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第300話 時空の間にて その2

 皆さんこんばんは、酒井政明です。

 これから夢の中(?)で、ネット(?)にアクセスして重要情報の調査をするところなんだ。


 これは雨でも晴れでも、どんなに疲れてても辛くても欠かしてない。って言うか、眠ると自動的にアクセスするようになってるんで、完徹とかしてない限りは確実な日課なんだよね。


 え? 完徹したことはあるのか、って?


 うん、関ヶ原で夜襲をかけた日とかは完徹してるよ。まあ、あの時は、出発前に仮眠を取ってるんで、その時間にアクセスしちゃったけどね!


 そんなわけで、仮眠でもアクセスは可能だから、生まれてこの方……、あ、ごめん。生まれる前からか! ……つまり、転生して以来この習慣を欠かしたことはないんだ。


 だって、翌日持ち越し不可で1日1回限りの権利なんだよ? 使わなかったら勿体ないじゃん!



 さて、てなわけで、今日は何を調べようかな? 初期の装甲艦の設計図でも探そうかな? それとも加硫ゴムの生成について、比率の確認をしようかな?


 なんてことを考えてると……。




「酒井殿!」

「うわああああ!」




 ビックリした! いきなり後ろから声を掛けられたんで、思わず大声を上げちゃったじゃん!

 振り返ると、そこに居たのは里見義信(この体)の本来の持ち主、里見義重さんだったんだ。




「……なんだ。義重さんじゃないですか。もう、脅かさないでくださいよ」


「いや、済まぬ済まぬ」


「それにしてもずいぶんと御無沙汰でしたね。最近全く現れないから、てっきりもう成仏(転生)したのかとばっかり」


「誰が成仏などするか!」




 一瞬、怒ったような顔をした里見義重さんだったけど、すぐに表情を如何にも済まなそうな物に変えると、こう言った。




「……いや、恩人の酒井殿に怒鳴ってしまって申し訳ない。実は、常々閻魔から『早く成仏せい!』とばかり言われておるもので、思わず出てしまったのだ。許してほしい」


「そんなの気にしないでくださいよ。で、何で最近顔を見せてくれなかったんですか?」


「酒井殿の働きで、今や世界はわしの知るそれとは大きく違っておるであろう? そのような中しゃしゃり出て、間違うたり古びておったりする情報を垂れ流しては迷惑かと思うての。ここしばらくは遠くから様子を見守るだけにしておったのじゃ」


「『迷惑だ』なんて、これっぽっちも思ってないですよ。最近ちょっと慣れてきましたけど、それでもまだ、この時代の常識とそぐわないことをしちゃいそうになることがあるんです。そういう時に頼りになるのが義重さんだったんで、相談に乗ってくれるのは嬉しいですよ」


「そ、そうかの!?」


「それに、義重さんとお目にかかれれば剣の修行もできますし。なにせ、将軍を継いでからは政務が忙しく、十分に修行の時間がとれないんです。それだけでも十分に助かりますんで、差し障りが無いようでしたら、いつでもお声かけください」


「そうかそうか! 儂が居ると助かるか! それではいつでも遠慮無く声を掛けさせてもらうとしようかの」


「ええ、成仏しないんでしたらいつでも!」


「だから、誰が成仏などするか!!」


「「わはははははは!」」




 俺たちが顔を見合わせて大笑いしてると、どこからともなく白いつなぎを着た時空管理者(閻魔大王)さんが現れた。




「お、義重さん、酒井さんとお話しできたんですね。おめでとうございます」


「いや、まだじゃ」


「じゃあ、早くしないと!」


「分かっとる! 少し静かにしておれ」




 義重さんは、時空管理者(閻魔大王)さんを手で後ろに押しやる。そして、ゴホンと1つ咳払いをして、表情を引き締め……。




「今回どうしても話したかったのは、瑞龍院(父上)のことよ」


「ああ、義弘さんのこと……。5年前の発作の時は、偶然もあって何とか持ち直させられたんですけど、流石に寝てる間だと手の尽くしようが無くて。この度は死に目にも会えず、本当に申し訳ないことに……」


「そうではない!!」




 謝罪する俺の言葉を遮るように義重さんが叫ぶ。




「そうではないのだ。儂の知る世界では、父上はいつも中風の発作を起こし、体が不自由な生活をしておった。そして、儂の子どころか妻を見ることもなく世を去ってしまわれた。


 それがどうだ? 今生では、古希(七十歳)の祝いが出来ただけでなく、曾孫までその腕に抱かせてやることが出来た。これはひとえに酒井殿のおかげ。改めて礼を申す」




 こう言うと、義重さんは、深々と頭を下げた。




「……義重さん」




 感極まってる俺たちだったけど、そこにパン、パンと手を叩く音が響いて、現実(?)に引き戻された。時空管理者(閻魔大王)さんだ。




「ささ、酒井さんも義重さんも、故人を偲んで今日は飲みましょう。酒は私の方で出しますんで」


「おお! 閻魔、珍しく気が利くではないか!!」


「はい、秘蔵の『天界山』ですよ!」


「ありゃ? 『神酒(ネクタール)』じゃないんですね?」


「……流石に『神酒(ネクタール)』はいろいろ支障があるんで出せません。でもでも、『天界山』も美味しいんですよ?」


「へー、それは楽しみですね!」


「はい、楽しみにしててください!」




 そう言いながら胸を張る時空管理者(閻魔大王)さんの後ろで、義重さんがニヤリと悪い笑みをこぼしたのを俺は見逃さなかったよ。ははーん、義重さん、裏でなんかやったな?




「酒井さん、どうなさったんですか? いきなり変な笑みを浮かべて」


「(おっと、いけね! 顔に出ちゃったよ)い、いや~ 『天界山』楽しみだな、って思ったら、思わず笑みが出ちゃいまして!」


「そうですか! 楽しみにしててくださいね。美味しいですよー」


「よし! 閻魔、儂は酒器を持ってこよう」


「お、義重さん気が利きますね」


「任せておけ!」




 義重さんが持ってきた器は、なんと五合枡ごごうますだったよ。時空管理者(閻魔大王)さんに咎められると、「これなら旨い酒をこぼさず注げるからの!」だって。


 確かに五合枡なら一升を3分割しても余るけどさ。流石にそれはどうなんだろ。


 微妙な表情の俺を置いて、2人はテキパキと準備を進め、そして。




瑞龍院(父上)の冥福を祈り、献杯!」

「「献杯!!」」




 義重さんの音頭で、俺たちは枡を高く掲げ、中の神酒(●●)をぐっとあおる。


 うーん、旨い!



 目の前で、2人の追いかけっこが始まったのを見ながら、俺は久々の神酒(ネクタール)の味を堪能したのだった。



「あーっ! 酒井さんも、もう飲んじゃダメ~!!」







 遂に『南総里見異聞録』も300話に到達しました。

 読者の皆様におかれましては、80万字以上にわたり、お付き合いいただきありがとうございました。皆様のレビュー、感想、ブクマ、評価、イイね、PVのおかげで、書き続けることが出来ました。ありがとうございました。


 なお、未評価の方におかれましては、ここまでお読みいただいて、本作の印象はいかがでしたでしょうか? よろしければ下にある評価欄をお使いいただき、ここまでの評価をお伝えくださいますと作者としても励みになります。よろしくお願いいたします。

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こちらは前作です。義重さんの奮闘をご覧になりたい方に↓ ※史実エンドなのでスカッとはしません。
ナンソウサトミハッケンデン
― 新着の感想 ―
第300話おめでとうございます。第200話以来の時空の間で楽しめました。 年末の繁忙期を迎えるとのことですが、これから寒くなってきますし、くれぐれもお体にはご自愛していただき、正月休みに次話を読ませて…
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