2.始まりの街『オープナー』
この作品の事は、忘れてませんよ?w
「一体此処は何処なんだあぁぁぁ!!」
中央に噴水のある広場、周りには様々な建物、活気に溢れた住民。
見るからに自分の居た世界、日本とは明らかに違っていた。
まるでアニメや漫画などで見る、ファンタジー世界の様な。
──んで、こいつらも?
護の周りにはあたふたとした人々が、何人も居た。
所々、一度は目にした事のある人なんかも。
「なぁなぁ、あんた」
「──ん? 俺か?」
ドレッドヘアーに褐色肌をした見るからに、ストリート系の男性が話し掛けてきた。
「そうそう! あんた。──おっと、名乗るのが遅れたけど『ハナビ』ってんだ。よろしく! えっと、あんたの名前は『クロネコ』ってのか。可愛い名前してんな」
「お、おう──よろしく。てか、何でその名を?」
「何でって、書いてあるだろ? よく見てみろよ。左上の三本のバーがある上にネームがあるから」
「本当だ……」
眼前左上には緑、黄、青と連なるバーの上に書かれた、その人物を表すゲーム内の名前、プレイヤーネームが表記されていた。
何だよコレ……。まるでゲーム画面の様だぞ?
「あんたの事何て呼べば良いんだ?」
「──え? 呼び方? そんなのは変なものでなければ、好きな呼び名で構わないよ。そんな事より、此処何処だ……?」
「さぁー、俺っちにも分からん」
「はぁ〜……。で、ハナビだっけ? 何の用?」
「あ、いや。困惑してる奴等が多い中、割と普通にしてたからさ」
「俺だって、困惑中だわ! ゲームを起動したら」
「え! クロもそうなんか? 俺っちもゲーム起動して、気が付いたら此処ってわけよ」
「もしかして『ジャンル・オブ・ウォー』ってゲームか?」
「それ! まさか同じゲームだとは」
てことは、やっぱり周りにいるこいつらも俺達みたいに、ゲームに起動した奴等って事になるのか?
「グッモーニーグ! やあやあやあ、ゲームを愛する諸君──」
何だ、この声は……。
突如聞こえた中性的な声色。
噴水の水が重力を無視して空へと浮き上がり、一人の人物を作り出す。
噴水の水から出来たのは、ツーフェイスの仮面を被り、縦で柄の違がうスーツを身に纏った男の道化師らしき者。
「初めまして。僕は君達をこの世界へと招き入れたゲームマスターが一人、『サルバトーレ』っていう者だよ。早速だけど、此処のルールとでも言うのかな? そんなものを説明したいと思いまーす」
「ちょっと待てよあんた! 俺様達をさっさと元の場所に返せ!!」
この世界に迷い込んだ内の一人の男性が前に出ると、サルバトーレに野次を飛ばした。
「もぉー、僕の邪魔しないでよ……。そうだ! 良い事思いついた」
サルバトーレはぽん、と自身の掌を叩き。
「せっかくだから、君にはデモンストレーションを手伝ってもらおうかな」
「はぁ!? 何で俺様がそんな事を! いいからさっさと帰らせろ!!」
「本当煩いな、君は。そんな君にはお仕置きだ!」
虚空から出現した一本の万年筆を手にし、ペン先から湧き出るインクで、"爆"という一文字を虚空に書き出した。
──すると、先程までサルバトーレに向かって野次を飛ばしていた男性の身体が沸々と、沸騰したかの様に気泡が──男性は爆散してしまう。
「「きゃあぁぁあぁあ!!」」
「「うわぁあぁぁああ!!」」
男女共に殆どの者が叫ぶ中。
俺は余りの事に言葉を失い、一筋の冷や汗が頬を流れ生唾をゴクリと、飲み込みと同時に目を疑った。
ど、どういう事だよ……。
男の身体が勝手に爆発したぞ?
「クロ──どういう事だよこれ……。俺っちはヤバイ夢でも見てんのか?」
「わ、分からない……。一つだけ言えるのは、何か異常な場所に俺達は連れてこられちまったという事だけだ」
「はーい、静かにしてくださぁーい。さもないと君達も殺っちゃうぞ? ──て、嘘嘘。プレイヤーが減ったらつまらないもんね。で、ルール説明に戻るんだけど、今さっき見せた様に、僕の様な異能や能力とでも言えば分かりやすいかな? 特別な力がこの世界内では、君達全員使えちゃいます! 因みに僕のこの力は、ジャンル『ゲームマスター』による、『絶対的俺様原理』って能力だよ。──ただし、能力を使える様になるには自分自身のジャンルを理解し、成長しなければ使えないのです……。言わば育成ゲーやRPG要素ってこと。あと最後に一番大事な事を今から言うよ? 準備は良いかな? この世界『eワールド』から脱出したければ、七人の罪人を討伐し、eワールドの中心に位置する塔『バベル』を攻略してね? 以上ルールぽくもあるけど、大した事じゃないルール説明でしたぁー。それじゃ、僕達の作った世界を満喫してねぇ、バイバーイ」
一頻り喋り倒すとサルバトーレは宙を舞い、身体が流動的になりだし。
「あっ! 言うの忘れてた。君達の基本ステータスは君達自身の体力、力を忠実に数値化し──」
サルバトーレが喋り終わるのを待たずして、完全に噴水の水へと戻り、虚空へと消え去った。
「マジかよ……。この世界はさっきの様な奴等に作られた世界って事で。俺達はそこに連れてこられた。見た感じ、この世界で死ねば元居た世界には帰れない。んで、帰るにはさっき説明された事をクリアしないとならない、か──頭混乱してきたわ」
「おぉ! 見ろよクロ。ゲームのメニュー画面みたいなのが出たぞ」
「呑気だなぁー、ハナビは。で、どうやって出したんだ?」
「人差し指と中指でタップしたら、なんか出た」
虚空をタップしてみると、ハナビの言う通りに"メニュー"と上部に書かれた、テキストが出てきた。
順々に試しにタップしていき──残すは自身のステータスのみ。
いざ、開いてみた感想というと──
「ステータス低っく! 特にSPがヤバイな。仕方ないにしても、マジで……。唯一高いのが、何だこれ? "頭脳"? ちょっぴり他より高いだけだ。──何だろう、悲しくなってきた」
「はは、確かにヤベーステしてんね、クロ」
「うるせぇ! 勝手に背後から覗いてんじゃねぇーよ。ったく、笑いやがって。そう言うハナビはどうだったんだよ」
「俺っちのステ? 大して高くなかったよ。まぁまぁって感じかな? ほら」
「普通に高ぇーじゃねぇーか!」
特に目立って高いのはSPとHPぐらいか。
クソ羨ましいわっ!
──いや、単純に俺が低過ぎるだけかもしれない。
このぐらいの数値が、普通なのかもしれないな。
自宅警備員だった付けが今になって、響くとは。
少しぐらい、運動とかするんだった……。
同じ場所に止まっていても仕方がないと、共に行動をする事にした護とハナビ。
『オープナー』という先程まで居た街を後にし、何処までも続く緑色の大地を目にしながら、土の道を歩いていた。
「なぁクロ、これからどうするよ?」
「どうするってもなぁ……。やらなきゃいけない事は分かってるけど、安易に戦闘なんかしてみろ。今の俺達じゃすぐ死ぬぞ? 特に俺の身が危険だ!」
「確かに。じゃ、Lv上げでもしようったって、この世界にLvってものが存在しないし……」
「そうなんだよなぁー……。サルバトーレが言ってたけど、ジャンルの成長ってどうすんだよ。Lvという概念がないのに」
「そう言えばクロって、何のジャンルだったの?」
「俺は『格闘』。ハナビは?」
「俺っちは『音楽』!」
因果だとでも言うのだろうか……。
俺があの日敗北した、ゲームのジャンルと一緒になるなんて。
もしかして、彼奴も此処に来てるのだろうか?
長らく歩いていると、一つの村が見えてきた。
──が、行手を阻む様にして、三体の狼が道を塞いだ。
「いやしかし、どうしましょう……」
「他人事みたいに言いやがって。逃げた所で追っかけられそうだしな。戦うにしたって、此処での戦い方分からないし」
睨み合いが続いていると。
「貴方達死にたいの? 死にたくないなら逃げるなり、戦うなりしなさい!」
声につられて宙を見ると、一人の女性が宙を舞い、護の前に着地した。
彼女は腰まで伸ばした黒髪を靡かせ、腰に携えた二丁あるうちの一つの銃を構え。
弾丸を三匹の狼に浴びせた。
彼女は銃口から昇る煙を吹くと、ホルダーに納め、踵を返す。
「初めまして。私の名前は『ハッピー』。よろしく、お二人さん」
「凄いな、あんた」
「──ハッピーよ」
「悪い、ハッピー。俺はクロネコ。よろしく」
「俺っちはハナビね」
「へぇー、ハナビにクロネコ──クロネコ? もしかして、あのクロネコ?」
「ん? クロって有名人なん?」
「貴方知らないの? ゲームをしてる人なら誰でも知ってるって言っても良いぐらいの、超超ちょぉぉぉう有名人よ! なんてったて、一度プレイしたゲームはトップに君臨し、数多の大会を制した男よ? それがある時忽然と姿を眩ませたんだから」
凄い勢いに、護は苦笑いをするので精一杯だった。
「俺っち暇つぶしに、音楽系のゲームしかしないからなぁ。基本グループでダンス活動してるから、がっつりゲームって訳じゃないんだわ」
「それなら仕方ないわね……。でも、それでよくこの世界への招待状が届いたわね」
「音楽系のゲームなら得意で、どんなものでも上位だったから。偶にはトップにもなったし」
「えっ!? クロネコを差し置いて?」
「俺、リズム感がいまいちだから音楽系のゲームが唯一苦手で」
「あぁー……なんか意外な弱点ね」
「そう言うハッピーはどうなんだよ」
「私? 私はFPSを主体にシューティングゲームをやってたの。大会にだって出た事あるんだから。それが原因か、私のジャンルは『シューティング』だったわね」
これで確信出来た。
やはり、各自に指定されたジャンルは、その人の最も得意とするものや好み。
何かしらの因縁があるものと見て、間違いなさそうだ。
それに、ここに連れてこられた人々は、何かしらの記録を持つ者で間違いないだろう。
コルット村に着いた俺達は、酒場に立ち寄り腰を落ち着け、会話を楽しんでいた。
「──行くあても無く、戦い方も分からないまま、オープナーを飛び出して来たってわけ。はぁ〜、よくそれで死ななかったわね。彼処で私が助けなければ、本当に死んでたかも」
「本当に助かったよ」
「俺っち、もう死ぬかと思った」
「せめて最低限の装備を付けてから、動きなさいよ。特にクロ。貴方なら、分かってた筈よ?」
「本当、面目無い。長年まともにゲームを真面目にやってなかったせいってのと、急な出来事で思いの外混乱してたみたいだ」
「伝説の神プレイヤーとまで言わしめた人が……。はぁ〜、仕方ないわね。取り敢えず手始めにゴブリンでも狩に行きましょ。そんで、報酬金で貴方達の一先ずの装備を見繕うの」
「いやいやいや! 俺達戦えんぞ? 武器だってないし、能力もない。初期ステだって俺はクソなんだ。ハナビはともかく、足手まといにしかならんぞ? 俺は」
「大丈夫よ。ゴブリン程度、私一人でどうにか出来るし、援護だって出来るわ。さぁ、そうと決まればクエスト受けて、出発よ!」
「結局俺達も戦うのかよ!」
「つべこべ言わない! 早速だけど、私達でパーティー組みましょ」
「──あぁ、分かったよ。どうやるんだ?」
「簡単よ。始めにフレンドになるの。後はメニューを開けば分かるから」
確かメニュー画面に、"パーティー"って欄があったな。
あれの事を言ってんのか? まぁ、取り敢えず開いてみるか。
三人はメニュー画面を開くと、互いにフレンド申請を送信──受信すると、了承し。
パーティーの文字をタップ、フレンド枠に出てきたハナビとハッピーの名を更にタップすると、パーティーが組めた。
「さぁ、これで晴れて私達はパーティーよ」
「へぇー、こうやって組むんだ。なんか新鮮。音ゲー以外やった事ないから」
「後の詳しい話は道中でしましょ」
酒場に設置された掲示板に近づくと、ゴブリン討伐のクエストを手にし。
何処かおっとりとした美人な受付嬢にクエスト用紙を渡すと、受理してもらい、俺達はゴブリン討伐をしに出発した。
ご愛読ありがとうございました
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