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どう打つの?森  作者: 工場長
東一局・麻雀部創めました
19/95

第十八話 どう動かすか知らないけどいいの? と思う

 「ファミリーランド」にありながら、このゲームセンターは一人で遊ぶゲームが多い。

 そんな矛盾を感じながら和平は通子の後を追う。

「この規模だったら絶対にあるはずなんですが……」

 通子には目当てのゲームがあるのだろうか。

 財布から取り出したカードを手に、辺りを見回しながら歩く。

「あっ、ありました。あれです」

 通子の指差す先を見て

「ああ……、なるほど」

 と苦笑いを浮かべる和平。

「ええっ!? 森先輩は部長として嬉しくないんですか?」

「えっ? 先輩、呆れているんですか!?」

 和平を見上げながら部長に対しては厳しい指摘をする純。

 通子も寂しそうな顔をしながら和平を非難

「いやー、さすが麻雀が大好きな通子だな、と思っての『なるほど』だよ。誤解させたらすまない」

 爽やかに謝りながら「呆れてない」と主張するも

(麻雀とデートは別に考えたいんだけどなぁ)

 と心の中で呟いた。


 通子の探していたのはネットワーク対戦型の麻雀ゲームだった。

 つまり彼女が手にしていたのはプレイするためのIDカードになる。

 空いている台を見つけると、通子は座らず

「先輩、どうぞ」

 和平が座るように促す。

「は!?」

 予想外の出来事に気の抜けた声を上げる和平。

「先輩、どうぞですってば」

「えっ、通子座らないの?」

「先輩が座るんですよ」

「いやいやいや」

 和平は必死に手を横に振って否定する。

 プレイする通子が座らずにどうやって麻雀するのだろうか。


 そんな和平の疑問を読み取ったのか

「先輩が私の代わりに打つんです」

「ええっ!?」

 驚く和平とは対照的に落ち着いた声で

「麻雀部部長ならゲームの麻雀でも上手くできるってことですよ、森先輩」

 と、通子をサポートする純。

 その言葉に勢いを得た通子が

「先輩ならきっとできますよね! 私の成績を上げてくれますよね!」

 と、満面の笑みを和平に見せる。

(いや、すごく可愛いので引き受けたいんですけどね)

 和平にはどうしても二つ返事でゲームができない理由があった。

「俺、そのタイプのゲームするの初めてなんだよね……」

「え……」

 申し訳なさそうに呟く和平に唖然とする通子。

「も、森先輩って、ゲ、ゲームで麻雀をしたことないんですか?」

 慌てながらも尋ねる純。

「やったことはあるんだけどさ……、俺がやったのはゲームキャラとの一対一だったし、それに全部ボタンで選ぶものだったから……」


 負けた相手キャラへのお仕置きを見たさにゲームをした、ことは言わないでおく。

 相手は全て女の子だった、とは口が裂けても金を積まれても言えない。

 そんなことを言ったら麻雀部の女の子に嫌われるに決まっているではないか。

 正二は泣きながら「部長、男ッス!」と、同意してくれるかもしれないが。

 直は頭を叩いた後で「馬鹿だなぁ、お前は」と、言うかもしれないが。


 いろいろ頭の中に浮かんだ妄想をかき消しながら和平は目の前にあるゲームを指差す。

「これは全て画面に直接触れるタイプだろ? それは初めてだから……」

「つまり操作性の問題ってことですか」

「そ、操作性!? そういうのかな…?」

 純の分析に和平はとりあえず同意してみる。

 それを聞いた通子が、すっかりいつもの笑みに戻って

「なるほど、初めてなので躊躇してるってことですね。大丈夫ですよ先輩。私が横についてあげますから、何か分からないことがあったら聞いてください!」

 と、胸を張る。

「大丈夫です。操作さえ慣れれば森先輩ならきっといつもの麻雀ができるはずです」

 と、純は頷くが、あることに気がついて必死に顔を赤くしながら

「あ……、『いつもの麻雀』って、森先輩の麻雀見たこと無いのに生意気言ってごめんなさい。でも……、通子ちゃんが強いと言っている森先輩だから、絶対強いだろうなって……」

 慌てて手を振る。

「純ちゃんの言うとおりですよ、先輩。確かに先輩は強いですが、さらに強くなるには経験が必要です」

(うーん、そこまで言われてもやらない、じゃ漢がすたるよな……)

「そ、それじゃあやってみようかな……」

 通子の求めにやっと応じて席に着く和平。

「先輩、記念すべき初体験ですね。分からないところは私がいろいろ教えてあげますね!」

(いや、それは完全に誤解を招く表現だぞ!!)

 言葉にするといろいろ面倒なので、和平は心の中でツッコミを入れた。

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