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ふにゃぁぁぁあああ!!!


「あらあら、お嬢様。お目覚めですか?」


うっグスッ・・・・・・。なにこれ、ここどこ?


・・・・・・・・・あぁっ!そうだった。私、転生したんだった!


華やかなお部屋。明らかに日本ではないとすぐにわかる。


今、私をあやしてくれているのは乳母かしら?生まれて何日経ったかわからないけど、赤ちゃんだったからか今までの記憶が全くない。まぁ、赤ちゃんだからこそ記憶がないなんてバレることもないだろう。


「今日はすぐに泣き止んだわね。私の顔、覚えてくださったのかしら?」


・・・・・・ごめんなさい。初対面の気持ちです、なんて言葉をまだ話せないから言えないけど。前世の記憶が蘇りました。なんて、もっと言えない。


何か話そうとしても「あぅあぅ」としか言えないので、乳母は自分の好きに解釈した。でも、お腹が空いたとかはなぜかわかってくれるから、乳母ってすごい。朝でも夜でも駆けつけてくれるから、申し訳なくなっちゃう。ウル◯ラマンなのかしら?それともスー◯ーサ◯ヤ人?


記憶を取り戻して数日。わかったのは、ここには乳母しかやってこないってこと。兄弟姉妹がいるのかわからず、両親がどんな人かどころか、自分がどんな容姿をしてるかもわからなかった。この世界には鏡ってものがないのかしら?


今の私は木製のベビーベッドが世界の全てだ。ハイハイができないから動き回れない。こんな狭い世界で知れることなんて、ほんのわずかだ。


あー、暇。乳母が来たらおもちゃで遊んだらするフリをするけど、記憶を取り戻した今、全然面白くない。生まれ変わったからといって、精神年齢も低くなるわけじゃないのね。


手をグッと握って、パッと開く。

体を仰向けから横向きになるように踏ん張る(今はまだ首しか動いてなかったりする)。

乳母がいない間は、どうにかまずは寝返りを打てないか、あわよくばハイハイができないかとトレーニングに勤しんでいる。


「うあぅあ〜(無理か〜)。」


前世で生きていた頃に読んでいた転生ものは、5歳とかある程度大きくなってから記憶が蘇るってものが多かったけど、そんなことないのかな?私の好みが偏っていただけ?まぁでも、赤ちゃんを体験することってあんまりないだろうから、貴重な体験といえばそうなんだけど。だけども暇すぎるわ。


バタバタバタッ!!


「坊っちゃま!そんな格好ではダメですよ!せめてお着替えになって下さい!」


ん〜?なんか外が騒がしいね。誰か帰ってきたのかな?坊っちゃまって言ってたし、私のお兄ちゃんとか?いたんだ、お兄ちゃん。まぁ、今まで会いに来なかった時点で愛されてないのはわかってる。


扉の前がガヤガヤと騒がしく、誰か入ってくるのかな~なんて思ってたのに1時間経っても誰も入ってこなかった。


な〜んだ。つまんないの。


夜ご飯を運んできた乳母はいつもと同じ様子で、きっとガヤガヤしていた時に寝ていたら何も知らずにいただろう。今までもそんなことがあったのかもしれない。



私が異変に気づいたのは、少しの物音でも気になるような夜中だった。


コトッ・・・


うーん、むにゃむにゃ・・・。


うーん、だぁれ?ツンツンしないでよ。


・・・・・・もうっ!辞めてってば!


カプッ。


「わぁっ!・・・あ、」


目を開けると、男の子がベッドのそばに立っていた。


「・・・・・・指、離せ。」


んん?指?


・・・・・・あぁっ!ごめんなさい、噛んじゃってた・・・。


汗がダラダラと流れる。

嫌われてるかもしれない人の指、噛んじゃったよ。子どもとはいえ、力は私よりあるんだから。私、逃げる手段ないし。


「うわぁ、ベトベトになった。」


すいませんすいませんすいません。わざとじゃないんですよ。寝てる時にツンツンされたから、つい。


「ミュー。俺を噛むとはいい度胸だな?」


みゅー?とは、私の名前でしょうか?だとしたら、やっぱりご立腹ですか?うわぁ、やらかした!


カプッ。


男の子、おそらく兄は私のほっぺにかぶりついた。


えっ・・・へ??


「先に噛みついたのはミューだからな!」


えぇぇぇ、なにそれ。やり返しがちょっと可愛い。暗闇でちゃんとお顔が見えないのが残念になってくる。


あ、しかもちゃんとほっぺ拭いてくれるんだ。唾液ついたもんね。袖だけど、許してあげる。


「ミュー、俺が来たのは内緒だからな。明日会っても、知らないフリをするんだぞ?わかったな?」


いや、そんなこと言われなくても話せないのに知ってるフリもできないわよ。私のお兄ちゃん、ちょっとお馬鹿なのかしら?それともこのくらいの年齢の子って、みんなこんな感じ?


「そろそろ戻らないと、部屋を抜け出したことがバレちゃうな。じゃ、ミュー。また明日な。」


お兄ちゃんはそう言うと、窓から飛び降りてしまった。


えぇぇぇ。ここ何階か知らないけど、さすがに一階ではなさそうだし大丈夫なの?お兄ちゃん、結構ヤンチャね・・・。


さて、お兄ちゃん帰っちゃったしどうしようかな?


目が覚めてしまい、すぐには眠れなさそうだった。トレーニングをしておこうかな。疲れて眠れるかもしれないし。赤ん坊が早くに起きて、損することはあっても得することはきっとない。うん、そうしよう。


ふんっ、ふんっ。


乳母に起きたことを悟られないよう慎重に、静かにトレーニングをする。


案の定、ぐっすりと眠れた。

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