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逢魔時の邂逅  作者: もちまる
第二章 遭遇と葛藤

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花の街①




「ようこそ、花の街"ローレンバッハ"へ!!」

「旅のお方、安くしてあげるからちょっと見て行って!!」

「本日の宿はお決まりですか?」


 時々お母さんと出掛けていた街"アリスラ"よりも活気に溢れていて圧倒される。花の街、というだけあって家やお店、至る所に花が飾られていて深呼吸をすると肺が花の香りで満たされる。


 初めて訪れる名前しか聞いた事がない街の賑わいに胸が高鳴る。


「アイザックさん!!街中が花だらけで綺麗ですね!!」

「ああ。特に今の時期は秋の花祭りの最中だからな。どこもかしこも花だらけだ」

「花祭り…!!」


 隣町とはいえ私たちのいた街からは数日は歩かなければならない場所にあったため、あんなことが起きなければ来ようとは思わなかっただろう。


 キョロキョロしながら旅に必要な食料や道具を探していると、前から興奮気味に何やら話している男性達が歩いてきた。


「いやあ、あの子めちゃくちゃ綺麗だったな!!ミスローレンバッハと良い勝負だったんじゃねえか?!」

「確かに美人だったけど、俺はミーナの方が美人だと思うなあ」


 ミスローレンバッハ?


「アイザックさん、ミスローレンバッハってご存知ですか?」

「ああ、毎年毎年秋の花祭りの時期に街1番の美人を決めるらしい」

「街1番の美人…」


 先程の男性達の会話の内容から察するに、ミーナという女性が今年のミスローレンバッハということだろう。

 だがその街1番の美人と同じくらい綺麗な人に出会ったと……どちらもどんな女性なのか気になる。


 男性達が歩いてきた方向にそのまま進んでいると、人集りができているのが見えた。


「ん?なんだあれ。大道芸人でもいるのか?」

「大道芸人?!私見てみたいです!アイザックさん行ってみましょう!」


 人集りに近づいていくと、集まっているのは皆んな男性ばかりだった。


 興味津々でひしめき合う男性達の隙間から中を覗いて輪の中心にいた女性を見た瞬間だった。"あの感覚"が全身を襲ったのだ。

 あの日、あの"成り変わり"に出会った時の感覚、危険だと感じると同時に親しみも感じる、あの妙な気味悪さ。


 口を抑えながら思わず後退ると、あれだけ前のめりだった私の様子に違和感を覚えたであろうアイザックさんが心配そうに声をかけてきた。


「おいレイラ、どうした?顔色悪いぞ。そんなやべえもの見たのか?」


 何と言えば良いのか迷い、なかなか答えられないでいると、痺れを切らしたアイザックさんが人集りに近づき輪の中心をひょいと覗き込み、近くにいた男性と一言二言会話をすると戻ってきた。


「さっき歩いてた男達が話してた子みたいだな。別の街から花祭りを見にきたらしいぞ。確かにべっぴんさんだったな」

「……」


 どうしよう、何て説明すべきか…。


 半ばパニック状態になっていると、あの女性を囲っていた男性達の1人が怒鳴り声を上げた。


「もったいぶんじゃねえよ!!女1人で来たってんなら別にいいだろ?!」


 どうやら男性の誘いを女性が断ったため激昂されてしまったようだ。興奮した男性を抑えようと他の男性達が群がったため、輪の中心人物の姿がこの距離からも確認できるようになった。



 やはり……。

 彼女を見た瞬間、あの時の感覚が蘇る。

 もしかしたら彼女の正体は?



 彼女の様子を注意深く確認しようとしたところ、男性はますます興奮したように捲し立てた始めた。


「なんだよ、お前レベルの女ならな、この街に何人もいるんだよ!!ミーナの足元にも及ばないくせに!!」

「なんですって?」


 ゾクッ。

 今あの女性から放たれているのは苛々や不快感といった言葉で片付けられるものではない。


 殺気だ。


 だが男性は怒りで全く気が付いていない様子で更に煽る。


「ミーナの方がお前の何倍も美人なんだよ!!お前程度の女、こっちからお断りだわ!!」


 男性はそう言い捨てると足早に逃げるように去っていった。


 その場に気まずい空気が流れるが、最初に言葉を発したのは例の女性だった。


「ミーナさんって、今年のミスローレンバッハの方ですよね?」

「え?ええ、そうです」


 男性の1人が答えると女性は妖艶な笑みを浮かべた。


「そう、そんなに美人なの……楽しみだわ」

「楽しみ?」

「ええ。そんなに綺麗な方なら会ってみたいわ。どこに行けば会えるかしら?」


 女性の問いかけに、1人の男性が声を上げた。


「ミーナならこれから中央広場で花配りをする予定のはずだ」

「中央広場ね。中央広場はどこなの?」


 女性がそう声をかけると、大勢の男性達が案内を買って出て、そのままぞろぞろと動き出した。


「なんかわからねえけど、すごかったな」

「……アイザックさん、アイザックさん」


 私が小声で話しかけるとアイザックさんはこちらに耳を寄せてくれた。


「アイザックさん、あの女性、恐らく成り代わりです」




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