第二十二話 黙っていてもこの会議は踊らないからね
「なんか分からないけど面白そう、って思わせていっぱい入部させればいいんじゃないのかな」
「確かにあん子の言うとおり麻雀の説明ばっかりしても分からないから、面白そうっていう方向でやっていくのもいいかと思うなぁ……」
杏子の意見に一香が賛意を示す。
(このまま麻雀には触れないようにしていくか……)
と、ホワイトボードに書いていく和平。
「まあそれで入ればいいけど、全く理解してもらえなくて入ってもらえない場合もあるし、入ったとしても最大の問題はその人たちがずっといてくれるか、だからな」
「どういう意味ですか? 先生」
純の質問に直は頷いてから
「さっきの野球部の話あっただろ? 四月には九人いた女子マネージャーは今何人いると思う?」
「えっ、先生……。それってまさか……」
「そのまさかだ、九断。現在野球部の女子マネージャーはゼロだ」
部室に重苦しい沈黙が流れる。
面白いことやろう、と言った杏子も視線を机の上へと落としているし、気合の入っていた通子も目を瞑って何を言おうかと悩んでいる。
それを見た直はタバコに火をつけると
「おいおい、何もあたしはその方法がダメ、って言っているわけじゃないんだぞ。入れた後のフォローがしっかりしていれば誰もやめないってわけだ。ただ、最初から『麻雀やる部活』ってことが分かって入った方がやりやすいだろ? ってだけだ。決めるのはお前らだからな」
直の言葉に釣られるように一香が発言するが
「そうですね……、入部させればいい、って問題じゃないですよね……」
と、頭を抱える。
(うーん、困ったなぁ。十分って短いようで長いからなぁ。簡単に説明だけして余らせるわけにもいかないし、対局見せるには短すぎるし……。うん、対局?)
書記であるゆえ発言してもいいものかと一瞬悩んだ和平だが、話が進まないので
「先生……、質問してもいいですか?」
「ああ、書記だけど発言権はないわけじゃないからな」
「その部紹介って、あらかじめ先に撮った映像を見せるっていうのアリですか?」
「それはアリだが……」
直は和平が言わんとしていることを探りながら答える。
しかし、探る途中でタバコの灰がかなり長くなっていることに気づき、慌てて携帯灰皿に灰を落とす。
先に和平の意図に気がついたのは一香だった。
「わへい君。ひょっとして私たちが麻雀やっているところ見せるつもり?」
「そうだよ、清水さん」
「でも一回の勝負って早くても二、三十分ですよ? 終わらないじゃないですか、先輩」
通子がもっともな疑問を出す。
「前のように誰かさんがトンじゃえばすぐに終わっちゃうけど」
杏子が笑みを浮かべながら和平を見る。
「いや、勝負はオーラスまで見せる必要は無い。というか真剣勝負はしない」
「それじゃあ何を見せるんですか? 森先輩」
「まずは聞いてくれよ、みんな」
和平が話し終えると「ほう……」と言った感心の声や、驚きの声が辺りに広がる。
(少なくともネタが無い、重い雰囲気からは解放された)
和平はそう思いながら、部員からの意見を待つ。
「……、面白そうだけじゃなく麻雀もちゃんと入っているからいいことだと思う……」
一香が先頭を切って和平の意見に同意する。
「そうねー、これを見たらなんだか楽しいってことになるからね。やるじゃん、森君」
「一番いいのは普段私たちが使っている麻雀卓も見えることです。お見事です、森先輩」
「私、舞台に立ちます、やらせてください! 先輩」
「俺もやるぞー、部長!」
全ての部員が賛同してくれたところで
「どうですか、先生」
と、和平は直を見る。
「あたしもいいんじゃないか、と思う。後は役割分担と、必要な機材や材料の問題だな」
そう言うと一旦タバコの灰を落として
「後者の方は早めに決めてくれよ。先に他の部に確保されちゃ面倒だ」
「大丈夫です、それはご心配なく。先生」
果たして麻雀部は何を見せるのか?




