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2話 首まで浸かってる?

第一章


第2話



 ズザザザァァアーー!!

 このマンションの玄関は、靴を脱いで上がった所はフローリングになっているので実際はこの効果音は適切では無い様な気がするのだが、オレはこんな感じの音を立てながらササキ宅に転がり込んだ。

 当のササキさんは?と言うと、オレを投げ込んだ直後に入り口のドアを閉め、更にご丁寧にチェーンまでかけている。

 そして、投げ込んだオレに近づくと、さっきまでの丁寧な対応の時とは別人?を思わせる言葉づかいで、オレに差し迫った。

「オイ!!マジで私のこの姿がエルフに見えるのか?あぁ?マジでか?目ん玉裏返ってんじゃねーのか?!」

 どこかの三流ヤクザ映画に出てくる三下の手下の様な口調で迫って来るのだが、どーにも迫力に欠けると言うか、身長が150cm台だとこう鬼気迫る心境で言葉をぶつけてきているのだとしても、オレには小学生がイキがっている様にしか見えなかったりしていて。

「え、ええもうそれはそれはそこらのファンタジーアニメや漫画に出てくるような風貌をしていたので、ついうっかり二度見三度見してしまったりしましたけどね。何かそれが問題でもあるんでしょうかね?オレには、何が何だかサッパリっすよ?」

 と、オレはありのままのオレの心理状態を伝えたけど、どうにもこの「ファンタジー漫画に出てくるような風貌」と言う部分が腑に落ちない様で、何度も何度も「本当か!」と「参ったな・・・」を繰り返して言った。

 で、何度か同じ様なやり取りをした後、ようやくオレがササキさんの風貌がエルフのような姿に見える事を諦めた様子で、うなだれながら居間の方に向かっていった。そして、

「ちょっと確かめたい事がある、来てくれ。」

と言って、手招きをした。

 オレは招かれるままに居間に向かうと、そこにはオレの身長172cm程度の大きさの姿見の前に立たされた。

 その横にササキさんが立つのだが、姿見に映されたササキさんの姿を見てオレは、腰を抜かしそうになる位にビックリ!したんだが。

「え?ええっ?ナニソレ?どーなってんですか?鏡に映ってるの別人じゃないですか??」

 オレの横でチンマリ立っている青髪のエルフとは全く別人が、鏡の中には映し出されていた。

 オレの目が確かならば、鏡の中のササキさんは黒髪がロングのお姉さんで、身長も165cm程度はゆうに超えていそうな感じで眼鏡をかけていて耳も普通に人間だったし、目の色も普通に黒っぽい。青髪エルフのササキさんは目の色もちょっとファンタジー?み溢れる紫色をしていたので、かなりのギャップを感じずにはいられなかった。

「これが!本来地球の人に見える私の姿なんだよね?でも遊馬君には素の私が見える。何故だ?!」

 姿見に映る自分の姿を指さしながらササキさんは、オレに詰め寄った。

「いや~~。何ででしょうね?オレも知りたいです。って言うか、この鏡に映った姿で普段生活してたんですね~全然気付かなかった。」

 本当、全く気付かなかった十数年だった訳だ。実際問題、どこからどう見てもフツーの人だし、何より存在感が圧倒的に薄そうに見えた。

 っとあと、今気付いたんだけど、ササキさん今「地球の人に見える」って言わなかったか?聞き間違いか?

「所でササキさん、今地球の人に見えるって言ってたけど、それってササキさん達は宇宙人って認識で良いのかな?」

 本当にオレは空気が全く読めない様で、ただでさえ自分の風貌が見破られてショック状態のササキさんに、畳みかける様に更なる疑問をぶつけてしまっていた。

 でも気になるじゃん?夜中にふと目が覚めて、悶々と考えまくりそうだよオレは。

「そ、そうだよ。私は宇宙人、合ってる合ってる。遊馬君は勘が鋭いね・・・。」

 ほとんど放心状態みたいな状態で、ササキさんはオレの質問に返答した。

 何か、オレ悪い事しちゃったかな~。見た目の事も、何となく変かな?位の気でいれば良かったのかも知れないけど、オレのこの、疑問をそのままにしておけない体質がそれを許さなかった。

って、体質なのか?これは。

「じゃあ、色々と疑問も晴れたようだし、オレはこれで~隣の家に帰りますっ!」

 と言いながらオレは、そそくさと玄関で靴を履く。

 チェーンを外してドアを開けようとすると、何故かチェーンが全然上がらなかった。

「アレ?おっかしいな~。チェーンってこんなにハズしにくかったっけ?」

 ぶつくさと文句を言いながらチェーン外しを焦っていると、背後からササキさんともう一人、別の人物の声が聞こえた。

「その扉は今、時間固定しているから簡単には開けられないのだ、特に地球人になんて絶対に開けられないのだ。」

「と言う事なんでね、ちょっと私らの話を聞いてってくれないかな?遊馬君。」

 何だか、普通に生活していたら絶対聞かないような言葉が背後から投げつけられたオレは、ゆっくりと後ろを振り返った。

 そこには、青髪エルフのササキさんと、その隣に赤く長い髪のエルフが立っていた。

「ハハ、はははオレ、何かヤバイ事に足突っ込んじゃってる?」

 引きつり気味に笑って見せると、赤髪のエルフがこう言った。

「多分もう、首まで浸かっていると思うから観念した方が良いのだ!」

 その言葉で、オレは何もかにも観念する事にした。





 赤髪のエルフの方は、アルファナ・ササキと言うそうだ。先ほどまでオレと対峙?していたササキさんとは血縁~では無いにしろ、家族の様な関係だと言っていた。

ので、以後オレはペネロペさんとアルファナさんと言う感じで、2人のササキさんを名前呼びする事になった。

「どっちもササキさんじゃ~混乱するのだ~ウチらも。」

 アルファナさんはペネロペさんとは違って、割と大らかな人の様に見えた。因みに姿見の中のアルファナさんはと言うと、茶髪のショートヘアに黒のスーツ姿のキャリアウーマンと言った風貌になっていたが、オレの見た目のアルファナさんは、Tシャツ短パンで闊歩する引きこもりニートかな?みたいな感じにしか見えない。

 かのペネロペさんの方はと言うと、どうもこのササキ宅での稼ぎ頭はペネロペさんの様で、アルファナさんとは違って普通に働きに行っている様なスーツ姿であった。

「私はアルファナとは違って、ちゃんと地球の調査と仕事も行っているし何より、地域貢献もしているぞ!マンションの地域会合にも出ているぞ!まだ学生の遊馬君には分からなそうなこともやっているんだ!偉いだろ!」

 フフン!とちょっと偉そうにペネロペさんはオレに主張したが、その勢いはすぐに折れ、

「スミマセン!!ちょっと地球人の前で偉そうにしてみたかっただけなんです!!許してください!統括長!!」

と言って、アルファナさんの前で膝をついて頭を下げた。

 オレの目の前で今、宇宙の企業の上下関係のリアルな状況が繰り広げられた様だったが、実際問題目の前では何かのパロディコントが展開されたようにしか見えなかった訳だが。

 ポカンと口を開いて今の状況を見ていると、アルファナさんがオレに声をかけた。

「何かみっともない所を見せてしまったのだ~、こう見えてウチ、地球侵略の統括長をやっていたりするのだ。」

 頭をかきながら、にこやかに話しかけてくる赤髪エルフの言葉に、オレは何度目かのビックリをした。



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