3.ゴブリン討伐
投稿するの忘れてましたw
こんな時間になってしまった……
「──て言う事なの」
「成る程……」
ハッピーから聞いた話によると、この世界での通貨は"コン"と言う名称で、一コンを日本円で例えると一円だそうだ。
それから、この世界では俺達の様な特殊な力を持ち、旅をする者達を冒険者と呼ぶらしく、そうで無い人との違いは見た目では分からないらしい。
よって、冒険者と周りから認知されるには、冒険者デバイスなる物が必要との事。
要するに、冒険者登録をしろって事だ。
冒険者とはこの世界にある職業の一つで、冒険者になるとクエストが酒場と併設されたギルドなる場所で、受けられ。
それを生業として、報酬金で生活している。
何より一番の驚きは、この世界に居る人々が自分の意思で行動し、飲食などもしていると言う事。
どうやら、此処に来た俺達以外の存在はNPCなどではなく、生きた人間だと考えを改めた方が良いだろう。
中にはジャンルを持った人だって居るとか、居ないとか。
「そろそろ目的地の森よ。──これ、お裾分け」
バッグから取り出した物を、護とハナビに渡し。
「何この飴玉みたいな石ころ」
「俺に聞かれても、分からん……」
掌に置かれた二つの緑色の丸い石と一つの青色の丸い石を目にし、護達は訝しげにしていた。
「それはこの世界のアイテムで、緑が傷なんかを癒してくれて、青が魔力を回復してくれるみたいよ。私も使った事無いからよく分からないけど」
「え? 分からないの」
「何でそんな物を」
「アイテムショップの店員さんが説明してくれたの。それじゃ、早速ゴブリン退治よ! 村の為にも」
「俺達はどうするんだ? 下手したらゴブリンにすら、殺されかねないぞ?」
「そうだ、そうだ!」
「良いから戦いなさい! 援護はするから。回復石も渡したでしょ」
最近頻繁にゴブリン達がコルット村を荒らし、どうにかしてほしいとのクエスト内容で。
辿り着いたコルット村近くのこの森に、ゴブリン達が住み着いてるとか。
ゴブリンの数は未数で、武装してるゴブリンが確認されている。
森に一歩踏み込むと、森全体が騒めきだし、何処からか無数の視線を感じた。
「死にたくなきゃ、今此処で限界を超えなさい!?」
「マジでやるのね……」
「無茶言いやがって。能力を使えないだけでなく、何も装備してないんだぞ?」
「つべこべ言わずにやるわよっ!」
ハッピーは二丁の銃を抜き取り、護とハナビは身構えた。
草むらや木に隠れていた緑色の肌に、尖った耳と鼻。
子供と変わらぬ背丈に、ボロい鍋やフライパンを防具とし、手には各々のが違う武器を持って、護達に襲い掛かった。
「ほら、敵さんが来たわよ!」
次々にゴブリン達を撃ち抜いていく中、殴り飛ばすハナビと同じく、護は襲って来たゴブリンの頬を殴りつけ。
「──ギィ? ギャァァ!!」
余りの力の無さにペチと、情けない音を立て、ゴブリンを怒らせただけだった。
「ちょ、助けてくれぇぇぇ!」
ゴブリンに追われ、情けなく逃げる護に向かって、
「何してんの!? しっかり戦いなさいよ! ったく、思ったより数が多いわね」
「痛てぇー。そろそろ拳が限界だよ。初めて生き物を殴った……何か罪悪感が……」
「殺らなきゃ、殺られるわよ。しっかりトドメを刺しなさい。力は弱いけど、コイツらは狡猾よ」
そんな奴等より力の弱い俺って、どうなんだろ……。
この世界で生き残る為に、少しは頑張らなきゃな。
じゃないと、RPGなんかで見る雑魚モンスターに殺されるって最後とか、情けなくて最悪だ。
今まさにって感じだけど……。
「──ギィゥ」
走り回り逃げていると、護を追っていたゴブリンが銃声と共に地に倒れ。
「はぁ、はぁ……お、せぇーよ。倒すの──マジで疲れた」
「全く、情けないわね」
「いやー、いい運動になったよ。ちょっとまだ手が痛いけど」
「これだけ倒せれば、コモンの装備なら一式揃えられるでしょ。それと、冒険者登録も」
「コモン、てなんだ? もしかして」
「多分クロが今思い付いた事と一緒だと思う。装備やアイテムにはレア度が存在するの。コモン、アンコモン、レア、エピック、レジェンド。この五つがレア度で、レジェンド装備はこの世に四八あるらしいのよ」
「へぇー。にしても、詳しいな」
「まぁね。この世界に来てから色々と話を耳にしたから」
「レジェンド装備かぁ。何か凄そうだね! 俺っちもカッコイイ装備で揃えたいなぁ」
「凄いってものじゃないみたいよ。なんてったって、レジェンド装備持ちに勝つにはそれと同等のレア度の武器を手にするか、その下位のレア度であるエピック装備を揃えた手練れ数十人から数百人でやっと勝てるとか。まぁ、噂話程度なんだけど」
そんなスゲェ装備が、この世界に眠ってるのか……。
少しだけど、何だかわくわくしてきたぞ。
当面の目標は、レジェンド装備を手に入れる事だな。
ゴブリンがロストした事で出現した、コンや素材をハッピーのバッグに詰め。
コルット村に戻った護達はクエスト報酬の二千コンを手に、オープナーにある武具屋に来ていた。
「コモンの装備なら好きな物を選びなさい。足らない分は私が冒険者になる記念として、出してあげる」
「本当!?」
「太っ腹だな。コモンだけど」
「そこ、文句言わない! 他のが欲しければ、自分で稼いだり素材集めたりして、作ってもらったり買いなさいな。──あっ! 因みに、武器は自分のジャンルに合ったものを選ぶと良いわよ」
「それでハッピーは銃にしたんか?」
「そうよ。私が開花した能力が『銃弾の送り手』だった為に、その使用上、銃がベストだったの」
「何それ? 変わった名前の能力だね」
「そのままの意味よ。自分の思い描いた銃弾を生み出す能力ってこと」
「はぁ!? それ意外に強くね?」
「そうかしら? 弾を作るにしても、素材や分量、構造事細かく知らなきゃ作れないし、作れたとしても、銃の扱いが下手なら意味ないもの。まぁ、私だから使いこなせているだけよ」
「スゲェー、自信過剰だな。てか、どうやって能力手に入れたんだよ」
「さぁね。いつのまにか使えたわ」
ちっ! ただの天才肌かよ。
「俺っちコレにきーめた」
「取り敢えず、俺はコレにしとくかな」
一頻り店内にある品を見定め、護とハナビ各々が決めた武具をカウンタに置き──購入した防具を身に着け、武器を携え、装着して外に出た。
「ハナビは何て言うか、見た目重視って感じね。──で、問題はクロ。貴方それで良かったの? RPG始めたてって見た目だけど……」
「問題ない。この方が動きやすいからな」
ドレッドヘアを後ろで束ね、重厚感ある鎧でありながら、動きやすさが追求された鎧。
背には背丈よりほんの僅か長い、ハンマーを携えたハナビ。
そんなハナビとは裏腹に、"人生適当"と書かれたシャツの上からレザー製の胸当を付け。
レアの真っ黒なコートを羽織り、手にはガントレットを装着した護。
「どうにか、金額を抑えられた。お陰でこのコートが手に入ったし」
「全く、どうして男の子は黒いコートとか欲しがるのかしら。私が出したお金はコモン程度と同じだから別に構わなかったけど。もしかして、クロって厨二病だったりする?」
「うんなわけないだろ! 中々面白い効果が付いてたからコレにしたんだ! ったく、人を厨二病扱いするとわ……」
まぁ、ちょっとカッコイイなとは思ったけど。
「さぁ、次は冒険者登録しに行くわよ!」
白を基調とした大きな城を思わせる、町一番の大きく目立つ建物『ギルド会館』。
オープナーの様なそこそこ大きい町には何処にでもあるらしく、主に冒険者登録や、冒険者の所持金、所持アイテムを預けて置ける場所となっている。
「──でっけぇ! 無駄に」
遂に、俺も冒険者になるのか……何か自分でゲーマーって思うのも変な気分だな。
意味合いが違うとは言え、元の世界では側から見れば、俺はゲーマーだったわけだし。
余りの建物の大きさと、これから冒険者になれる事に、胸躍らせギルド会館に見入っているハナビと護。
「さっさと受付済ませるわよ、二人とも」
中に入ると床には赤いカーペットで道が出来、煌びやかな装飾が施され、大勢の人々が出入りしていた。
受付の列に並び──自分の番になると爽やかなお兄さんが対応してくれ。
冒険者登録の費用、百コンを渡し、スマートフォンの様な四角い板の形をした、冒険者デバイスを受け取る。
冒険者デバイスの画面を自身の顔に向けると読み込みが始まり、"登録完了"の文字が画面に現れた。
晴れて冒険者の証拠とも言える物を手にし、護達はギルド会館を後にした。
冒険者になれたのは良いものの、レジェンド装備を探す事を前提として、何をしたら良いのかと考えている中。
「ちょっと気になった事があるから、私達はここで分かれましょ」
「突然だな。まぁ、無理に引き止める訳にもいかないし、ハッピーがそうしたいなら」
「じゃ、またいずれ会う事があったら」
踵を返し、去ろうとするハッピーの背を見て、
「──あっ! ちょっと待ってくれ。これについて聞いてなかった」
「え? 何かしら」
護は先程手に入れた冒険者デバイスを取り出し、ハッピーに見せた。
「このデバイスって何に使うんだ?」
「あぁ。それは私達が見てるメニュー画面あるでしょ? それが見れるの。どうやら私達がやってるタップしてメニュー画面出したりしてるのはこの世界の人に見えないらしく、代わりにこのデバイスで全て行ってるみたいなのよ。変な人扱いされたくなければ、これからはそのデバイスでやる事ね。それじゃ!」
去っていくハッピーを見送り、隣からトントンと、突かれ振り向く護。
「なぁ、クロ。腹減った──飯食べようよ」
「確かにそうだな……。此処に来てから何も食べてないし、飲んでなかったな。あっ! せっかく冒険者になれたんだ。ぱーっと今夜はいこうぜ!」
「おっ! 良いね。じゃ、早速腹ごしらえに行こう!!」
オープナーの酒場に行くと、テーブル席に座り──色々な食事でテーブルを飾り付けていき。
護とハナビはジョッキを片手に持ち、
「「かんぱーい!」」
「くぅ〜。このシュワシュワと喉越し、最高だぜぇ」
「本当だね! でも、お酒何て呑んで良いのかな?」
「店員さんも言ってたろ? 自己責任だって。禁酒法がガバガバなんだから、呑める時に呑んどこうぜ!? 何事も経験ってやつだ」
「そうだね……そうだよね! 元居た世界じゃこんな事出来ないし、今出来る経験をしとこう」
自分自身に言い聞かせる様に喋りゴクゴクと、酒を呑んでは食事に手を伸ばし──護達は食事を平らげ、何杯もの酒を呑み干した。
──のは良いものの。
「──か、金がない。ゴブリン討伐の報酬金全部装備に使っちまったんだった……」
「そうだよぉ〜。レアなコート何か買うからだよ。俺っちの報酬金だけじゃ足らないし、どうすんの?」
「どうすんのって──どうするか」
「お困りかにゃ? お二人さん」
突然背後から話し掛けられ振り向くと、そこには猫耳と一本の尾を生やした可愛らしい人間とは異なる種族と思われる、ちんまりとした少女が立って居た。
「いや、まぁ、お金が無くて……」
「それならウチが貸そうかにゃ?」
「それはいいよ! こんな小さい子供にお金を借りる訳には」
「だ誰が子供にゃ!! こう見えてもお姉さんにゃ!」
頬を膨らませ、怒った少女は踵を返して何処かへと行ってしまった。
「──行っちゃった。クロが怒らせるから」
「ご、ごめん。子供だと思ったから……」
少女は戻ってくると、
「お金全部払っといたにゃ!」
「えっ!? マジか! 助かったよ」
「あのぉ〜、お金は」
「あぁ、気にしなくていいにゃ。その代わりにゃんだけどー」
口籠る少女を前に訝しげにしてる護達。
「ここに居るって事は、君達も冒険者で良いのかにゃ?」
「そうだけど?」
「二人に人探しを依頼したいのにゃ!」
ご愛読ありがとうございます。
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