1.01
どうか、水温32℃くらいの生温い目で読んでやってください。
はじめまして。
あなたにとっての『おはよう』か。
あなたにとっての『こんにちは』か。
あなたにとっての『こんばんは』か。
……………。
ちなみにこっちは『こんにちは』。
――って言っても実感ゼロだけど。
外が見えない室内って、長時間いると時間感覚狂いません?
俺だけ?
外出たら「うわ、もうこんなに暗いの?」みたいな。
まあ。時間的にも季節的にも、まだそんなに外は暗くないだろうけど。
……いつ出られるかも分からないし、その頃にはもう明るくなっているかも知れないけど。
遅ればせながら、自己紹介。
名前は葛平七生。年齢、十七歳の高校三年生。かに座のA型。趣味は、特になし。特技……と呼べるものも、特になし。まあ、どこにでもいるような、普通の男子学生、だと思います。
ところで話は変わりますけど『鬼ごっこ』ってやったこと、あります?
ベーシックの他に『いろ鬼』とか『たか鬼』とか『こおり鬼』とか俺が知っているのはこのくらいだけど。
もっといっぱいあるんだろうけど。
その全てのどれにも俺が今、参加している――いや、参加させられている『鬼ごっこ』は当てはまらないと思う。
鬼が本当に赤い鬼のお面(節分に使うような安物のプラスチックのもの)を着ける『鬼ごっこ』を。
鬼が金属バット片手に走ってくる『鬼ごっこ』を。
まさしく鬼の形相で追ってくる『鬼ごっこ』を。
まさしく鬼気迫る勢いで迫ってくる『鬼ごっこ』を。
こんな『鬼ごっこ』を、俺は知らない。
十八年近く生きてきて、今のところ知らない。
――とりあえず、何故こんなことになっているかを、俺は思い出すべきだろう。