イツカメ
学校に来て、私は、旧パソコン室へむかった。
目的は輝間くんだ。
「輝間くん!」
「めずらしいじゃないか、こんな朝から」
「重世界論」
「興味を持ったのか?」
「ちょっといってみて!」
「まず、ここでは主にポルターガイストを取り扱ってみようと思う。ポルターガイスト、それは…ヒカリに分かりやすいように説明すると家具とかがガタガタ動く現象だよ。」
「そんくらいわかるし」
「物が動くためには力が働く必要がある。
これは、物理で習う運動方程式より明らかだよね」
「なにそれ?」
「ma=Fだよ。質量と加速度の積は力だ。逆に加速度0つまり、物が動いていないときF=0つまり、力もはたらいていない。」
「なんか、きゅうに難しいよ」
「でも、運動方程式はもうひとつの見方がある。質量が0ならばどんなに力を込めてもそれは0ということだ。」
「もっと簡単に話せないの?」
「今、僕は高校レベルの話をしてるんだよ。」
「ぶー」
「続けるぞ。さて、ここでポルターガイストについて考えてみよう。例えばこの、机。君ならどう揺らす?」
「こうかな」
といって私は机を揺らした。
「そう。そして、誰かがその動きをしない限りこの机はそのような動きをしないんだよ。じゃ、誰がこんな動きをしてるのか。それはきっと、こちらからは観測できないつまり、見えない誰か。でも、質量を持ってるやつが見えないなんてあり得ない。質量がある、つまりそいつは分子を少なくとも持っているからだ。ということはその人物はこちら側の空間に存在しているということがなくなる。つまり、その場にいる霊と我々は異なる空間しかし同じ場所にいるということになる。この異なり同じ場所にある空間つまり、我々のいる空間と重なった空間を重世界と名付けた。」
「むずかしいー」
「よーするにだ、幽霊か確実に存在している。彼らは我々と同じところにいるが特別な空間で生きてる。故に観測できない」
「まぁ、すこし、わかったかも」
「さらに、ここからは、おれの推測なんだが、この二つの世界を行ったり来たりできる人物、もしくは、向こうの世界とこちらの世界を同時に観測できる人物がいる」
「誰?」
「明島じゃないかな。やつは女子トイレの事件のときに机を見張るといってほかのやつらを買い出しに行かせたが、実際やつはずっと女子トイレを眺め、挙げ句のはてには机は2つ他のクラスに盗られている。」
「そーいえば、私に、俺が霊能力持ってるっていったら笑う?って聞かれたわ」
「確定だな。放課後ここにつれてこい」
「うん!」
この日の作業は買い出しに終わった。
飲み物やお菓子などを大量購入した。
私は明島くんに、声をかけた。
「明島くん!ちょっと来てほしいんだけどさぁ」
そう言って私は再び旧パソコン室へむかった。
「輝間か」
明島くんが言った。
「明島、お前、霊能力もってんだろ?」
「話したのか?」
明島くんが私の目を見た。
私は首をたてに振った。
「いや、正直ヒカリの言ったことはあんまり頼りにならんかった。俺は自分一人でここまでの結論を導いた。その証拠に今からお前の持ってる霊能力がどのようなものか当ててやるよ」
「やれるもんならな」
「霊が見える。」
「半分当り、半分外れかな」
「もう少し考える必要があったか」
「例えばこんなことができる」
そう言ってパソコンのマウスを宙にあげた。
すごかった。
「驚くことはないよ。恐らくこのマウスの、したには霊がいる。」
「当りだ。流石だな。」
明島くんは私と輝間くんの手を握った。
「見してやるよ、お前らの言う重世界を」
気がつくと当りはモノクロになっていた。
昭和のTVみたいな感覚だ。
マウスのしたに人はいた。
「彼は俺がこの前話した戦争のときの日本兵のはしくれだ。そして…」
明島くんの手には火の玉が出来ていた。
「あんまり、こんなことはしたくないのだが、おれの能力を示すためだ。」
火の玉をマウスのしたの、人間に投げた。
「ふぐゅぁーどぅゃーーじぇゃーー」
日本兵はそんな声をあげながら燃えていった。
マウスは床におちた。
気がつくとあたりは元通りになっていた。
「なるほど。俺の仮説は結構あってたのか。」
「俺の能力は霊を見ることができて、少しなら霊を操れる、さらに、霊の成仏もできる。」
「キャーーーー」
女の声がした。
私じゃない
周りをみるとキラリがいた。
「あんたら、こんなとこでなにしてるの!?え?誰もいなかったよね?なんで??」
「説明してやるよ」
と輝間くんは長々とはなしをはじめた。
「なるほどね」
キラリは納得したようだった。
「ヒカリ~」
と言いながら誰か入ってきた。
「探したよ、トイレ行こう」
そんなことをいってくるのはアケミだ。
「こんなとこまで探しにきたの?」
「だって怖いんだもん」
「怖い?」
「トイレで誰かの声がいつも聞こえるの。他の誰かにも聞こえるのかなって思ってヒカリをつれていってたんだけど。」
「それは、興味深いな」
輝間くんが言う。
「だな」
明島くんも言う。
「我々も同行させてもらおう」
二人が言う。
「え?そんな、トイレに…?」
私が事情を話した。
明島くんが霊能力を持ってること。輝間くんがそれを根拠もつて説明してくれることを。
「わ、わかりました」
「え?私を置いてくの?待ちなさいよ、私もつれていきなさい」
キラリは勝手についてきた。
しばらくしてアケミはトイレから出てきた。
「これは…」
明島くんの目が皿になっていた。
「アケミ、お前、辺りがモノクロにならなかったか?」
「うーん、すこし?」
「やっぱりな」
「なるほど」
男子二人が納得する。
「え?なになに??」
「アケミはこの一瞬、重世界へ連れていかれてる」
輝間くんがこたえる。
「明島くんがそうしてるの?」
「なわけないだろ!おれが重世界に連れていけるのは俺の触れてる物だけだ。」
「じゃ、誰なのよ、早く言いなさいよ」
キラリが言う。
「霊」
明島くんが答える。
「ひゃぁ」
アケミが泣く。
「霊ってことはこの前いってた日本兵のナントカ?」
「わからない。見ようと思ったけど見えなかったんだ」
ここで私はとあることに気づいた。
「ん?ちょっまって。明島くん、個室のなか見えるの?」
「僕には現実世界と重世界にあるものを分けてみることができる。そして、分けたら、アケミだけが見えたんだ。」
「それって覗きじゃね?」
キラリが言う。
「うわぁ」
アケミは泣き崩れた。