友人が「最近の投稿小説つまらない」と言い出した
※フィクションです。リアルにあった話ではありません。
※AI生成作品への愚痴満載なので、AI生成作品が好きな方は閲覧しないことを勧めます。
「なーんかさ、最近の投稿小説さぁ、つまんなくない?」
スマホを片手にムスッとした顔をしているのは高校一年から友人の美優で、社会人になっても付き合いのある貴重な存在。
節目ごとに人間関係が整理されていき、気付けば限られた人としか話さなくなってきたのは仕方の無いことだと思う。
そんな美優は暇な時間に小説投稿サイトを読み漁っては好みのものを探し当て、私に布教していたのだけど、ここ最近はなかなかいいものが見つからないそうだ。
「AI生成ってわかりやすいんだよね。改行が必ず入る。一文が短い。そんでもって、数字が大好き」
「最後のどういうこと?」
「分かりやすく言えば、『五回。私が帳簿に記載した回数。それが全てだった。』みたいなさ。タグ付けてたら避けられるけど、めちゃめちゃ分かりやすいのにつけてないのやめて欲しい」
「へぇ。そんなに分かりやすいのになんで付けないんだろうね」
「知らなーい。まあさ、収益化してるから閲覧数稼いでお金にしたいんじゃない?でもさー、どんなに拙くてもその人がきちんと想いを込めて書いた作品は面白さあるけど、AI生成された作品って矛盾だらけでつまんないんだよね。まあ、人が書いててもその矛盾って発生するけど。たださ、頑張って書いて矛盾があるのと、AIに任せっぱなしだと違うでしょ?」
美優は怒ってる。私としては面白ければいいけれど、と思っていると、ここら辺読んでみなよ、とURLを送られてきた。
仕方なく五作品読んで理解した。
「面白くない……なんだろう……別作者なのに文体は同じだし……いや、キャラに感情無さすぎじゃない? アンドロイドなのかな? ってくらいに淡々としてる……あと、出てきた男の人も同じように機械じみてるし、どこに惚れる要素あるのか分からない……えぇ……」
「最近はあらすじでAI生成かどうか見極めてるよ」
「分かるの?」
「分かるよー。取り敢えず、あらすじ長めで、最後の締めが『なになにな話』か『物語』なら高確率でAI生成だよ」
「へぇ。あらすじも自分で考えないんだ……」
「考えるならまず改行を消すって。ほんとあれムカつくんだよね。読みにくいって言うか、台本だよ、あれ。ト書っていうの? あれみたいでさぁ。作家読みしてて開拓したいけど、ランキングから探そうにもそれがあるからさー。あーーー、腹立つ。カテゴリ分けて欲しい。AI生成カテゴリにして欲しい」
「通報みたいなやつはないの? 報告、なのかな。あからさまなのってできないのかなぁ」
「それが文体ですって言われた時のリスク考えるとねぇ。作品とかの下の方に情報提供ってあるんだけどさぁ。そこから一応出来るんだよ。でもさ、やっぱ躊躇うよね」
「知らない人もいるんじゃないかなぁ」
「わかんない。はー。質が悪くなりすぎだと思うんだよねぇ」
ぐだぐだと私のベッドに転がる美優を眺めながら私は新刊の漫画を手にする。投稿サイトで掲載されていた小説がコミカライズされたものは結構面白い。電子もいいけど、私は紙媒体が好きだから。
「私もなぁー文才があれば自分の書きたい話を書くんだけどなぁ」
「うーん。文才よりも、最後まで書き上げることか出来るかどうかじゃない?」
「何よー。え、経験者?」
「昔ね。下書きは沢山出来たけど、完成したのって少なくてね。連載って段々書いてたのを忘れて矛盾発生しちゃうんだよねぇ」
「あー……おっかけてる連載それあるかも。あー、忘れちゃうってあるかぁ。人間だもんねぇ」
「うん。だから短編書いてたけど、それでもやっぱ書き上げるって大変だよ。オチが決まらないとか。だから、文才よりも何よりも、最後まで書き切る根性があるかどうかじゃないかなぁ」
一時期馬鹿みたいに投稿してたけど、連載は途中で放り投げてるものが多かった。完結してる人ってすごいと思う。
美優は仰向けでうわー、と言いながらまたスマホを覗き込んだ。
「取り敢えず、書いてみるかなぁ」
「楽しみにしてるよ。完成したら教えて、読むから」
「うん。がんばるからさ、アドバイスもよろしく」
「あはは。了解」
AIで書いた作品って作者の癖も何もない単調なものばかりだった。
それよりも、私は拙くても不慣れでも、その人が一番拘っているものを入れた作品の方がいいと思うよ。
美優は満足するまでスマホをいじり、私はのんびりと本を読む。どこかに出掛けるとかしないし、お互いにしたいことしかしない。でもそれでも平気だった。
じゃあなんで会うのって言われたら、愚痴を言いたい時に気が向いたように話すためだし、今日は泊まっていくというからご飯を一緒に食べたりで十分じゃないかなぁ。
今ならわかるけど、高校生や大学生の頃は遊ぶことに一生懸命で、どこかに出かけてお金を使って、それが思い出になると思っていたし、確かにその通り。
だけど、社会人になったら出かけることが億劫で家でダラダラしながら愚痴り合うのがどれだけ貴重な時間なのかがよくわかる。
「ねー、沙弥。ご飯食べたらどーする?」
「あ、配信に追加された中に見逃した映画あるからさ、観ない?観にいこーって言って観にいけなかったやつ」
「え、まじ?観る観るー!それならさ、お菓子買いに行こーよ。絶対に足りないって」
「スーパー行く?」
「うん」
ゴロンと横を向いた美優に笑いながら、さすがにだるだる部屋着はまずいな、とスーパーに行ける程度の服を出しておく。
「はー、やっぱ更新頻度高めの長編が安定かも。でもなー、長編にもAI生成のものがあるんだよねぇ。初っ端から説明無しのわけのわからない組織が出てきて、全く意味の分からないまま仕事してるけど、その仕事なんなの?ってこっちの混乱ガン無視しながら淡々と進んで、訳の分からない婚約破棄が起きてさぁ。はー……主人公くらい感情表現豊かになれよー」
「はは。AIって学習するものでしょう?自分で書いた小説の誤字脱字とかのチェックしてもらったりしながら読み込むことで癖を理解して学習したAIが感情表現を学ぶんだよね。だけど、最初からAI生成する人はその学習してないんじゃないの?」
「ありえるー。自分カラーが無いままだからかぁ。はー。まじクソ。そのくらい書けよ。出来ないなら投稿すんなってんの。設定とか出してもらって自分で書けよぉー。なんなのよ、本当に。はぁー……」
「ストレス溜まってるね」
「そらそうよ。仕事の休憩時間にリセットしよーって読んでるのにストレス溜まるだけだもん。はぁ。閲覧サイト変えようかなぁ」
「投稿サイトってそれぞれ得意分野みたいなのある気がするなぁ」
美優が不満だらけになるのも仕方ないなぁと思う。メンタルリセット失敗はきついもんなぁ。昼休憩に立て直さないと午後からの仕事って辛い時あるし。
まあ、今日は精一杯元気を取り戻してもらおう。
「後十分したらスーパーいくよ」
「りょー」
スマホ画面から目を離さない美優を横目に私は髪の毛のセットをするために洗面所に向かうのだった。




