【朗報】私は、'氷の辺境伯' に溺愛されてるそうです。
隣国との国境──戦となれば最前線となる場所を領地として任されているリノ・クォン辺境伯は、感情の ない '氷のような男' と評されている。
私こと、子爵 令嬢 キーラ・イデが これから結婚する相手は、そんな評判の持ち主だ。
私はと言えば、帝立 学院 魔導 工学の博士 課程を修了し、チェスの腕前は帝国内トップ クラス──なのだが、自慢できるのは それくらいだ。
なまじっか 頭が良い上、オシャレや身だしなみは文句を言われない程度──必要 最低限で済ませ、お世辞にも愛想が良いとは言えない。
いまだに男尊 女卑が まかり通る帝国 社会における私の評判は、生意気な、もとい、 '可愛くない女' である。
ただ、愛想が良くないのも 理由が ない訳ではない──。
ヒトと言うのは 性別に関わらず、なまじ愛想 良くすると──
'( 〃▽〃)あの子、俺に気が あるんだぜ?'
'(*≧∀≦)あの人、私に気があるのよ!'
と勘違いして言い寄る生き物だからだ。
そして、お誘いを断ると──
'(゜Д゜#) お高くとまりやがって!'
'( `Å´) 勘違いさせないでよ!
と逆恨みまで する──。
だから、予防線を張っていた だけなのだ。
そして、辺境伯との婚姻は、世間で言うところの政略 結婚(?)であり、恋愛 感情は不要。私に対する世間の評価が どうあれ、氷の辺境伯が それを気にすることは、けして ない ──。
───
『伯爵さま、共和国 軍の越境を確認しました。』
「分かった。各部隊、迎撃 準備。配置は──
───
ボイスチェンジャーを使い、辺境伯の声で最適な配置を指示し終えると、高速 魔導 通信で帝都への緊急 連絡に取りかかる。
───
'氷の辺境伯' ──その正体は、魔導 人形だ。
お偉い高位 貴族は、誰も最前線になど 行きたがらない。かと言って、無理に行かせて寝返られても困る──。
そして、貴族が怖じ気づいて前線に赴かない などと ウワサが流れれば、革命が起きて王侯貴族が廃された お隣(共和国の前身である公国)の 二の舞い と なりかねない。そこで、魔導 工学の粋を極めた人形の出番と言うわけだ。
全ての感情は生存、もしくは繁殖のため の もの……。
無機物である人形は生も死もなく、また、繁殖の必要もないため、逆立ちしようとも感情を '持てない' 。
なんでも、われわれ人間は1つの体の中に三人が いて、ふだんは鳴りをひそめてる残りの二人──生存 本能と生殖 本能は、いざとなると生存と繁殖をかけて、こちらを押しのけて くるのだそうな。
アドレナリンなど脳内 物質を分泌させて興奮させたり、電気 信号を神経に流して不安を あおったり……と言った具合いだ。
もっとも、『感情』のベースが それら だとしても、愛情が ともなって さえいれば『心』とやらに昇華されるのだろう。
(逆に言えば、『感情』が発生しえない時点で、人形は『心』を持ちえない──)
なんにせよ、魔導 人形は機械であるがゆえ、不測の事態が発生する恐れは常にある。
365日 24時間 体制での保守 点検を必要とすると同時に、兵や領民 相手にボロが出ないよう、フォローも必要だ。
必然、私が つきっきり となる。
(私が '赴任' するまでは、専属の従者が つきっきり と なっていた。)
だが、世間的には──
'氷の辺境伯は妻を溺愛しており、その傍ら から一時も離そうとしない'
と見られている。
……微妙な話だが、高性能な人形ゆえ、単純なアクションなら、命令を入力するだけで動かすことが出来る。
望めば……そう、望みさえすれば、一人で恋愛ごっこ も 夫婦ごっこ も可能だ。
(広い世の中、お金で買った愛人に、人形の '中の人' を務めさせるパターンも あるらしい……)
なんにせよ、(現在のところは──)世間が うまく騙されて くれてる と言うのは、朗報だ。
~The End~
氷の
→コオリノ
→リノ コオ
→○○・○○○
溺愛
→デキアイ
→キアイ デ
→キア・イデ
→○○○・○○
(* ̄∇ ̄*) あ☆ これぇが、ホォントの……
出来合いモン♪
( ´∀`) なんちゃって☆
( *´艸`) ウププ……
───
氷の辺境伯ロボ
《デュラハーン》
( `Å´) ──氷の辺境伯!
貴様のクビ、もらったぁッ!
'ザシュッ!'
共和国 騎兵の振り上げた剣が、辺境伯──旦那さまのクビを斬り飛ばす。
( ;`Д´) はっ、伯爵様がッ!?
( ; ゜Д゜) 討ち取られた?!
( `_ゝ´)皆さん、落ちついて下さい!!!
旦那さまは、まだ負けた訳ではありませんッ!
(ill゜д゜)お……奥様?!
(; `□´)なにを仰って──!?
クビを失った旦那さまの胴体が、騎乗したまま みずからを打ち取った敵騎兵に突撃する。
(´゜З゜`;) なん──だと──ッ?!
敵兵は驚愕に満ちた表情で、おもわず動きを止める。
(イヤーッ!)
Σ(+◇+ ;)グワーッ!?
驚愕から立ち直るヒマを与えず、旦那さまが槍で敵兵を馬から突き落とした。
(゜_゜;)ばっ、バカなッ!?
( ゜ε゜;)あ……ありえねー?!
目撃した敵味方の将兵が おもわず戦いの手を止めると、周囲も異様な空気に気づき、戦場 全体が凍りついていった──。
そして皆が凝視する中、旦那さまの胴体は、騎乗したまま カッポ カッポと闊歩。みずからのクビを槍の穂先で器用に拾い上げると、平然と脇に抱え込んだ。
(-_- )……いいですか、皆さん?
落ちついて聞いてください……。
皆さま方も知りえない 遠い昔、旦那さまの ご先祖様は、デュラハーンとなる呪いをかけられたのです……。
( >Д<;)(んな、バカなぁ~!?)
(; ・3・)(いや、ないだろ?!)
( `□´ ) いやいやいや! おかしいだろ!?
(゜Д゜#) そんな呪い、聞いたこと ねーぞ!
真正面から否定するのは はばかられる味方の心の叫び……。
そして、遠慮なく思いっきり声に出して否定する敵の罵声。
(; `_ゝ´)(仕方ない……。
こうなれば、プランBで──!)
手早く通信機にコマンドを打ち込むと、受信した旦那さまが脇に抱えていた みずからのクビを敵兵の集団めがけて投げつけた。
(イヤーッ!)
'ドガァーン!!!'
( >Д<;) ( >Д<;) ( >Д<;)
「「「グワーッ!!?」」」
( `Å´)詳しいことは、あとで説明します!
今は、この機を逃がさず、敵を討つのです!
( ;`Д´)りょ……了解!
(; `_ゝ´)ぜ、全 部隊! 進めぇーッ!
敵も味方も浮き足立ち、戦場が今や ドンチャン騒ぎ──もとい、混沌と化したのを確認すると、私は急いで次の仕事に取りかかった。
( ´∀`)旦那さまー!
新しい頭ですよ~ッ!
こんなことも あろうかと、大量に持参していた爆弾──もとい、頭を次々に旦那さまにパス。
(イヤーッ!)(イヤーッ!)(イヤーッ!)
'ズガァーン!!!'
'ドゴォーン!!!'
'ドガァーン!!!'
(*◇*;) (*◇*;) (*◇*;) 「「「グワーッ!!?」」」
(;TДT) (;TДT) (;TДT) 「「「グワーッ!!?」」」
(°○゜;) (°○゜;) (°○゜;) 「「「グワーッ!!?」」」'
そうして、(結果的にだが、)その日の防衛戦は、勝利に終わった。