予想された「謙信死す」を利用して、獅子身中の虫を炙り出す策略が素晴らしい。 前話でその前準備を、目的をはっきり示さずに(何か大きな仕込みをしている風に)描いてくれると、溜が効いてもっと面白…
[一言] 酒毒と過労死、どっちがマシかなあ
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