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籠城野郎Aチーム〜鬼が笑うような話

作者: 瀬川潮

「おいーす。水族館、調子はどうだ?」

 特殊潜入工作部隊「籠城野郎Aチーム」のリーダー・竜宮城たつみや・じょうは非常灯だけがともるトイレに入り仲間の水族館みなぞく・やかたに挨拶をした。

「おいっす。問題ありません」

「元気がないぞ、もう一度。おいーっす!」

「……おいーっす! 順調であります」

「しっ! 声が高い。静かにしろ」

 閉店時間を過ぎた深夜の百貨店のトイレの中でリーダーを迎えた館は、城のあまりの理不尽さに眉をしかめた。

「それはともかく、食料の調達はうまくいったようだな」

「はい。うまく食料品売り場から確保できました」

 館の前にはカップ麺やレトルトのごはんなどが並んでいる。そこへ、城がカセットコンロとカセットを置く。

「せっかく百貨店に潜入しているのにデパ地下ものが食べられないのは計算外だったな」

 城のぼやきに館がうなずく。

「ところで、深海からは?」

「5階の家庭用品売り場に行ってブランド物の食器を調達に行ってます」

「よしよし。このあたりは百貨店に潜入している甲斐があるな。……空飛ぶーは?」

「社員食堂に向かって調味料の確保に当たっています」

「うむ。われわれもプロだからな。使い切ることのできないものは潜入の痕跡として残るので使わない。セオリー通りだ」

 ちなみに、深海から(ふかみ・から)と空飛ぶー(そらとび・ぶー)も同じ籠城野郎Aチームの仲間だ。

「……応答せよは?」

 城は、チームの紅一点・応答せよ(おうとう・せよ)を探した。

「男子トイレにはいられないと、女子トイレに潜伏しています」

「つまらないことにこだわってるな。我々は任務とあらば女風呂だろうが女子更衣室だろうが構わず潜入・籠城しなくてはならないと言うのに」

「た、大変だ!」

 そこへ、太った男が男子トイレに入ってきた。手にはマヨネーズが握られている。

「警備員がこっちに向かって来ている。早く移動しよう」

「何っ! 館、すぐせよにケータイの手紙で知らせよ」

「メールって言ってくださいよう」


「……危ない所だったな」

 一同は別の階のトイレに落ち着いて安どのため息をついていた。

「ところでリーダー。今回の任務は初売り福袋のゲットですよね」

「む? 何をいまさら」

 今度はせよに配慮して女子トイレに潜入した三人。城はせよの確認に疑問の言葉を返した。

「いえ。それならわざわざ開店前に列を作る人々より前に位置すべく店内に潜伏するより、このまま福袋をいただいてしまえば早いのでは、と思ったので」

「ばかもの! 我々は泥棒ではない。特殊潜入工作部隊の気概を忘れたか」

「それなら、今の内に福袋の中を開けて確認やすり替えとか工作をしてもいいのでは?」

 合流したからも作戦変更を意見具申する。

「ばかもの! 福袋は『何が入っているか分からない』ところに福が宿るのだ。入っているものが福ではない。入っているものに福が宿るのだ」

 それを初売りより先に開けてしまっては福も逃げるであろうが、仮に服が入っていたとしてもそれはあくまで服であり福ではない、など持論をアツく展開する城。二人は仕方なくリーダーに従うのだった。

「そんなことはいいから、はやく食事にしましょうよう」

 ぶーの言葉に、メンバーはとりあえず翌日の初売りに備えるために腹ごしらえをするのだった。


 しかし。

 籠城野郎Aチームに福は訪れなかった。

「入口前に並んだ人に整理券を配りましたので」

 福袋を購入できなかった五人が店員にごねると、そう返答された。

「泣くな」

 リーダーの城は、そうメンバーを励ました。

「我々は潜入に失敗したわけではない。潜入場所に失敗したのだ」

「来年は、絶対に失敗しない場所に潜入しましょう」

 一年後の巻き返しを誓いながら、チームは次の潜入作戦へと向かっていくのだった。


 そんなわけで来年、あなたの買った福袋に「籠城野郎Aチーム」が入っているかもしれないのでその時はよろしく。



   おしまい

 ふらっと、瀬川です。そろそろ旧作も尽きてきました(


 他サイトの競作企画に出展した旧作品です。瀬川潮♭名義。2008年12月作品。

 匿名での発表で作者当てなんかも楽しみました。


 執筆条件は、

>指定されたワードを含んだ小説

>以下のワードから5つ以上選んで。

>(漢字・ひらがな表記は特に指定しません)

>竜宮城・籠城・夏・時間・夕立・君をのせて・深海から・手紙

>南国・食堂・空飛ぶ・水族館・応答せよ・白石・はぐれそうな

>天使・おいしい・作り方・鬼が笑う

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