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どう打つの?森  作者: 工場長
東三局・いろいろと面倒が起こっています
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第七話 最初から言えよ、と思った

 合宿所の麻雀卓設置にいちゃもんをつける三人のロシア人!

 そんな彼らが麻雀対決に指名した相手は黒髪ロング白ソックスの一香!!

 いざ闘牌となって開けた手牌には三人の策略によって赤ドラ牌が全て失われていた!!!

 どうなる一香! どうなる麻雀部!!


 東一局 親・クロガスキー ドラニ


「べ、別に赤ドラ牌が無くたって普通の麻雀でしょ?」

 一香はいつも通りの麻雀をしようと、心に決めて牌を打つ。

「そうですかねぇ、『他人によって曲げられたルール』と言うのは厳しいものですよ」

 ダメポフが不適に笑いながら「(4)」を切る。

「ポンデース」

 勢いよく鳴いて「2」を捨てるクロガスキー。

「私たちもそれが嫌であの国から逃げたのデース」

「シロスキーの言うとおりです。おや……それはポンですね」

 シロスキーの「北」をポンして「9」を切るとダメポフは話を続ける。

「自分のやりたいことを自分で決めるこの国は素晴らしいものですねぇ。……クロガスキー?」

 ダメポフがクロガスキーの顔を見て戸惑いを見せる。

 クロガスキーはツモ牌を見るなりもの凄い形相で歯軋りをし始めたのだ。

「赤牌ハイラナイデース!」

 そう言いながら彼が切ったのは「九」

「落ち着きなさい、クロガスキー。それは赤牌じゃない。マンズです」

「ダメデース。少シデモ赤ノ部分アル。許セナイデース!」

 ダメポフがなだめるもクロガスキーは聞かない。

「彼は一番あの国に嫌な目にあったのデース」

 シロスキーが忌々しそうな顔で「中」を切る。一部が赤ならともかく、全てが赤で書かれたこの牌も彼にとって嫌なのだろう。クロガスキーにとっては憤激ものだ。

「それってある意味ハンデなんじゃ……」

 そう呟きながら一香が切った「南」にクロガスキーが素早く反応する。

「それ、ロンデース! 黒一色こくいーそー、役満デース!!」


 対南ロン→ (222888)南南西西 上ポン(444) 南ロン


「48000点ー! 私タチノ勝利デース!」

 喜ぶクロガスキーとシロスキー。ダメポフは冷静に直を見る。

「『黒一色』……ピンズの黒い牌と風牌だけを使う和了り……。確かに役満だがそれは『ローカル役満』だ。我が麻雀部にはそんな役満は存在しない……」

「つまり先生、あれはうちではどういう役になるんです?」

「『混一色ホンイツトイトイ』。親の満貫だから12000点だな」

 杏子の問いに対し和平が直に代わって答える。

「あー、なんだびっくりした」

 安堵の息を吐きながら点棒を支払う一香。

(『(4)』のポンが無ければ三暗刻がついてハネ満だな……)

 別の意味で安堵する和平。

「何デスカ、ソンナノ聞イテ無イデスヨー!」

 勝利の喜びが水の泡になったことで、不満をぶつけるクロガスキーだったが

「牌はこちらに従う。だがルールは相手に従う。これは最初に決めたことですよクロガスキー。自分の理屈だけ押し付けてはあの国と同じです」

「アノ国ト一緒ニシナイデクダサーイ」

 ダメポフにたしなめられる。


 東一局一本場 親・クロガスキー ドラ八


「赤牌ハ嫌イデース!」

 どうしても赤がある牌が許せないクロガスキー。まるで卓が壊れんかばかりの勢いで牌を切る。

「言っておくが、卓壊したらお前らの反則負け&弁償だからな」

 直が冷静に呟くとそれを聞いたダメポフが。

「クロガスキー、暴力では何も産まれない。あの国と同じですよ」

「私ハアノ国デハ無イデスヨー」

 ダメポフがクロガスキーの暴走を抑えるが、その方法が和平には同じに見えた。

(『あの国』というキーワードを使ってあの黒筋肉を従わせているんだな……)

 八順目になってクロガスキーが大きくツモ牌を上げた。

「マタ赤牌デース!」

 叩きつけようとしたが、ダメポフを見てそっと切る。それが「八」であることを一香は確認すると

「ロン!」

 と、牌を倒した。


 対八ロン→ 七七八九九(11789)789 八ロン

「純チャン三色イーペーコー表ドラ2。16300点!」

 倍返しとはいかなくても、一香は前局のミスを取り返したのだった。


 東二局 親・シロスキー ドラ(3)


 一度倍満を和了ったことで勢いは一香についたようだ。

 二順目にクロガスキーが切った「發」を鳴き。五順目にはダメポフの「白」をポン。

「シ、シロスキー! あなた『白』は持っていなかったのですか!?」

 ダメポフが驚きながらシロスキーに尋ねると。

「私が親になったとたん、一枚も来なくなったデース!」

 と、悲しそうに首を振った。どうやらシロスキーは本来「白」がよく来るらしい。

「次『中』を鳴けたら大三元確定でしょ?」

 一香の手牌を見ている杏子が和平に耳打ちする。

「そうだけど……、それじゃあ『ぱお』になって、和了られたら責任払いだ。さすがに三人はそれは知っているんじゃ……」

 和平も小声で答える。相手も「包」は知っているようで、クロガスキーもシロスキーも「中」は切らず、一香の現物だけを切っていく。一香も「中」をツモれず「(1)」のツモ切り。


 しかし、ダメポフがツモ牌を見て動きを止めた。

「ぐっ……」

(おいおい明らかに『中』ツモった、って周りに伝えているじゃないか……)

 麻雀部としてはマナー違反なので、こういう場面になっても落ち着くことが要求される。

 しかし彼らは麻雀部ではない。そのマナーを知らない可能性もあるしここでうるさく言っても仕方ないと、和平は気持ちを落ち着かせる。

「どうしたのデースカ、ダメポフ?」

「マサカ『中』ヲ……」

 二人のロシア人もダメポフに起こった事態に気がついたようだ。

「ぬーっ……!」

 一香とツモ牌を見ながら苦悶するダメポフ。やがて手にした牌を高々と掲げると。

「我々は赤だけの牌を未来永劫受け入れないのです!」

 と、「中」を卓上に落とした。

「……ポン!」

 河に「中」が置かれたのを見て無常な鳴きをする一香。

「我が麻雀部には『包』が……」

「そんなこと分かっています! それと我々の信念は別なのです!」

 直の確認をダメポフの叫びが遮る。

「ダメポフノ思イニ我々ハ答エルデース!」

 クロガスキーが嬉し泣きをしながら、一香の河に未だ無い牌「東」を切る。

「そうデース。ロンなら16000点ずつ。ダメポフのトビばないデース」

 シロスキーも一香の現物ではない「(5)」を切るが、彼女の反応は無い。

 そして一香は非情の

「……ツモ、大三元。32000点」

 「包」はツモられた場合、それを発生させたものが全て支払うこととなる。つまりダメポフが-32000点。


 ツモニ→ 三四(99) 対ポン發發發 下ポン白白白 下ポン中中中 二ツモ


 最終結果

 一位・一香      61300点

 二位・シロスキー  25000点

 三位・クロガスキー 20700点

 四位・ダメポフ    -7000点 (トビ)


「約束どおり麻雀卓はここに置かせてもらうよ」

 直がダメポフの肩を叩く。

「フッフッフッ。いい勝負を見せてもらいました」

 ダメポフにはなぜか勝負に負けての悔しさが見られない。

「さすがは『麻雀プリティ』デース。対戦できたこと誇りに思いマース」

 シロスキーが一香の顔を見て、にこやかな笑顔になる。

「……え、私のこと知っているの?」

 一香が自分を指差しながら驚くと。

「……はい、あの動画を見て私たちはあなたと是非麻雀を打ちたいと思っていました」

「麻雀卓置クナト言ッタハ、演技デース!」

「そ、それじゃあ最初から一香と麻雀するつもりだったってこと?」

 杏子がシロスキーに詰め寄ると

「はい……、でも私たちが黒髪ロングと白ソックスが好きなのは本当デース」

 平然と答えるシロスキーの太ももを蹴る杏子。しかし分厚い筋肉が痛みを感じさせない。

 一香は悪い気がしないせいか顔を赤らめて黙っている。

「じゃあ最初から麻雀卓置くことも文句はなかったわけだ」

「そうです、森部長さん。あなた方のことは校長からもよろしくと言われていました」

 最初からそう言えばいいのに、やはり腹黒かった。と和平は苦笑した。

「この感動を今日の料理と共にブログに載せるデース!」

 陽気な声を上げながらシロスキーは調理場へと向かう。

「先生ニハウオッカヲ、サービスシマース」

「あ……、ほどほどにしてくれ……」



 ――葵塚市内・教頭の家――

 時刻は午後八時を回ろうとしていた。

 つい先ほどまでタブレットで麻雀をしていた三人だったが、今ではタブレットをしまい、ちゃぶ台に並べられた夕食を囲んでいる。

 食事のときは食事に集中という家訓の中、教頭はノートパソコンを自分の足元に置いているが仕事熱心ゆえと二人の妹はそれを認めているようだ。

「それにしても麻雀って難しいね」

「麻雀ルールが書かれたサイト見ながら麻雀だもの。大変だよね、勝美お姉ちゃん」

 勝美と成美のやりとりを笑顔で眺めていた教頭だったが、携帯電話の音が鳴るや

「ごめん、仕事だわ」 

 携帯電話を確認して、次にノートパソコンを動かす。

「……どうやら河口湖の合宿所に何かあったみたい……。いや、いつもの定期更新か」

 学園のサイトになんらかの更新があると教頭の携帯電話がそれを伝える仕掛けになっているようだ。

 彼女の予想通りシロスキーが毎日している「今日の料理」の更新だったのだが、そこにとある記事が付け足されているのを見て微笑んだ。

「あらあら、自ら目立つ行動をするなんて……。ありがたいですわね」

 笑みを浮かべたまま、教頭は妹たちのほうを向いて。

「ご飯終わったらまた麻雀しようね」

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