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第九話


 

 それからというもの有馬と諒はメールのやり取りをするような仲になった。しかも食事のお誘い付きである。

 本来ならはっきり断る諒だが、有馬の口のうまさに丸め込まれ、気づけば二人は一週間に一回は食事を共にしている。諒の流されやすい性格をうまく利用した犯行と言えた。

 しかも食事抜きにしても有馬と諒はほぼ毎日顔を合わせていた。社長である有馬が自ら諒の会社へ来てコラボ関連の指揮をしているのだ。

「先輩、先輩! あのイケメン社長がまた来てますよ」

「コラ、鈴木ちゃん。イケメン社長だなんて言わないの」

「だって事実じゃないですか〜」

 昼休みが終わり、課へ戻ってくると途中で鉢合わせした鈴木が笑顔で話しかけてきた。

 入社一年目の鈴木は可愛らしい瞳をキラキラさせて諒を見た。そして少しだけ声を小さくさせる。

「今日もご飯一緒に行くんですか?」

「……い、行かないよ」

「やだー! 先輩頬が真っ赤ですよ、かわいい!」

「ちょっ、もう、からかわないで!」

 鈴木は頬を染めてまごつく諒を見て頬を緩めた。いつもしっかり仕事をこなす諒に鈴木は入社からずっと憧れを持っていた。

 そんな諒が男の事で頬を染めるなんて、と鈴木は嬉しくて突っ込まずにはいられなかったのだ。

「今度私とも飲みに行きません? 先輩と恋話したいなぁ〜」

「飲みには行くけど恋話はしません!」

「ええ〜……」

 縋り付く鈴木を追い払うように席に座ると、目の前のパソコン越しに石川と目があった。

「……なによ」

 じっとこちらを見つめてくる石川の様子に、早く仕事をしろと言われるだろうかと諒は少しだけ不安になる。

「あの社長と飯行ってんの」

「うん。なぜだか私にも分かんないんだけどね……」

「流されやすいもんなぁ、お前」

「……それは言わない約束ですよ石川さん」

 気にしている所を言い当てられてムッとすると石川は口角を上げた。

「まあ何か不安な事があれば相談に乗るから。気を付けろよ。ああいうやり手は気をつけないと初心者のお前なんかすぐにペロリだぞ」

「そうですよぉ。先輩その気がないなら気をつけないと!」

 石川と鈴木に力一杯念押しされて諒は困惑しながら仕事に戻った。

 二人の言う通り、有馬との食事会はいつも気を張りながら出かけているつもりだった。だからそんなに周囲から心配される事もないと思っていたが、もう少し気をつけたほうが良いのだろうか。




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