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第120話 熊野征伐の報告と…… ※地図あり

挿絵(By みてみん)

1580年末に平定した地域

天正9年(1581年)1月 近江国 蒲生郡 安土城



「熊野別当、堀内氏善(安房守)、那智大社社家、塩崎重盛(廊ノ坊)


「「はっ!」」


「永年に渡る不服従、誠に不届き千万。なれど、里見信義(上総介)が嘆願により、一命を救い、織田()家への臣従を認める」


「「有り難き幸せ!」」


堀内氏善(安房守)。熊野別当に推挙し、獅子巌以南、高野坂以北を安堵いたす」


「……有り難き幸せ」


塩崎重盛(廊ノ坊)。那智大社総代に任じ、高野坂以南、浦神以北の統括を命ず」


「はっ!」


「高河原貞盛(摂津守)。永年の忠勤、大儀である。よって、牟婁むろ郡の内、田原以南を加増いたす」


「有り難き幸せ!」


「里見信義(上総介)。昨年末以来の働き、見事である。よって、こたびの戦で切り取った、志摩国英虞(あご)郡の内、荷坂峠以南、紀伊国牟婁(むろ)郡の内、獅子巌以北の領有を認める。加えて、名馬20頭を与えるものとする」


「過分な褒賞なれど、ありがたく頂戴いたします」



「うむ! 更なる忠勤、期待しておるぞ!


 なお、信義(上総介)が当家に出仕の暁には、そこもとら熊野衆は、信義(上総介)が与力に付けるゆえ、存分に働きを示すべし」


「「「「はっ!」」」」




 皆さんこんにちは、梅王丸改め 里見上総介信義こと酒井政明です。先日13歳になりました。


 年末に突発的にすることになった熊野での戦いなんだけど、やっと決着が付いたよ。



 まあ、メインのいくさ自体は、2日で決着を付けたんだ。我ながら華麗な決着だったと思うよ。


 でも、完膚なきまでに叩き潰してやったこともあって、トップは服従したんだけど、如何せん戦国スタンダードだと、正しい情報がすぐには回らないんだよ。


 言われてみれば、「1日で熊野水軍が壊滅して、次の日には那智大社も新宮大社も征服されてました」とか言われても信じられないよね。


 うるさい連中を叩き潰して、「二度目はぇからな!」って捨て台詞を残して去る予定だったんだけど……。あんまり早い展開っていうのも、良いことばっかりじゃないんだって勉強になったよ。


 まあ、連中は遅かれ早かれヤるつもりだったんで、『早めにカタを付けた』って、前向きに考えることにしといた。



 ただ、そのままほっといたら、いつ関東に帰れるか分かんないからから、堀内氏善さんや塩崎重盛さんに、周辺の国人に向けて手紙を出してもらった。


『熊野は織田家の支配下に入った。熊野の太守となった里見信義(上総介)様へ挨拶に来ることで従属を認めるから、12月27日までに、本人、嫡子もしくは前当主等が、新宮に来るように』


ってね。



 で、抵抗せずにさっさと来た連中は「殊勝である」ってちょっとした褒美ぐらい持たせといた。様子見で名代を送ってきたところは、「織田家を疑うとは何事か!」って叱りつけたうえ、再度期限を区切って、当主もしくはそれに準ずる者を出頭させた。来なかったところ? もちろん焼き討ち(ヒャッハー!)しておいたよ。この辺の連中は大大名の恐ろしさを知らないから、最初にすり込んでやらないと、どっちにとっても不幸なことになっちゃうからね。



 それで、誉めるべきは誉め、叱るべきは叱り、焼き討ちすべきは『ヒャッハー!』して、ようやく落ち着いた。だから、主だった連中を引き連れて、信長さんに挨拶に来た。(←イマココ)ってなわけだ。




 そんなわけで、やっと肩の荷も下りたから、下がろうとしたら、呼び止められた。




里見信義(上総介)殿、上様がお呼びでございます」




 何か嫌な予感がする。って言うか、嫌な予感しかしないんですけど!


 でも、信長さんが「来い」って言うんだから断れるわけなんてない。仕方ないから行ってきたよ。そしたら……。




「梅! 来月陛下の御前で馬揃えをいたす。お主も参加せよ!」


「お声がけいただきありがとうございます。しかし、『馬揃え』と言うと馬が必要。私は船で上方かみがたに来ておりますので、馬は揃えるのが難しいかと…… あっ!」


「ふふふ、気付いたようじゃな」


「先ほどの『名馬20頭』このためでございますか!」


「20頭もあれば、面目は保てるであろう」




 信長さんは、「してやったり」って顔つきで、ニヤニヤしてる。


 うん、これ、断れない流れだわ。でも、こっちの都合も考えずに事を運ばれて、ちょっとシャクに障ったな。なんか仕掛けてやる。




「有り難き幸せ! せっかくの晴れの舞台ですから、今回傘下に収めた熊野衆も参加させてやりとうございます。よろしいでしょうか?」


「ふむ、陛下の御前にふさわしい馬と衣装が準備できるなら一向に構わぬ」


「見物人に何かを撒いたり、馬に車を曳かせたりするのは構いませぬか?」


「……何か考えておるな? 争乱を引き起こしたり、人に危害を加えるようなものでなければ何をしても構わぬ」


「それは真にございますか!」


「う、うむ!」


「では、みかどをあっと言わせるような仕掛けを考えませぬと! 失礼いたします!」


「……お、おおう」




 よし! 言質を取った。どうせ参加するしかないんだから、里見家うちのためになるように、動き回ってやるんだ。へへへ、信長さん、軽はずみに俺と約束したこと、後悔しても遅いんだからね!








信長:「何かとんでもない約束をしてしまった気がする」

蘭丸:「今から行って、止めて参りましょうか?」

信長:「いや! 梅が何をするのか見てみたい。好きなようにさせよ!」

蘭丸:「……はっ!(本当に良いのだろうか……)」

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こちらは前作です。義重さんの奮闘をご覧になりたい方に↓ ※史実エンドなのでスカッとはしません。
ナンソウサトミハッケンデン
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