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第七話

 

 

「それに職場環境もとてもいいみたいですね。やりたいと思っていてもやらせてもらえない会社も多い。一緒に仕事ができるのが楽しみです」

 今回のコラボについて考えているのか有馬は会社で見たキリッとした表情になった。

(そういえば石川が冷徹社長とか言ってたような……)

「そう言ってもらえると光栄です」

 あまり関わっていない案件ではあるので諒は当たり障りなく言う。噂されている冷徹社長も感情に流されず正確な決断ができる敏腕社長を妬んだ言い方なのだろう。

(だって柔和な感じだもん)

 今だって仕事の話は冒頭だけで今は世間話、きっとプライベートに仕事を持ち込まないオンオフはっきりした人なのだと諒は思った。

「そういえば諒さんはなんでナスが好きなんですか?」

「え」

「……あ」

 突然の名前呼びに固まると有馬は失敗したといった表情で口を押さえた。少しだけ頬が赤い。

「すみません。素敵なお名前だったから、つい……」

「い、いえ。少し驚いただけですから」

 釣られて諒も頬が熱くなるのを感じた。

「この際だから言いますけど……、迷惑じゃなければお名前で呼んでも良いですか?」

 突然の有馬の提案に諒は先ほどの比じゃないほど動揺した。

(名前呼びって普通なの? でも会社の人も言うし……。コレぐらいで狼狽える方がおかしいのかも)

 男女の色恋に鈍感、否、経験のない諒には判断がつかなかったが特に呼ばれて不快ではないので了承することにした。

 有馬は嬉しそうに微笑んだ後、少しだけ意地悪そうな表情で小首を傾げた。

「僕のことも自由に呼んでほしい。出来れば名前で呼んでほしいけれど、覚えてますか?」

「もちろん覚えてますよ。志乃さんでしょう? 総務部を舐めないでください」

「さすがです」

 思わずムッとした声色で言うが、気にした様子もなく笑っていた。笑いながら「じゃあそう呼んでくださいね」と言われ、諒は雰囲気に流されるまま頷き、ハッとした。

(ああ〜またやってしまった!)

 昔から流されやすい性格で、なるべく注意していたのに諒はまたうっかり流されてしまった。

 これから仕事をする会社の社長を名前呼びする約束をするなんてどうかしてる。うっかり頭を抱えそうになり諒は既の所で思い止まる。

(まあでも今日の食事だって気紛れだろうし、名前なんてそう呼ぶ機会なんてないだろうからまあ良いか。どうせ今日限りでしょ)

「お待たせしました。前菜からどうぞ」

 そうこうしていると勉が料理を持って来た。

 ほぼナスを使用した素晴らしい料理を前に諒の目は輝かんばかりに期待に満ち溢れていた。

 それを有馬は微笑ましい表情で眺めていると勉が「これおまけですから」とビニール袋に入ったナスを渡した。そして諒に聞こえないようにこっそり言う。

「もしかしてロックオン?」

 それに対し有馬はニッコリ笑って人差し指を口に押し当てた。つまり黙ってろと言うことらしい。

 勉は少し感動すると頭を下げて裏へと下がって行った。諒はナスに夢中で一連の出来事には気付いておらず、有馬が食べようかと促すとニコニコ笑って食べ始めた。

「――このナスとろとろで美味しい〜! あ、こっちのナスは白いですよ。なんだろうコレ。でもナスだ」

「コレはホワイトベルっていう品種絵ですよ」

「――うわぁ、このナスの食べ比べ最高ですよ!」

「諒さんの気に入ったものはありましたか?」

 次々と料理の感想を饒舌に語る諒を有馬は微笑ましく見ていた。ナスが絡むと少し幼い印象になるのだろうか、などと有馬が思っていると諒はあっという間にペロリと料理を食べ終えた。


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