表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

131/297

第131話 土浦城での会合

 主人公の輩行名はいこうめいを『太郎次郎』にしました。意味合いとしては、『義弘の長男』だけど『義頼(※養子)がいるから次男』ということで。それに伴って、129話のルビを若干変更してあります。



天正10年(1582年) 1月 常陸国 新治にいはり郡 土浦城



 穏やかな新春の光に包まれながら、俺の頭に烏帽子が乗る。

 その瞬間、大広間に「「「「わっ!!」」」」と歓声が上がった。



 皆さんこんにちは、梅王丸改め 里見上総介信義こと酒井政明です。

 家臣や従属大名家の皆さんを前に、3度目の元服披露をしてるところだよ。


 烏帽子を被せてくれたのは、当初の予定どおり足利頼淳(小弓公方)さん。これで積もり積もった義理は、しっかり果たしたんじゃないかな?



 この後? 宴会だよ宴会!

 みんな、何かあったら飲まないとやってられない人たちなんだもん。


 いや~、こういう時だけは信長さんの有り難さが身に染みるよ。なにせ、飲まされずに済むからね(笑)


 酔えもしないのに酒を飲まなきゃいけないのはキツいけど、主賓が逃げるわけにもいかないから、頑張ってくるよ。



 え? 鶴姫さんの披露はどうした、って?


 え~と……。ちょっとおめでたでね(笑)

 どうやら、1回目で当たっちゃったらしいんだよ。



 なんでそんなことが分かるんだ、って?


 うん、初夜の後、「参考までに」って、月の物(生理)のサイクルを聞いてみたら、ちょうど『確率の高い日(危険日)』だったんだよ。とりあえず、「しばらくは無理をさせたくないから」って理由を付けて、『危ない日』をやりすごしてから2回目をしたんだ。


 ……もうお察しの通りだよ。鶴姫()さんに次の生理は来なかったってわけだ。

 それにしても、こんなに相性が良かった(?)とは、ね。


 まあ、できちゃったものは仕方ない。いろいろと調べて、しっかりと栄養を取ってもらって、体に良いことを実践してもらってるところなんだ。


 幸い悪阻つわりも軽く済んだし、このまま無事に出産を迎えてほしいもんだよ。





「ワハハハハ! 信義()様! 何をブツブツ呟いておられるのですかな? ぜひワシからも一献」


「おお、酒井忠次(左衛門尉)すまん。ちと考え事をしておってな」


「さては、奥方様のことでも考えていらしたのではありませぬか?」


「な!」


「図星ですか! いや~、お熱いですな!」




 がれた酒を一息に飲み干すと、杯の縁を懐紙でぬぐい、忠次に返す。




「返杯だ! さて、忠次(左衛門尉)


「はっ!」


「知らぬ土地で日々大変だと思うが、よろしく頼むぞ。なるべく早く帰してつかわすゆえ」


「いやいや、嬉しきお言葉かな! 若様の御配慮、常々『有り難きこと』と感謝いたしております。されど、我ら里見家こちらで骨をうずめるつもりで参りました。遠慮は無用にござる。ビシビシこき使うてくだされ」


「その方こそ嬉しいことを言ってくれるではないか! さ、さ、もう1杯!」


「おお、これは催促したようで!」




 忠次は、なみなみと注がれた杯を飲み干すと、やおら立ち上がり。皆に口上を述べ始めた。




「御参会の皆様。三州は井田郷の出、酒井左衛門尉にござる。新参者なれど若様から2度も杯を頂戴いたした。御礼として『えびすくい』を披露申し上げる。さあさあ手拍子をお願いいたしまする!」


「よ!」

「待ってました」




 もうみんな、かなりできあがってた(●●●●●●●)んで、大盛り上がりだった。


 それにしても、伝説の『えび掬い』を生で見られるとはね。後で絵に描いて残しとかなきゃ!




 そんなこんなで、この日は終わった。







 で、次の日。



 土浦城の大広間には、昨日の面々が全て集まってた。最後に小姓を引き連れた義頼(義父)さんが高座に座ると、会議が始まった。




「皆の衆。正月早々、我が義息信義(太郎次郎)の元服披露に集まってもらい感謝いたす。さて、今日は2つ伝えることがある。まず1つ目じゃ。政宗(藤次郎)殿、これへ」


「はっ!」




 俺の隣に座ってた政宗くんが、高座に上がる。




「既に見知っている者も多いかと思うが、こちらは伊達政宗(藤次郎)殿じゃ」


「伊達輝宗(左京大夫)が嫡男、政宗(藤次郎)と申します。皆様お見知りおきを」



「政宗殿は人質として伊達家より当家に遣わされておるが、実は、当主の輝宗殿からの御要望もあり、当家において初陣をなさることとあいなった。


 伊達家は何代にもわたって奥州探題を務められた名門じゃ。伊達殿の期待に応えるためには、我らも総力を挙げねばなるまい。よって、正月早々で申し訳ないが、皆にも出陣の支度を頼みたい。


 下総、常陸、下野の衆は2月1日までに、ここ土浦に参集せよ。


 上総、安房の衆は船を使う。上総湊城に同じく2月1日までに参集いたせ。


 陸奥の衆はまだ雪も残っておろうから、こちらの軍が陸奥に入ったときに合流してくれればよい」



「殿!」


真壁氏幹(安芸守)いかがした?」


「新年早々出陣とは腕が鳴りますな! して、どちらに出陣いたすので?」


「悪いが相手に準備の機会を与えるわけには参らぬゆえ、出陣先はまだ秘する。ただし、短くても凱旋まで2か月程度はかかるであろうから、しっかりと準備は整えるように」


「「「「「「はっ!」」」」」」」




「さて、2つ目じゃ。此度こたびは、このように陣触れを出したが、皆の衆は面倒には思わぬか?


 以前であれば、触れが出ても5日もすれば集まることができた。ところが今では、参集場所を分けても10日では集まることが難しくなっておる。


 そこでじゃ。ここ土浦に屋敷を与えるゆえ、家臣の半分程度を土浦に住まわせぬか? 


 確かに国元が手薄になる心配はあるが、現在、我らの分国のほとんどは、外敵と直接境を接しておらぬ。だから、多少手薄になっても大事はあるまい。


 ま、初めての試みゆえ、色々と考えることはあろう。質問があれば何なりと申せ」



「殿。よろしいでしょうか?」



「おお、小田氏治(讃岐守)。何じゃ?」


「我らの所領、小田郷は、ここ土浦の目と鼻の先にござる。そんな我らも土浦に住んだ方がよいのでしょうか?」



「うむ。この試みの目的は、いくさにおける兵の参集を早めるためじゃ。


 今でもすぐに参集できる小田氏治(讃岐守)大掾清幹(常陸大掾)まで、無理に土浦に住む必要は無いぞ。


 まあ、住まずとも屋敷は与えるし、住むのであれば、そちらの方が多少なりとも伝達が早まるゆえ、こちらとしてはありがたいことではあるがな」



「なるほど。わかり申した」



「ならば良し。ま、急な話ゆえ、こちらについては参集時に改めて意志を聞くことにする。皆の衆、それまでにしっかりと一族の考えをまとめておくように。解散!」


「「「「「「応!」」」」」」」




 こうして、諸将は自分の領地に戻っていった。



 さあ、次は政宗くんの初陣だよ! 親友(●●)として、俺がしっかり露払いをしてあげなきゃね!












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらは前作です。義重さんの奮闘をご覧になりたい方に↓ ※史実エンドなのでスカッとはしません。
ナンソウサトミハッケンデン
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます! そうか、伊達輝宗がこっちに来てるんですね さて初陣はどこだ? [一言] シーズンネタがwエビ掬いw 家康っち死んじゃいましたからねえ…三河家臣団もいつまで続くか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ