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どう打つの?森  作者: 工場長
東二局・このままいけば卒業できそうです
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第二話 本気で落ち込んだのです

 部室までは階段を降りて右に曲がり、突き当たりをさらに右を曲がる必要がある。

 今日に限って言えばこの廊下は麻雀部のメンバーにとってはいつもより長く感じられたであろう。

 そして歩くたびに和平の期待は高まる。なぜならば角の向こうから大勢の声が聞こえるからだ。

「部長、すごい声ですね」

 正二が興奮気味に声を出す。

 そのタイミングで向こうから女子生徒の歓声があがる。

「えっ、俺の登場にみんな驚いているのかな!?」

 さらに興奮する正二。

「それは残念ながら九断の勘違いだろうな」

 直が全員に聞こえるように声をあげる。

「先生、どうしてそんな酷いことを言うんですか?」

「九断君、麻雀部の隣には男子バスケットボール部の部室があるのよ」

 一香が直に代って答える。

「つまり、この声はバスケ部志望者の声ということですか、清水先輩」

「まあ。さっきの歓声は女子マネージャー志望の子ってことだな」

 通子の問いかけには和平が一香に代って答えた。


 角を曲がると予想通り男子バスケットボールの前に人が集まっている。

「みんな、並んでー。マネージャー希望は別に列を作るんで」

「はーい、キャプテーン」

 麻雀部の部室はこの人だかりの向こう側だ。

 目の前にいる人全てが手前の男子バスケットボール部の動きに合わせているように見える。

「これ……、うちの部に入りたい人はいるのかなぁ」

 杏子が思わずため息をもらす。

「まだいないと決まったわけじゃない」

 人だかりをよけながら和平は杏子にそして自らにも励ましの言葉をかける。


 やっとのことで、男子バスケットボール部の人混みから逃れるが、目の前にある麻雀部部室の前には誰もいない。

 部室から離れたところにに女子生徒が二人いるが、これは違う部の入部希望者であろう。

「ゼ、ゼロ人ですか……」

 薄々予想していた光景とは言え、実際に目の当たりにするとダメージは大きい。和平は思わず膝をつく。

「そんな……、あんなに一生懸命やったのに」

 通子も悲しみの声をあげる。

「やはり麻雀という障壁は高かったのでしょうか……」

 純も声のトーンが落ちている。

「まあ、別の方法を考えましょう」

 一香が気持ちを次に進める言葉を出すも、その声色は暗い。

「お前ら、どうもそれは早とちりのようだぞ」

 直が遠くを見つめている。

 それに合わせるように前を見ると、先程から見えている女子生徒二人がこちらへと歩いてくるではないか。

「……どうもすみません、人混みに巻き込まれたくないので、別の場所で待機させてもらいました」

 二人のうち髪の短い方が和平たちに向かって頭を下げる。

 髪は短いと言っても通子ほどではない。肩に髪がかかるかかからないかのボブ。

 スレンダーな体系で背は杏子と同じくらいだろうか、顔は可愛さの中にはっきりとした意志の強いところが見えており、麻雀というインドアなものよりいかにもアウトドア好みに見える。

「昨日の舞台を見て、麻雀分からないけどやりたくなりました、よろしくお願いしまーす」

 もう一人はボブの子とは逆に少々茶色のロングヘアで、背も通子ほどの小ささ(とは言っても通子自身は一五〇センチはある、と言っている)。

 最初の見た印象では人懐っこさを感じる。最初の子が少しツンとしているから余計際立って見えるのであろう。

「ご、ごめんね……気を使わせちゃって。それじゃあいま鍵をあけるから部室に入ろうか」

 さっきの落ち込みを完全に見られていたので、和平は気恥ずかしげにポケットから鍵を取りだした。


「それじゃあまずは自己紹介から。名前と考えていたら簡単な自己アピールと、何で麻雀部に入ろうと思ったかを言ってくれるかな」

 部室に入り、希望者を椅子に座らせ、テーブルも対面形式になるように移動させる。

 その後で和平を中心に正二と直が両脇に座り、まるで面接のような位置取りとなる。

 他の部員に対しては「麻雀していてもいい」とは言ったものの、邪魔しないようにとそれぞれ麻雀以外のことをしている。

 その中で通子は希望者の二人をじっと見つめている。

 自分が先輩になるので、後輩になる彼女たちが気になるのだろうか。

「えーと、順番はどうしよう……、それじゃあ長い髪の子から行ってみようか」

 長い子を選んだのは和平の好みの基準によるものではない。

 部室前で最初に和平たちに話しかけてきたのはボブの子だったので、今度は順番を逆にしようと思ったまでである。

「はーい、私は二盃彩にへい あやです。中学は合唱部に入っていたのですが、先生もさじを投げるほどの音痴だったので、今度はあまりやっている人が少ない麻雀部に入ろうと思いました」

 先生がさじを投げるくらいとはどの程度の音痴なのか和平は興味を持ったがそれを押し隠し

「まあ確かに麻雀中に歌うことはないからね」

「そうなんですかー、じゃあ安心です」

 和平の相槌に彩は満足そうに頷いた。


「じゃあ次はボブの子の方……」

 和平が言い終える前に彼女は立ち上がり

「私は色部三菜いろべ みなです。自己アピールは特に考えていませんでした。麻雀部に入ろうと思ったのは、ずっと座っているので運動する必要が全く無いからです」

 見た目のイメージとは違った発言に和平は内心驚く。

(運動が大嫌いとは……、人は見た目によらないな)

 気を取り直しそうとした和平に通子がさらに驚きの発言をする。

「先輩、私、五月連休中の合宿について先輩に話すべきことがあるんでした。ちょっと廊下に来てもらえませんか?」

「はぁ!?」

 さすがにこの驚愕は表に出さざるを得なかった。

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