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どう打つの?森  作者: 工場長
東一局・麻雀部創めました
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第四話 思ったより本気だったので喜んでいる

 翌日、和平が部室に向かうと、既に廊下から楽しげな話声が聞こえてきた。

(正二……、どうやらあの二人と仲良くなれたようだな)

 テンションが高くて突っ走る正二、アウトローな姐さんの雰囲気を漂わせる直、一生懸命だけど、時には周りに引っ張られていきそうな通子。会って日も経っていない和平の彼らに対する第一印象だが、それはおおきく外れていないし、それゆえに自分が抑え役に回らないと麻雀部の未来は危ういと考えている。

(通子は俺を先輩と慕ってくれているし、こっちの側についてくれればしっかりものが二人でなんとかなるのだが……)


「おはようございまーす」

 入ってきた和平の姿を見るや直は咥えていたまだ火のついていない煙草を白衣の胸ポケットに戻し

「おう森、四人揃ったし早速麻雀やろう」

 と、麻雀卓へ三人を招いた。

「四人とも麻雀ができるんだから、どれほどの実力か試してみないとな」

「いいですねー、先生。俺は負けないっすよ」

 正二が意気揚々と椅子に座ると。

「おい、席決めが先だろ」

 と、直は牌の中から「東・南・西・北」を一枚ずつ探すとそれを伏せた。

「仮に入口の真向かいに当たるこの椅子を東にするか。言っておくけど模牌もーぱいして何か探ってから引くのなしね。触ったら即それの書かれた椅子に座ること」

「私……、家族やネット以外で麻雀するの初めてなのでなんだか緊張します」

 伏せ牌による席決めの結果は、「東・和平 南・直 西・正二 北・通子」となった。

 それからサイコロの二度振りで親を決め、起親は直になった。


「それでは葵塚学園麻雀部最初の闘牌を始めましょうか」

 と、直がもう一度サイコロを振ろうとした瞬間、部室のドアが開いた。

「あっ、いらしゃいませー」

 正二が相手の顔を見ずに雀荘の店員のような軽い挨拶をするが、彼の対面に座りかつ入室者の顔が良く見える位置に座る和平は驚きの声をあげた。

「し……清水さん!」

 入ってきたのは昨日和平が声をかけた清水一香その人だった。

「麻雀部、入りたいんだけど」

 昨日会った時のようにムッとした表情を見せるも、他者を近づけ難くするためにそうしているのではなく、怖々としながらも近づきたいと思っているためだと和平は思った。

「清水さん麻雀の事調べてくれたんだ」

「うん、ルールとか役とか点数とか自分でネットで調べた……」

 一香がツンとした中に少し照れを見せながら和平に答えると通子が驚きの声を上げる。

「先輩、清水先輩に麻雀部への勧誘をしたのですか?」

「うん、通子や立花先生に会う前に」

「そんな大切なこと、どうして顧問であるあたしに言わなかったんだよ」

 いつの間にか煙草に火をつけていた直が煙を和平に向けて吐く。

「げほっ、だってまだ検討するって段階だったから……」

「しかし清水が麻雀部に入ろうなんて意外だね」

 「清水が」という直の発言に和平は咳き込みながらも一香は学園内で特異な存在なのだろうか、と思った。昨日出会ったときの事を思い返せば、確かに最初の人当たりは悪かった。そのために孤立というか孤高というか一匹狼的な存在なのかもしれない。

 しかしそれにもめげずに和平が自分の思いをぶつけた結果一香はこの部室に来ている。


「これからあたしたちは部内での実力順位を決める最初の麻雀をしようって言うんだけど、見学するかい?」

「それは俗に言う『後ろ見』ってものですね?」

 教師である直には敬意を配した言葉を使うも表情は最初のままだ。

「清水はそれも調べたのかい、じゃあもちろん後ろ見のマナーも心得ているよね」

「はい、見ている側の手がどうなってもそれを声やしぐさや表情には出さない、ですよね」

 そう言いながら一香は和平の後ろについた。

「えっ、なんでわざわざ入口から遠い部長の席なの!?」

 位置関係からてっきり自分の後ろに付くと思っていた正二が驚く。

「麻雀部を私に教えてくれたのはわへい君だからよ」

(あのー、俺は「なごひら」なんですけど……)

「清水先輩、先輩は『わへい』じゃなくて『なごひら』さんですよ」

 通子が優しい口調で注意すると。

「そうなの? 掲示板には読み方書いてないからてっきり『わへい』だと思ってた……、まあでも『わへい君』の方が呼びやすいから今後もそうする」

「私はずっと先輩って呼び続けますからね! 先輩」

「あ、ありがとう。通子……」

「ま、新入部員が来たところで、再開しようか」

 直がサイコロを振り、改めて麻雀部最初の闘牌が始まる



「……ツモ。300・500で終了」

 東風戦一発勝負の結果、直が和平の猛追になんとか逃げ切った。

 一着・立花直  32100点

 二着・森和平  30000点

 三着・一関通子 20700点

 四着・九断正二 17200点


「くそーっ、あと一回どこからでも和了れば勝てたのに……」

 悔しがる和平に直は煙草をふかしながら

「ま、顧問として生徒との実力の違いを見せ付けないと沽券に関わるからね……。部員の中で一番上なんだし部長としてのプライドは保たれたと思うけど」

「そこで満足しちゃダメでしょう。確かに先生は今俺たちより強いけど、いずれは超えないと」

「俺、副部長なのにラスだけど……」

「偉いね、その向上心こそ部長だよ」

 和平と直は正二の悲しい呟きを無視して互いの強さを認め合っている。

「そうですよ、先輩。卒業までに勝てばいいんですよ」

 通子も正二をフォローしない。

「次は私も入りたいな」

 和平の後で見ていた一香が呟いた。

「お、清水やるかい? でもネットで調べただけで実戦は初めてだろ」

「ええ、でもまずはやらないことには始まりませんから……」

「じゃあ変わるのは部長だな、二着だしちょうど清水さんのいる席だし」

「そうですね、『二抜け』って言いますから先輩が変わるのがいいでしょう」

「今度は森が清水の後ろ見して後で部長としてダメ出しするのもいいな」

 それぞれが最もな理由で和平と一香の交代を望んだ。

「そうだね、清水さん、俺の席に座りなよ」

 和平が立つと、一香はこくんと頷いて席につく。

「本当は席決めからやり直すんだけど、席はこのまま、あたしの起親で二戦目行くよ」

 一香の最初の闘牌が始まった。

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