ムイカメ
今日は文化祭前日だ。
この日から学校がおかしくなり始めていた。
まず、登校したとき。
学校全体に「死ね」「殺す」「やめて」「助けて」などの赤い文字がかかれていた。
午前中はこれを消す作業で終わっていた。
さらに午後になると水道から赤い液体が出てきたり図書室の本棚がすべて倒れたりとかなりの怪奇現象が起きた。
私は明島くんを訪ねる。
「これって…」
「よほど、強い想いの霊が学校にいるみたいだね。僕が見てきたなかでもこんなに力をもつやつははじめてだよ。」
輝間くんにも訪ねてみた。
「驚きの連続だね。ますます、俺の仮説が実証されていく。こんなに嬉しいことはない」
私はちょっと輝間くんをにらんだ。
「ごめんって。流石にこれをどうすれば止められるかいま考えてるところだよ。想いが強ければ強いほど現実世界に及ぼす影響が強いと考えてるよ。これは、何かの令の成仏が必要になるかもね」
だから、いつものところに一人でいるんだよね。きっと。
アケミに関してはトイレにいくことができなくなっていた。
夕方になると生徒にまで被害が出てきていた。
生徒の背中に「消えろ」「死ね」
などが書かれていた。
キラリもその被害者だ。
「なんであたしがこんな目に遭うの!?ありえないんだけど!」
そんななか、被害は私にもやってきた。
私が輝間くんを訪ねたあと、教室に戻ろうとしたときだ。
気づくとあたりはモノクロの世界になっていた。
「ここって…」
重世界だ。
でも、近くに明島くんはいない。
「あなたはなんでここにいるの?」
誰かの声がする。
聞いたことのない、女の声だ。
「私はここにいちゃいけないの?」
声の主はとても近くにいるようだった。
右を向くと同じ制服を着ている女子がいた。
「え?キラリ?それともアケミ?悪い冗談は辞めてよ」
「私はあいつらを許さない。」
「え?」
彼女は消えた。
私はどうすればいいのかわからなかった。
明島くんはみつからない。
輝間くんによれば、明島くんと同じ能力を持つものだけが重世界と現実世界を往復できるという。
しかし、ここに私しかいない。
ってことは?
バカな私でもわかる。
「帰れない…」
私は明島くんをとりあえず探そうとした。
私たちの教室の前に来た。
ここで私は輝間くんの言葉を思いだした。
ーーー想いが強ければ強いほど現実に与える影響は強くなるーー
もしかしたら私は現実世界に干渉できないかもしれない。
教室の扉に手をかけた。
が、感覚がなかった。
私は泣いた。
誰もいない、孤独の学校で。
「うふふふ」
さっきの声だ。
周りを見ても誰もいない。
「あなたも私と同じ。あそこにいても誰もあなたを必要としてない。いなくなってもだれも困らない。みて。現実世界にいま、何が起きてるのか」
目の前にさっきの光景が浮かぶ。
クラスメートの二人がいた。
教室でなにか話をしているようだった。
「ってかさー、ヒカリうざくね?」
「あー、それそれ。変に真面目なんだよね」
「能無しの癖に生意気な」
「しかも、最近、明島くんと輝間くんと一緒にいる時間が長いみたいよ~」
「肉食女かよ」
「でも、能無しの肉食女は獲物は捕まえられないよ、バカだもん」
消えた。
「見た?これが現実。あなたは必要とされてないの」
「そんなことない!!!」
私は言い返した。
「私はあんたなんかとは違うわ!!だからこんなところから出て見せる!」
私は走った。
困ったときはいつも向かうところは決まってる。
旧パソコン室。
輝間くんがいるはずだ。
私は旧パソコン室の扉の前に立った。
さっきのなにも感じない感覚が蘇る。
「ここで、さわれなかったら私の負け。」
そう言って願いながらドアを開けた。
おねがい。
ドアはあいた。
私は輝間がいつも座ってるところに向かった。
そこのパソコンは起動されていた。
なんか、いろいろソフトが開いてるけどそれは無視した。
輝間が言うには現実と重世界は基本的に物体を媒体として干渉できる。
私はパソコンのメモソフトを開いた。
そして
「ta su ke te hi ka ri 」
とうった。
しかし、ここから先、どうすればいいのかわからなくてそのまんま、待っていた。
輝間のいつも座ってる椅子に座って。
気づくと私は輝間の上にいた。
椅子に座ってる輝間に座っていた。
「!」
私は急いで立つ。
「ヒカリ!」
明島くんが声をかける。
「どうして、お前が重世界に…」
「わからないわ」
「とにかく今は彼女が帰ってきたのを祝いましょ」
キラリが言った。
「ひかりぃーーー!」
アケミが私に抱きついてくる。もう、かわいいんだから。
私は重世界で起きたことをすべて話した。
謎の女子生徒のことを。
「なるほど…興味深いな」
ガラガラ と音をたてて誰かが入ってきた。
「何してるこんなところで」
影山先生だった。
「何をしている。もう、夜だぞ。早く帰りなさい。」
「はーい」
と私たちは返事した。
帰り道。
私は明島くんに声をかけられた。
「うちに来ないか?」
「え?」
「ちょっと話をしたいんだ」
「いいよ」
私は明島くんの家にいった。
「お邪魔しまーす」
「そんなに行儀よくしなくていいよ、だれもいないからさ」
「え?両親は?」
「…」
「あ、ごめん」
このあと、私は今日のことを明島くんに話した。