第200話 時空の間にて
遂に200話まで到達しました。
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いや~今日も調べた調べた!
あ、どうも、皆さんこんばんは、酒井政明です。
今は夢の中(?)で、ネット(?)にアクセスして、調べごとをしてきたところなんだ。
この『調査機能』は重宝してる。これが無かったら、いきなり内燃機関なんて造れなかったし、鉱物資源の在処だって分からなかった。里見家が順調に発展してるのは、このチートのおかげなんだよね。
そもそも、普段から色々調べてなかったら、ヒカゲシビレタケの事だって分からなかった。つまり、場合によっては、俺自身が奴隷として海外に拉致されてた可能性だってあったんだ。
まあ、俺には『どんな言語でも理解できて、普通に話せば相手に最適化された状態で伝わる』っていう、『言語チート』もあるから、海外でも何とかなったとは思うけど、その前に確実に『アーーーーッ』な展開があったはず。そんなトラウマ事態に陥らずに済んでるんだから、『調査機能』様々だよ。
それにしても、この調査機能、『毎日1時間分』って制限があるから大変だよ。
ここの空間、俺たちの生活してる世界より高次元ッぽいんで、時間の感覚があるのは変なんだけど、どうやら体感で1時間分って決まってるみたいで、体感時間が過ぎると、いきなりネット(?)接続が切れるんだよね。おかげで、最初の頃は何を調べるのか迷っちゃって、時間を潰しちゃうことも多かったなぁ。
毎日、来てるうちに、そっちの方は、徐々に効率的に出来るようになったけど、今度は調べたいことが多くなりすぎて、優先順位を付けるのが大変でね。だから、今は寝る前にまず何を調べるかを決めてるんだ。
で、調べたことは朝起きたら、すぐに紙に記録する。それを各部署に渡して、研究や開発、調査の叩き台にさせてる。
そっち方面の人財はそれなりに育ってきてるんで、資料を与えると自分たちで色々と考えて進めてくれるようになったのは助かってるよ。それどころか、こっちの意図より先行した研究に至っちゃう部署もあるんだ。土台があるとは言っても、なかなか出来ることじゃない。集合知って凄いね。
「酒井さん!」
「酒井殿!」
こんなことを考えながら、今日調べた内容を反芻してると、久しぶりに声を掛けられた。時空管理者さんと、里見義重さんだ。
時空管理者さんは、この時空を管理してる責任者だ。詳しくは分からないし、聞いても教えてくれないんだけど、突発的なバグを修正したり、魂を輪廻の輪に乗せたりする役目を担ってるらしい。幾つもの時空の担当を掛け持ちしてるみたいで、だいぶ忙しいみたい。会うのは半年ぶりぐらいかも。
義重さんは、酒井政明の先祖(?)に当たる人だ。最初は、俺に「余計な先入観を持ってほしくない」って、意図的に会うのを避けてたらしい。だけど、俺が織田家に出仕したぐらいからかな? どうやら吹っ切れたみたいで、時々顔を出すようになったんだ。最近は、週1ぐらいで一緒に剣の稽古をしてるぐらいだよ。
俺は義重さんの記憶+新當流の修行もしてたんで、最初は何と、義重さんを圧倒しちゃったの。義重さん、かなり悔しかったみたいで、この謎時空で修行に明け暮れてたみたい。今では10回やったら7回は負けるかな? なにせ、俺は色々仕事があって、修行の時間ってどうしても限られてくるからね。まあ、夢(?)の中でも修行が出来るんだ。ラッキーだよ。
おっと、あんまりボーッとしてたら失礼だ。俺は2人の方に向かった。
「時空管理者さん、義重さん、お2人が御一緒なんて珍しいですね」
「ええ、最近色々と忙しくて……。すっかり御無沙汰してしまいました」
「ワシらは、ちょくちょく会っておるのだが、閻魔が忙しいらしくての。なかなか機会が合わんのじゃ。今日はちょうど休憩に入ろうとしておるところを見つけたから、ちょっと捕まえてきた」
「義重さん? まさか、無理を言ったんじゃないでしょうね?」
「いやいや、私もそろそろ休憩しようと思っていたところですから、問題ありません。ところで、酒井さん、だいぶ順調なようですね」
「ええ、今のところは。予定通り一揆や反乱も起こってます。これで反対勢力を一掃できるはずですから、来年中には東北地方も完全に落ち着くでしょう。今、不安なのは、一揆・反乱よりも冬越しですね。今日もそれを調べてました」
「確かにのう、我ら房総の者にとっては常陸や下野の冬ですら辛いのに、遥かに北の出羽の冬だからのう」
「はい、万が一のことを考えて、羽根布団や外套は準備しておいたのですが、まさか7,000人もの人間が越冬することになるとは夢にも思わず……。こうなると分かっていたら、早めに羽毛の産業化を進めておくべきでした」
「暖房器具はどうなのですか?」
「そちらも、色々と調べたのですが、オンドルとかハイポコーストみたいな床暖房は今から作るのはとても無理そうです。ペチカみたいな物なら行けるかもしれませんので、試してみようかと思っています」
「ふむ、解決策が見つかったのなら何よりじゃ。……ところで酒井殿、閻魔もいることだし、久々に一杯引っかけていかぬか?」
「お! いいですね! 久しぶりに酔った感覚が味わえるなんて、最高じゃないですか!!」
「はて? お主は、しょっちゅう飲んでいるように見えたが?」
「確かに『里見信義』としてはしょっちゅう飲むんですけど、あの体、『毒物耐性チート』があるんで、全く酔わないんですよ。酔わない酒なんて水と一緒……。いや! 変な味が付いてる分だけ、水以下です。そんな不味い物を飲みながら、酔っ払いの相手をするとか苦痛でしかないですよ! ところで、義重さんが勝手に決めちゃいましたけど、時空管理者さんは、それで良いんですか?」
「私も骨休めしたいところではありましたし、酒井さんも毎日頑張っていらっしゃいますから、たまには良いでしょう」
「流石は閻魔じゃ! 早速やろうではないか!」
義重さんは、何処からか銚子と猪口を取り出すと、手際よく酒を注いでいく。
そして、酒が行き渡ると、各々右手を掲げた。
「「「乾杯!」」」
ぐっと一息で飲み干す。今まで飲んだことの無いような芳醇な味わいが喉を下っていく。久々の酒は違うね!!
俺が、「カーッ、旨い!」っと漏らしている脇で、いきなり、時空管理者さんが絶叫した。
「義重さん! このお酒は何処から持っててきたんですかッ!!」
「……閻魔、お主の部屋からだが?」
「神酒じゃないですか!? こんなもの飲んだら、不老不死になっちゃいますよ!」
「しかし、ここでは儂も酒井殿も魂みたいなもんじゃろう? 魂が飲んだ酒で肉体も不老不死になるのか?」
「考えてみればそうですね。じゃ、大丈夫か……。って、そうじゃない! 何で秘蔵の神酒を勝手に持ち出してるんですか!!」
「いや、せっかくみんなで飲むんだから、旨い方が良かろうと……」
「もう我慢が出来ません! 折檻です!!」
「うわ! 堪忍じゃ!」
時空管理者さんに追いかけられる義重さんを肴に、俺は秘蔵の神酒を楽しんだのだった。
「うーん、旨い!!」
「あ! 酒井さん勝手に飲んじゃダメ!!」
神酒の力で、主人公は高次元空間での権限が増しています(※本人は気付いていません)。また、里見義重さんは、さらに元気になってしまい「必ずや酒井殿の人生を最後まで見届けるのだ!」と息巻いて、閻魔大王さんの悩みを増やしている模様。