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第280話 今後の国の形①

 文禄2年(1593年)1月  武蔵国 豊島郡としまぐん 江戸城



「………………昨年までの南蛮とのいくさでは、我が国は万里の果てまで遠征し、勝利を得、みかどの威光を海外にまであまねくく示すことが出来た。これは参集の諸侯や軍人、官人たちの働きの甲斐あってのことである。


 しかしながら、明国とのいくさ以来、手にした土地は日本(本朝)古来の領域の十倍をはるかに超える。これを統治するには従来のやり方をしていては到底立ちゆかぬ。しかしながら、現地の民に任せ放棄してしもうては、南蛮人どもや紅毛人どもが新たに出張ってくるだけである。


 よって、我らも全く新たな国の形を作っていかねばならぬ。今日、其方らにはその形を示す。今までの常識とかけ離れた部分も多いゆえ、思うところのある者はおろうが、2千年続く日本(本朝)の歴史を、万世に繋いでいくためには欠かせぬ事である。不満がある者も、それを曲げて飲んでもらいたい」



「「「「「………………………………」」」」」


「上様、ありがとうございました。それでは、具体的な諸侯の役割についてはそれがしより、申し伝える。まずは、毛利輝元(中納言)殿」


「はっ!」




 皆さんこんにちは、25歳になった酒井政明こと里見義信です。


 大広間に陣取る200人弱の諸侯を前に、演説をうったとこなんだ。今は今期の老中首座を務める島津義久から、毛利輝元への伝達が行われてるとこだよ。




「…………での働きは目覚ましい。よって、安芸、備後、備中71万石に替えて、新羅国しらぎのくにの内にて145万石を与える。北狄の害より新羅王宮様をお守りすべし」


「謹んでお受けいたします!」




 初っぱなから、倍増以上の加増。しかも、今まで存在しなかった(※3分割予定の徳川家を除く)100万石以上を領する大大名の誕生。その反面、本領の安芸は公収。


 あちこちから色々な意味を込めてどよめきが上がるけど、そのどよめきが大きくなることは無かった。



 理由? 10万石以上の大名家には根回ししてあったからね。そもそも、毛利家自体が根回し対象だし。


 ま、今日はこんな感じで、どんどん転封と外地での分担を指示していく予定なんだ。


 家督を継いでから8年半、外征に次ぐ外征で目の回るような忙しさだったけど、これでやっと腰を落ち着けて内政に取り組めるよ。



 え? 獲得した海外領土の割り振りが、なんで“内政”になるんだ、って?


 嫌だなぁ、海外の領土だって、もう立派な日本領。日本の内なんだよ。だから、それも含めての“内政”に決まってるじゃん!


 ……マダガスカルからカリフォルニアまで、って、もはや、コレ『日の沈まない国』になってるんじゃね?


 琉球征伐を始めた時には、まさかこんなことになろうとは思ってなかったよ。



 え? どんどん喧嘩をふっかけてったのはどこの誰だ、って?


 うん、明や朝鮮は計画通りだったからともかく、スペイン・ポルトガル相手の戦いは流石にやり過ぎだったって自覚はあるよ。なにせ、最初は、南はマラッカ・シンガポールぐらい、東はカリフォルニアぐらいで矛を収めるつもりだったんだからさ。



 なんで、止めなかったか、って?


 だって、今回は敵の首領(フェリペ2世)が、どれだけ負けても音を上げなかったんだよ!


 敵の指揮官は一戦した段階で完全に心を折られちゃうんだけど、後から送られてくる連中は最初メッチャ士気が高いのよ。後で捕虜を尋問したら、みんな口を揃えて、「野蛮な先住民相手だから、手柄立て放題略奪し放題だと思った」って言うじゃない。


 配下の軍人たちが1人残らずそう思ってるんだから、皇帝にまともな情報が伝わってるわけがないよね。早期に終戦させるには、どうにかして国王に、「アンタが戦ってるのは、逆立ちしたって勝てる相手じゃないんですよ?」って教えてあげないといけなかったんだ。


 まあ、流石にイベリア半島にいきなり乗り込むのは、最初っから無理だったんだけどさ。



 じゃあ、東アジア諸国で成功した断頭作戦(君主捕獲作戦)が無理なら、どうすれば良かったのか。


 捕虜に恐怖心を植え付けて追い返せば良いんだよ。でも、「戦っても勝ち目はないけど、すぐに降伏したら許される」ってレベルに抑える必要はあるんだ。恐怖心を煽りすぎて、「どうせ死ぬならイチかバチか!」って抵抗されるのは面倒だろ?



 だから、途中からは、恐怖心を煽って送り返すようにしたんだけど、時、既に遅しだった。そこまでに獲ってた捕虜は、港湾整備に鉱山開発に果てはガレー船の漕ぎ手に至るまで、強制労働力としてフル活用しちゃってたんだ。


 捕虜の労働力込みで作戦計画も立てられてたんで、簡単に解放することも出来ず、気付いたら大西洋に入っちゃったと。


 やっぱり、お前の自業自得じゃないか?


 ……はい。そのとおりです。



 ただねぇ、手を出しちゃったからにはどうにかするしか無いじゃん?


 当初の予定では、中央部の諸侯を台湾と三韓地域(朝鮮南部)蝦夷地(北海道)辺りに移封することで、集権的な統治を実現する予定だったんだ。そして、外地に加えて、四国、九州、東北辺りでは封建態勢を維持しながら、数十年単位の時間をかけて完全な集権体制へと移行すればいいって思ってたんだけどね。



 ちなみに、転封先だけど、百済国には織田系の諸将を配置したよ。なにせ、信長さんの猶子である邦慶親王様が百済王だからね。新羅国は毛利家を始めとする山陽山陰の諸侯、任那国には島津家を除く九州土着の諸侯を置いてる。あ、ちゃんと全員加増してるよ。今回の功績にもよるけど、石高換算で最低1.5倍にはなるようにね。



 九州で“例外扱い”になってる島津家はどうするんだ、って?


 そこはちょっと違う対応をするんだ。


 なにせ、当初の予定が完全に狂っちゃったんでね。で、結果、思いついたのが……。


 お、ちょうど、伝達役が池田恒興に交代するとこじゃん! 島津義久たちへの発表は、恒興からする予定になってるんだ。自分で自分の発表をするのも締まらないし、1人で全部発表するのは大変だからね。



 ちなみに池田家は、既に90万石で百済国くだらのくにへ加増転封することが発表されてるよ。俺がこれを語ってる間にね。


 まあ、恒興自身は今期で引退して、息子の元助に代替わりする予定なんだけど。



 輝政? 兄貴が存命なんだよ? 今生では出番無しになる公算が大きいんじゃない?


 おっと、始まる始まる!



 島津家の褒賞(役割)は何なのか、よーく聞いといてね!










長くなったので、ここで分割します。

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こちらは前作です。義重さんの奮闘をご覧になりたい方に↓ ※史実エンドなのでスカッとはしません。
ナンソウサトミハッケンデン
― 新着の感想 ―
根回しって大事ですよね 組織で働いているともう根回しだらけ あれも根回し、これも根回し
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