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第279話 25歳の現状

 文禄2年(1593年)1月  武蔵国 豊島郡としまぐん 江戸城



 皆さんこんにちは、25歳になった酒井政明こと里見義信です。

 いや~、里見家を継承してから8年半、思い返せばいろんなことがあったね。


 ここのところ外征続きだったもんで、あんまり触れられてなかったけど、俺、8男7女の親になってるんだ。


 まさか15人の子持ちになるとはねぇ。ま、とは言っても、うち4人は徳川信康さんの子なんで、本当の俺の子は11人なんだけどね。


 それでも多いって?


 まあ、この時代の話なんだから仕方ないじゃん!


 ちなみに、11人の内訳は、鶴姫さんが3男2女、徳姫さんが2男1女、堯媖ぎょうえいさんが1男2女だよ。



 あ、そうそう、信康さんの長男の竹千代くんは、このたび元服して無事に初陣も済ませたんだ。命名『義康』。彼は俺の猶子ゆうし扱いなんで、『義』の字をあげた。当然、烏帽子親は義信()だよ。


 ちなみに、『義康』って言うと、史実では義頼さんの後を継いだ『里見義康』を思い浮かべる人もいると思うんだ。でも、彼はこの世界線では蘆名盛興の長女と結婚して、『蘆名義盛』として蘆名家を継いでるの。だから、竹千代くんが『義康』でも問題ないんだ。



 それから義康の姉にあたる登久姫は最上義光の長男と、熊姫は津軽為信の長男と結婚したよ。俺の養女としてね。


 特に最上義光は、奥羽征伐の時に欲をかいて以来、微妙に冷遇されてたんで、話が来た時には跳び上がって喜んでたっては聞いてる。


 え? 他の子たちの婚約者?


 決まってるのは、長男の梅千代丸の相手だけだよ。だって、相手の様子を見定めたいじゃん?


「なんで梅千代丸だけ?」とか言わないでよ? 彼の婚約者は条約で決まってて、もはや選択の余地がないんだから。


 そう、お相手は万暦帝さんの長女の軒媖けんえいちゃんだよ。日本こっちで養育してることもあって、順調に成長してる。「飛び抜けて」っては言えないけど、傍から見てる分には、なかなか優秀なんじゃないかな?


 あと、政略結婚にはなるんだけど、近くで育ってることもあって2人は仲良しだよ。この調子なら「婚約破棄を申し付ける!」とかは無いと思う(笑)



 弟妹たちも順調に成長してるよ。

 異母弟の明星丸あけほしまるが、大崎家に養子に入った話は確かしたことがあったよね? 9歳で家督相続した彼も、もう19歳になるんだ。早いよねぇ。


 大崎義兼として元服した彼は、対明戦で初陣を果たしたんだけど、なかなか軍才があったみたいで、今回の南蛮戦争では伊予の水軍を率いて、なかなかの活躍ぶりだったよ。


 同じく異母弟の天星丸あめほしまるは、内房正木家の養子に入ることが決まってる。具体的に言うと、里見の水軍大将 正木堯盛の養孫になる感じかな。



 それから、俺には梅若丸うめわかまる乙若丸おとわかまるって双子の同母弟がいたんだけど、この2人は、梅若が土岐頼春の、乙若が上杉景勝の養子に入ったよ。梅若丸改め『土岐信春』、乙若丸改め『上杉信景』。元服まではさせたけど、その他は追々かな?



 弟の動向はこんな感じ。で、次に妹ね。


 実は、前世(義重さんの時代)でも妹だった桃姫は、既に3年前に嫁いだんだ。お相手は信長さんの息子の信吉くん。これは予定通りだね。残念なことに(●●●●●●)信吉くんがすぐ出征しちゃったから、子どもはまだ生まれてない。でも、去年戻ってきてからは随分と仲良くした(●●●●●)らしいんで、「おめでた(●●●●)だ!」って情報を掴んだ。正式な使者はまだ来てないけど、風魔衆からの情報なんで間違いないでしょ。


 え? 何を探らせてるんだ?


 そりゃ、かわいい妹の一大事だよ!? 普通探るでしょ? それに、婚期を遅らせず、若年妊娠を避けるために色々とコントロールしてきたんだから、ちょっと隠密を入れたぐらいでうだうだ騒がれても……。



 結婚もそうだけど、おめでた(●●●●)についても、閻魔様の部屋(時空の間)里見義重さん(前世の自分)に報告したんだけど、こっちが驚くくらい喜んでたな。あれだけ喜ばれると報告のし甲斐があるよ!



 もう1人の同母妹の菊姫は、去年佐竹義宣に嫁いだよ。父親の佐竹義重とは、最初色々と確執があったけど、義宣は、政宗や義道、盛安と一緒で、俺の剣友で学友。同じ釜の飯を食った間柄だから、こっちとしても安心感が強いかな。……ま、大事にしなかったら、ただじゃおかないけどさ。



 あと、前にも言ったかもしんないけど、異母妹の楓姫は朱常洛くん(明の皇太子)の婚約者になってるよ。2人ともまだ10歳なんで、結婚はまだまだだけどね。あ、当然、交流はさせてるよ。こっちも仲良しなんで、今のところ心配はなさそうな感じ。まあ、何かあったら大変だから、最重要課題の一つとしてしっかり見守ってるけどね。



 さて、ここまでは若者たちの話だったんだけど、生まれた人がいるなら、当然亡くなった人もいる。


 例えば、里見家うちの関係者では、天正18年(※1590年)に白井浄三師匠が他界してる。


 浄三師匠、ずっと自分の子が戦気を見られないことを嘆いてた。亡くなる直前には見舞いに行った俺に「白井浄三入道の子でありながら、戦気も読めぬ豚児は禄盗人ろくぬすっとに等しい。白井家はこの浄三一代で断絶してくだされ」なんて言ってたからね。


 確かに師匠の息子の富治は能力的にはイマイチなんだ。でも、改易にはしてないよ? 本人の能力はイマイチでも、表立った落ち度は無いし。そもそも、『戦気を見る』とか、浄三師匠だけのリアルチートなんで、出来なくて当然なんだからさ!



 話を戻そう。有名どころの大名で亡くなったのは、稲葉一鉄(19万石)と、山岡景隆(24万石)と蒲生賦秀(氏郷)(28万石)ね。


 稲葉一鉄は史実通りだけど他の2人は違う。まず、山岡景隆。彼は史実よりも6年ほど長生きしてるんだ。史実では所領没収されて失意の内に亡くなったんだけど、今生では史書に載るような大活躍をした上、国持ち大名まで出世したこともあって、気力が充実してたおかげかもね。



 逆に蒲生賦秀は4年ほど早く亡くなっちゃったんだ。


 死因? 戦死だよ。インドのゴア攻略の際に先頭に立って敵陣に突撃したところを狙撃されたんだ。おかげであの時は色々と予定が狂って大変だったんだよ。


 思い返せば、秀吉が、「氏郷の兵10万と、信長様の兵5千が戦えば、必ず信長様が勝つ。蒲生勢が織田の兵4千の首を取っても、信長様は必ず生き残るが、織田勢が5人も討ち取れば、その中には必ず氏郷の首がある。なぜなら氏郷は先頭に立って敵陣に突っ込む癖があるからだ」って語ったって話があったよ。完全にその悪癖が出ちゃったね。



 ちなみに、史実ではもう亡くなってるのにまだ生きてる人たちは、この辺り。


 池田恒興(1584 天正12年)

 蜂屋頼隆(1589 天正17年)

 堀 秀政(1590 天正18年)

 北条氏政(1590 天正18年)


 池田恒興、北条氏政の両名は戦死or自害なんで別にして、蜂屋頼隆、堀秀政については完全に『歴史が変わった』としか言い様がないよ。


 あと、没年がはっきりしないんで書かなかったけど、畠山(栗林)義長も小田原征伐以前に他界してたはず。彼なんか大怪我もしたのに、今でも普通に頑張ってるよ。



 そんな史実以上の長生き連中の中でも、極めつけはやっぱりこの人、里見義弘さん(父ちゃん)だね(1578 天正6年)。


 実に15年近く長生きしてる計算になるんだ。まあ、“長生き”って言っても、義弘さんまだ63歳なんだけどね。実の祖父である土岐為頼さんは90過ぎまで生きて、玄孫やしゃごまで抱いてったんだ、最低でもあと10年ぐらいは元気でいてもらって、孫の祝言ぐらいは見てもらわないと。


 ちなみに松の方さん(母ちゃん)も元気だよ。彼女の方も史実より10年ぐらい長生きしてるんだけど、こっちは死因=暗殺なんで、義弘さんとは比較にならないんだけどさ。



 と、廊下の方から足音が聞こえてきた。足音は襖の前で止まり、声がかかる。




「上様。諸侯、参集いたしましてございます」


「うむ。これから向かう」




 さぁて、お仕事の時間だ。じゃあ、またね!






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こちらは前作です。義重さんの奮闘をご覧になりたい方に↓ ※史実エンドなのでスカッとはしません。
ナンソウサトミハッケンデン
― 新着の感想 ―
ひょえ~ これだけ子供や親族がいると、色々と大変そうですね(もちろん設定を考えるのも)
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