1.起動《ログイン》
昔書いてたものって、何か思い入れが少なからずあるんですよねぇー……。
俺の人生は、一本のゲームソフト『ジャンル・オブ・ウォー』に出会い、全てが変わってしまった。
──数年前。
この世のゲーマーなら誰しもが一度は耳にした事のある、一人のトッププレイヤーが存在し。
彼は幾つもの偉業とも言える、記録を保持した。
一度プレイしたゲームは全てランキング一位に名を維持。
自身が参加した大会全ジャンルで優勝を総なめしたという、ゲーム業界きっての神プレイヤーとまで言われた彼の名は、『黒猫』。
──だが、ある戦いで付けた一度の黒星と共に、黒猫はゲーム業界から姿を消した。
「あー、暇だ……」
"人生適当”と書かれたTシャツに、ジャージのズボン。
余りにもみすぼらしくだらしない格好をして、ベッドに横たわる男の名は『黒乃護』。
「にゃー」
「──どした?『マサムネ』。お腹でも空いたのか?」
横たわったままの護に擦りつき、甘えた様に何かをねだる黒猫。
黒猫にご飯を与える為にベッドから離れ、キャットフード片手にエサ入れへ。
あの敗北か何年もの月日が経過した。
一度はゲームから身を離し、完全に辞めようとさえしていた。
──が、俺にはそんな事も出来るはずもなく。
今では気晴らし暇つぶし程度に、ゲームを学校にも行かずやり。
黒猫と自宅警備をする日々を、送っていた。
つまんねぇんだよな、どのゲームも。
あの時の敗退からゲーム自体に身が入らないし……。
「ガツガツ食うなぁー、マサムネ。誰もお前の飯取らないし、喉に詰まらせるからゆっくり食べろよ?」
「すいませーん! 宅配でーす!」
来客を知らせるチャイム音と共に、男性の声が聞こえてきた。
「はいはーい! 今開けますよ」
宅配の人から小包を受け取ると、男は挨拶を残して帰宅。
護は手にした小包を眺め、
「誰からだ? ──送り主は不明か」
床に座ると怪しさが残る小包を開けてみる事にし、封を破り開ける。
中には一本のPC専用ゲームソフトと手紙が。
何々……。
当選おめでとうございます。
黒猫様を我々の世界に招待致します。
──何だこりゃ?
そもそも何で俺のプレイヤーネームを知ってやがるんだ? あの頃使ってたネームを。
とは言え、ゲームねぇ。
『ジャンル・オブ・ウォー』と書かれたパッケージを手に、まじまじと見ていた。
「どう思うよ、マサムネ。怪しさがプンプン匂ってくるよな」
「にゃー?」
食事を終え、傍らにいた黒猫をひょいと持ち上げて膝の上に乗せ、テーブルにあったゲーミングノートパソコンを立ち上げ。
「やることないし、ちょっと面白そうだから起動してみるか」
ゲームソフトをCDドライブに入れてみた。
すると画面が光を放ち──収まると部屋に黒猫を残して、護の姿は無くなっていた──
ご愛読ありがとうございます。
感想・ご指摘・その他、お待ちしております!