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どう打つの?森  作者: 工場長
東三局・いろいろと面倒が起こっています
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79/95

第二十三話 絶対に負けられない闘い(ニ)

 突然挑まれた麻雀勝負

 対するは赤い眼鏡の店員!

 なんと彼女は教頭の妹だった!!

 さっさと親を流されて……どうなる和平、どうなる麻雀部!!!


「裏ドラ乗らずで安い手でしたが…、もう部長さんには親はありませんね」

「なーに言ってるんだ? 親っ被りとはいえ2000点で済むなら御の字だろ?」

 先制した勝美に余裕で返す和平。

(点数的には御の字だが…、向こうが調子付かなければいいけどなぁ……)

 例え最初は小さな和了りでもそれがキッカケで勢いに乗り、高い役を和了る者もいる。 目の前にいる勝美がそうではないとは言いきれない。


 東二局 親・キリミン ドラ(6)


 前局和了ったことにより、勝美は調子付いたようだった。

「ロン!」


上二ロン→ 二二三四赤五(4)(5)(6)33678 ロン二


「タンヤオ表ドラ1赤ドラ1 5200点!」


「二回連続和了って親番ですわよ、部長さん」

 流れとしては勝美に分があることは否定できない。

「わへい君……」

 一香が不安そうに和平に声をかける。今の彼女にはこれ以外にできることがない。

「大丈夫だ、清水さん。後二局もあるじゃないか」

(そうだ、後二局……、これで彼女より得点が上回ればいい……)

 

 東二局終了時

 一着・茶デレラ(勝美) 34200点

 二着・チバナシー    24000点

 三着・森部長(和平)  23000点

 四着・キリミン     18800点



 東三局 親・チバナシー ドラ九


「ポン!」 

 和平は勝美が最初に切った「西」を鳴く。

「あらあらー、そんなに和了りたくて必死ですかー?部長さん」

「まあな、必死なんだよこっちは」

 そう言いながらも和平は一香に向けて穏やかな笑顔を見せる。

「そうやって清水さんを安心させればいいですわー。私は私の手牌を進めるだけですから」

 五順後、勝美がにっこりと笑いながら

「これは必要ありません、リーチ!」

 と、「赤(5)」を切った。

 それを見た和平は動ぜずに画面のボタンを押すと

「ロン!」

 

 対赤(5)ロン→ 一二三(1)(1)(4)(6)666 対ポン西西西 ロン赤(5)

「西・赤ドラ1 2000点!!」


「に……2000点ですかー? そんな安い手で私から和了れるのがそんなに嬉しいですか?」

 和平に支払う点棒が想像よりも安かったせいか、勝美は侮るように和平に尋ねる。

「嬉しいね、特に『赤(5)』を出してくれたのが、さ」

「……そうね」

 点数の変化を見て一香も和平が笑みを浮かべる理由に気がついたようだ。



 東四局 親・茶デレラ(勝美) ドラ白

 一着・茶デレラ(勝美) 32200点

 二着・森部長(和平)  25000点

 三着・チバナシー    24000点

 四着・キリミン     18800点


(さて……、満貫条件になったわけだけど……、ツモなら1300・2600か……)

 和平が「嬉しい」と言った理由がここにある。勝美が切ったのが「赤(5)」ではなくただの「(5)」だった場合、和平の和了りは1000点。勝美との差は8200点でオーラスを迎えることになる。

 つまり、満貫でも勝美からロンしない限り200点差で負けるところだったのだ。

 しかし現実の点差は7200点。誰からでも満貫和了りで逆転ができる。

(流れとしては、ちょっとでもこっちに来てくれたら……)

 そう思い取った和平の牌には「白」が二枚。

(……ポンしたら満貫確定だな)


 和平の配牌

 二二四八(7)(7)4678白白中


 しかしドラの「白」はなかなか河に出てこない。

 恐らくドラを捨てて誰かに鳴かれるのを警戒しているのだろう。

 和平が彼らの立場でも警戒する。よほど「白」がいらないと思えない限り。

(もしかしたら誰かが持っているんじゃないのかな?)

 誰かが「白」を二枚持っていたらそれが河に出てくる可能性は低い。相手も鳴いて役をつけるか暗刻になるのを心待ちにしているのだから。


 数順の間に、和平は誰が「白」を持っているか想像ができた。

 目の前にいる勝美である。

 なぜなら彼女は牌をツモるたびに表情を変えているのだから。

(おそらく四順目で「白」が一枚来ているはずだ……。たぶんそれが彼女にとっても二枚目……)

 前局は和平から直撃を喰らったとは言えその前は二局連続で和了っている。

 和了れなかった前局もテンパイして「赤(5)」を切るという、彼女にとってはよかった展開だ。

 2000点のロンで牌が悪くなるわけが無い、と勝美は思っている。

(その考えは事実だ。しかし、もう一つの事実を忘れている……)

 前局は勝美とは違う人物が和了ったこと。そしてその人物は小さな和了りから調子を良くしていくことを。


 十順目――

(はい、これで鳴く必要はなくなった)

 ゲームの通信対戦とはいえ相手が目の前にいる。

 一香は勝美とは違い、和平の動きに対しての反応は静かだった。

 しかし今の「赤5」でテンパイしたときの驚きは、静かながらも和平には充分伝わっていた。


 和平の手牌

 二三四(7)(7)(7)4678白白中 ←ツモ・赤5


 リーチをかければ「リーチ表ドラ2赤ドラ1」満貫確定である。

 当然和平は「中」を切って

「リーチ!」

「ええっ、私より何で先にテンパイするの!!」

 勝美が始めて和平に対してリアクションを見せる。

 キリミンとチバナシーは和平の現物を切る。

 そして勝美は苦悩の表情を見せながら「ニ」を切る。

(彼女はオリたか……、まあ俺が和了らなければ勝ちだからな……)

 和平一人がテンパイでも順位は変わらない。

 だが、そんな心配をする必要もなかった。

「ツモ!」


 ツモ3→ 二三四(7)(7)(7)4赤5678白白 ツモ3 裏ドラ西 


「リーチ一発ツモ表ドラ2赤ドラ1で3000・6000!」


 最終結果

 一着・森部長(和平)  37000点

 二着・茶デレラ(勝美) 26200点

 三着・チバナシー    21000点

 四着・キリミン     15800点

 和平の勝利!!



「さて、俺が勝ったから清水さんは立候補しない、でいいんだな?」

「……悔しいですが勝負に負けたので何も言えません……」

 勝負回避できない状況までにしておきながら負けたらあっさりと引き下がる勝美の姿に、和平は少し違和感を覚えながらも

「それじゃあ教頭先生にもよろしく伝えてくれ」

 勝美に背中を向けて歩き出す。一香が小走りに和平の隣に位置すると

「わへい君……どうもありがとう」

 と、少し顔を赤らめながら感謝を述べるのであった。

「まあ大切な……仲間を守るためなら当然のことだよ」

 仲間が出てくるまでに「人」と「部員」の二つの言葉が和平の頭の中で浮かんでは消えていく。

「仲間か……、ありがとね」

 一香の照れながらの反応に、この選択は間違いなかったと、和平も照れる。少し体が熱いのは暑さのせいだけではないだろう、


「それにしても最初リードされた割にはあまり焦っているように見えなかったけど……。焦らなかったの? そう見せなかったの?」

 一香の問いに和平はちょっと後ろを向いて勝美が視界にいないのを確認して

「正直2000点彼女から直撃できるまでは焦った。でもそれを見せるわけにはいかないじゃないか……」

「向こうは反応分かりやすかったわね」

 少し呆れを混じる一香。

「そうだね、たぶん自分の手牌だけで相手の動きとか見ていないと思う。他の二人も手が入っていたら、彼女はあそこまで点数得られなかったんじゃないかな?」

「私も最初上手く行き過ぎるとそうなることあるわ。気をつけなきゃ」

「俺も気をつけないと」

 こうして、勝美との麻雀勝負に勝った和平と一香は更なる精進を心がけるのであった。



 その頃杏子と言えば

「全く、簡単な買い物のはずだったのにー」

 和平たちよりも近場で、それほど時間のかからない用事であったのに未だに学園に着いていない。

 スーパーで買い物を済ませてレジをでたところで、黄色の眼鏡をかけた女性に「葵塚ファミリーランド年間フリーパス券」購入の誘いを受けたのだ。

 杏子にはファミリーランドの需要はない。断ってはみたが、しつこく誘いを受けあげくには

「このままじゃお姉ちゃんたちに合わせる顔がない!」

 と、言われてしまったのだ。

 しょうがないので、軽く身の上話を聞いた後で「やっぱりごめんなさい」と謝った杏子。

 だが彼女は話を聞いてもらって満足したのだろう。

「いえいえこちらこそお時間いただいて済みませんでした」

 と、頭を下げた。


 安心して帰途についた杏子だが、黄色い眼鏡をかけた女性の話が全くのウソだったことも、携帯への着信振動を合図に女性が引き下がったことを彼女は知らない。

「あ、やっと学園が見えたわ」

 そんな杏子をピンクの眼鏡をかけた女性が待っている。

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