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七話「夏だ! 海だ! トリエルだ!」

「はいCM入りまーす!」


カシュ! ゴクゴクゴク……


「ぷはー! コーラうめえ!!」


「あん? んだこれ」

「次のコーナーの原稿ですー」

「ふーん……キャラ紹介か」


「よくあるアレっすねー」

「みたいだな」


「あ、マイク入りっぱでしたー」

「早く言え!!」


……失礼しました。


コホン。


それでは、ここでこれまでの主要キャラクター達のご紹介です。


【トリエル】

空飛ぶ地獄絵図製造機、あるいは破壊神の少女です。

その正体は人間の転生天使、天使の権能としては「笑顔」を持っていますが、

普段は上手く制御できません。


黒いゴスロリ服のスタイルでハローはシルクハットの中にしまっています。

これが「Hello」とダジャレを言ったとき、ショーの始まりです。


【ピピ】

青い長髪の美少女幽霊です。

白いワンピース姿が特徴的で、幽霊ですが、実体化が可能です。

元々は怨霊でトリエルに浄化され、穏やかな性格を取り戻しました。


生前の記憶はほとんどなく、

「呼び名、もしくはその一部がヒミ、仲間に裏切られ自殺した」

これのみが刻まれています。


【アンポンタン】

アッチ、ポンポ、タンタからなるあなたの宿敵です。

除霊(しまつ)できる日は来るのか!? いや来ない。


【ガブリエル】

通称ガブリエルママ。

トリエルの育ての親で天界序列三位の大天使。

真面目で仕事熱心だけど、超親バカ。


ガブリエルママとしての姿は長い銀髪のお下げ髪、

ベージュのセーター、黒いロングスカートです。

ハローはメガネとして普段は隠し、これを外すと大天使の姿をとります。



――――



トリエル、本名「⬛︎⬛︎エル」は今からはるか昔に誕生した、人間をベースにした転生天使です。

ベースとなった人間の少女「⬛︎⬛︎ ⬛︎⬛︎」は近年非業の死を遂げた少女でした。


神様はそれを哀れみ、その魂を天使の素である天使の種子に変えます。

その時、神様は彼女の魂の願いを知ります。


それは「笑顔」でした。

平和でも愛情でもなく、笑顔そのものが彼女の魂に深く刻まれた願いでした。

その願いは、そのまま彼女⬛︎⬛︎エルの天使の権能となります。


それは破壊や悪意をイタズラを経由して笑顔に絶対的に変えるというものでした。

神様はこれに地上の完全浄化を期待し、あえて彼女を堕天させます。


最初はその力は暴走するだけで破壊を生むだけでした。

しかし、【あなた】と触れる度に、彼女の中の少女⬛︎⬛︎は目を覚ますようになり、

徐々に現れる機会が多くなり、そして花見の席で、

あなたの生命の危機についにその魂が燃え上がります。


それは真の権能「笑顔」が初めて覚醒した瞬間でした。


以降、遊園地でも彼女は目を覚まし、

生前に関わりがあったと思われる女性とも邂逅します。


それはあなたに「トリエルは人間である」という確信を持たせ、

同時に新たな謎を生むのでした。


時を同じくして、地上の地下「魔界」では悪魔竜王サタンが、配下ベルゼブブを使い、

トリエルの抹消を狙っていました。


神話の時代、神に反逆し魔界へ落とされたサタンは、

今度はその子である天使⬛︎⬛︎エルを復讐の対象と定めたのです。


ベルゼブブの襲撃は、一度は天使⬛︎⬛︎エルの再度の覚醒で失敗しますが、

それで諦めるサタンではないでしょう。


天使⬛︎⬛︎エルを巡る混乱は風雲急を告げます。



…………

ミーンミンミンミーン……


という蝉の大合唱が嫌でも聞こえてくる季節、7月。

ジメジメした梅雨が終わったと、そう思った途端、

今度は太陽が文字通りの殺人光線と化して照りつけます。


一昔前までは熱中症などという言葉はなく、

夏は扇風機だけで過ごせたそうですが、

今ではとても信じられません。


さて、あゆむの家も今夏真っ盛り……ですが、

あゆむの家は世間一般よりは夏は快適やもしれませんね。


ビュオォォォォォォ……


こうして風を送っているのは、風の大天使であるガブリエルママです。

「これもトリエルのためです」そう言って彼女は風を起こしてくれます。


あゆむはと言うと、そんな風の権能にあやかりつつ、

ピピの冷たい膝枕で夢心地……


とは中々行かず……


ミミミミミミミミーン!!!


とセミに化けたアンポンタンがあゆむに張り付いて大合唱!!


「やかましいわ!! このアンポンタンがー!!」

あゆむはハエ叩きでアンポンタンを叩きますが……


バチーン!! と当たったのはガブリエルママ。


これにはガブリエルママもカチーン!


「この痴れ者が!!」とあゆむを罵り、風で吹き飛ばすと、

そこをアッチがバットでホームラン!!


壁に大激突!!


最後はポンポのお腹ポンポンと、タンタの尻尾フリフリで今日も連敗記録更新です。


「……いつか、必ず……復讐(海水漬け)じゃ……」


そう言ってガク……とはならず、あゆむはここで閃きます!


ピキーーーン!!


「これだ!! ふはははは!!」

あゆむのバカ笑いにトリエルはポカーン。


「どーしたのー?」

あゆむはトリエルに指を指してこう言います。


「トリエル、海へ行かないか?」


これにはトリエルもバンザイで大喜びです。


「行くー!!」


こうして、海水浴が即決定しました。


そうです。あゆむの作戦とは――

「海風と海水でアンポンタンを

強制成仏(ありがとさよなら)させよう大作戦」だったのです!


「見ておれアンポンタン……目にもの見せてくれるわ……!」


そう心の中で宣言すると、クククとあゆむは笑うのでした。


そう上手くいくかな……? いやない(ネタバレ)


――――


ここは雲の上の小さな楽園「天界」


神様の謁見の間は厳かな雰囲気に包まれており、

しんと静まり返っております。


いつもは中央の椅子に神様は座っておいでなのですが、

今日はいませんね……


(ペラ……ペラ……)


と思ったら、椅子の裏で隠れてムフフな本読んでますね……


「ああ……目の保養になるんじゃあ……」

「それは良かった。ではお仕事を」


…………


ここで神様、動きが止まり、

油の切れたロボットのようになります。

見上げると、そこにはウリエル様が。


既に大剣を構え、赤い長髪は炎で燃え上がり、

その目は完全に虫けらを見る目です。


「は、話せばね……? 話せばわかるとね? 思うのね?」

「話すことなど……ない!!」


…………ブオォォォン!!!


ドギャギャーーーーーン!!!


凄まじい轟音が空に響き渡り、

しばらく謁見の間は消滅したままだったそうです。


「次は八つ裂きにするぞ」


もうどっちが神様だか分かりませんね。


――――


ザザーーン……ザザーーン……


2時間後、バスと電車を乗り継いでたどり着いた先は最寄りの海水浴場。

時刻は朝9時。


さすがに海の日だけあって、朝の段階でも人でごった返し、

太陽が容赦なく照りつけます。


海の家は既に開店。

かき氷や焼きそばといった定番ののぼりが目に留まります。


「暑いな……」


外気はおそらくもう30度はあるでしょう。

砂などはとても素足で歩けるようなものではありません。


けれど、あゆむは夏の暑さにも負けないほどの、

楽しみがありました。


ピピの水着? いいえ、残念ながらピピは水着を着ません。


水着ピピの挿絵は心の目で見てください。

ほら、見えてくるでしょう? 


真っ白い肌に空色の青く美しい長い髪。

麦わら帽子を被り、薄水色の花柄ビキニを着て、

はにかんだ笑顔を見せるピピの挿絵が。


本当に見えたなら、それは超能力かヤバいやつなので、

すぐに病院へ行ってくださいね。


さて、あゆむが楽しみにしているのは……


「やい!! アンポンタン!! 勝負じゃい!!」


これです。


いくら彼らはトリエルの権能で強化されているとはいえ、

所詮は低級霊、太陽や塩には基本弱い。


あゆむにはその確信がありました。


アンポンタン達は心なしか、少しデバフが効いている。

あゆむにはそう見えました。


勝てる。その確信が強くなります。


あゆむは水鉄砲を取り出すとアンポンタンへ向けます。

中はもちろん海水。


「ふ……さらばアンポンタン!! これで仕舞いじゃあーーーー!!!」


アンポンタンはササーッと逃げますが、それは想定内。

あゆむはすかさず追います!


「逃さん!!」


しかし、それはアンポンタンの作戦でした。

アンポンタンが逃げた先にはピピ……そして……


バサァ……!!


「え……」


あゆむの目に映ったのはアンポンタンによって、

スカートめくりをされるピピ。



それは作り出された刹那の至福。


あゆむの脳は視野に全回路を集中させ、

クロック数を何倍にも跳ね上げ、視力を強化。


全神経をもってそこを見つめます。


ふわりと浮かぶ軽やかな布、その中、広がるのは、

未だ誰も足を踏み入れたことがない禁断の聖域。


柔らかな曲線と神秘の谷間。


そう……それはまるで、

秘境を抜け、未発見の財宝にたどり着いたような……


あるいは、

灼熱砂漠の中で命のオアシスを見つけたような……


そんな息を呑むほど美しく、儚くも幸福の世界。



「…………」



自然と開く口、ポロリと落ちる水鉄砲、

とある一部に釘付けになる視線、赤面する顔。


そして……


スコーーーーン!!!!


という爽快な音。


あゆむがピピのワンピースの中に夢中になってる隙に、

アッチがハンマーで強打!!

バターン! と頭からあゆむは灼熱の砂の上に情熱のキッス!!


ブチューーーーン!!


「げふぇ!!??」


砂が口に入り、なんとも言えない不快さがあゆむを襲います。

顔を上げようとしますが、

アンポンタンがペチペチと叩き、思うようにいきません。


「You lose!」とアッチが親指を下げて煽り、

ポンポとタンタがあゆむをわっせわっせと砂に埋めます。


そして……


…………


「スイカ割りしよーぜ!」


「やめいー!!」


「さんせー!!」


「やめろーーー!!」


あゆむはピピに助けを求めるように目配せしますが、

ピピはぷいっと顔を背けます。


「見た罰です!!」


青く長い髪が太陽に照らされて、まるで夏の青空のように輝き、

その白い肌は雲のよう。


彼女の顔は真っ赤に染まってその手はスカートに当てられています。


あゆむは改めてピピの超が付く清純美少女っぷりに見惚れますが、

今は砂の中。


それを楽しむ余裕はなく……


「じゃんちゃちゃじゃちゃんちゃ、

 じゃんちゃちゃじゃちゃんちゃ、

 じゃんちゃちゃじゃちゃんちゃちゃーん!

  じゃんちゃちゃんちゃちゃん!(おー!)

 じゃんちゃちゃんちゃちゃん!(おー!)

  じゃんちゃちゃん、じゃんちゃちゃん、

 じゃっちゃっちゃん!(おー!)

 (かっ飛ばせー! アッチー!)」


アッチがヘルメットとバットで

甲子園の球児のようなスタイルになると、

ポンポとタンタがノリノリで応援。


周りを見るとおばけ達がコーラ売ってますね。


「人を見世物にすんなー!!!!」


あゆむのツッコミは虚しく響き、

アッチはニヤニヤ顔で近づくと……

一本足打法のポーズを取りフルスイングーーーー!!!


スカーーーン!!


ホーーーーーーーーーームラーーーーーーーン!!!!


ドテーーーーーーーン!!


あゆむは派手に吹っ飛ばされ、

連敗記録がまた増えるのでした……


「次こそは、次こそは……除霊(しまつ)してくれる……」


…………


「気が付きましたか?」

気付けばそこはパラソルの中、視界前方では、

トリエルとガブリエルママが元気に砂のお城を作ってます。


トリエルは黄色いフリルの水着で、

頭にはハローを隠すための野球帽を被っています。


ガブリエルママは半袖のブラウス姿。


ちなみに挿絵はありません。

え? 見たいですか?

いいですよ。念を送るのでキャッチして現像してくださいね。


…………


はい。終わりました。

熱いです砂を投げないでくださいやめてください。

おいこらやめろ。


…………


あゆむはピピに膝枕されて、

砂は綺麗に拭き取られています。


ピピの膝はひんやりとしていて、

ピピの風鈴のような可憐な声があゆむの胸を熱くします。


「いてて……」


「また連敗記録が増えましたね」

ピピはそうくすりと笑います。


「笑うなよ……」

「例え彼らになん連敗しても、

 ヒミからすれば、あゆむ様はいつだって優勝です……」


パラソルの中……太陽さえも見えない二人だけの世界。

あゆむはピピに膝枕されたまま、

パラソルの中で甘い一時を静かに過ごします。


しかし、そんなご褒美タイムは突如として中断されます。


そう……破壊神(トリエル)の手によって……


「お城出来たーーー!!」


トリエルはバンザイして大喜び、

隣では親バカ天使(ガブリエルママ)が拍手喝采!


「すごいすごーい!! トリエルちゃんてんさーーーーい!!!」

「えへへっ! ガブリエルママ出来たよー!」


トリエルはガブリエルママにぎゅー!

これにはガブリエルママもぎゅー!


ここだけ切り取れば微笑ましい母娘でしょう。

ここだけ切り取れば……


「それじゃあ最後の仕上げしよー!! みんな笑顔だよー!!」

ここでトリエル、野球帽をぽーーーい!


天使の輪(ハロー)Hello(ハロー)と挨拶し、

さあ……ショータイム(破壊の時間)だ!!



ゴゴゴゴゴゴ…………



トリエルの天使の権能を受けた砂の城は、

見る見るうちに巨大化!


ギュゥゥゥゥンと大きくなって等身大に!!


これには周囲の人ポカーーーーン!!

あゆむはあちゃーーーーーー……


ガブリエルママは拍手パチパチ大喜びー!!


「すごいすごーーーーい!! 

 さっすが、ママのトリエルちゃん!! 大てんさーーーーい!!!」


ここでガブリエルママも黒メガネを外して、空にぽーい!

メガネがハローに変形! ピカー!


ドドドドドドドド……


ガブリエルママの権能も追加で空から光が溢れ、

どこからともなく


「ハァァァァ……アアアアアアアアーーーー」


という歌声が聞こえてきます!

さすが大天使の権能ですね……


そして海がザザーーーーン!! と真っ二つーーーーー!!!


これには観光客さんぎょええええええ!!!

あゆむもぎょええええええ!!!

お魚さんも魚ええええええええ!!!


さらにお城がどんどん白く輝き、

気付くと本物のお城に繁栄しちゃったよーーーー!!


天使がひらひらと待ってきて住み始めちゃいました!!

もう辺りは大騒然!!


カメラパシャパシャ!!


「動画動画!!! 生放送しろーーー!!」

「バズる!! 絶対バズる!!」


「で、でも……これだけなら……」

あゆむは微かな希望を抱きますが、そんなはずもなく……


「3……2……1……」とお城が危険なカウントダウンを開始すると……


「Fire!!!」


ドゴゴゴゴーーーン!! とお城が空を飛び宇宙へしゅっぱーーーーーつ!!


「なんでやねーーん!!」

あゆむは思わずツッコミ!!


お城から天使が手を振るとそれを見送りに来たのか……


デーデン……デーデン……とどこからともなく

危険な音楽が鳴り響き……見覚えのある背びれが……!!


デデデデ デデデデ デデデデ デデデデデ……

デッデー! デッデー!


「サメだーーーーーー!!!」


「にげろーーーーー!!!」


観光客は逃げ出して、周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図!!

けど、ここで終わらないのが破壊神トリエル!!


トリエルとガブリエルママの天使の権能が共鳴して、

サメが空を飛び出したーー!!


「きゃーーーーー!!!」

「サメ映画かい!!!!」


あゆむのツッコミはもはや誰も聞かず、

ガブリエルママの権能の悪ノリで海がスーパートルネーーーーーード!!!!


空は暗くなり、海は竜巻を起こし、サメは空を飛ぶ!!


「終わりじゃああ!!! この世の終わりじゃあああ!!!」

「チェーンソーだ! チェーンソーを持ってこい!」

「ママーーーーー!!」


ここでサメが口から波動砲ーーーーーーー!!!!


ポミーーーーーー!!!!


ギュォォォォオォォン!!!


周囲の家があっという間に消し飛んだー!!


「やめんかーーーー!!!」


ポミーーーー!!!!


ポミーーーーー!!!!


ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!


「あはは!! 海って愉快で楽しいね!!」

「すごいすごーい! トリエルちゃん大天才!!」


「このクソバカ母娘がーーーーーー!!」


ポミーーーーー!!!!


ちゅどどーーーん!!!


ぴゅーーーー…………キラーン。


――――


ガシャン!!


一方天界ではウリエル様が腹部を押さえながら、

水晶玉を叩き割り、後始末の修復をしたそうです。


「あのクソバカ親天使が……!!!!」



――――



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