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46.幕間:魔女と推し語り②

 僕は自室を出て隣のバックヤード……つまり迷宮騎士団の休憩室の扉を叩いた。この時間帯はちょうど交代した後だからきっといるはずだ。


「ハジメ殿か? 何か用だろうか?」


「夜分にすみません、アイリスさん」


 僕の予想通り、出てきたのはアイリスさんだ。


「こっちの休憩室にココさんを泊まらせることは出来ますか?」


「おや、ココ殿がこの時間まで来ていたのか。もちろん構わないぞ」


「ありがとうございます。ココさん、話通りましたよ……ってどうしたんですか?」


 後ろを振り返ったらココさんが固まっていた。


「…………はぁ? えっ? なんでアイリスがいるの!? まさかここに住んでるの!??」


「いや、私はこの店の警備中だ。今は仮眠を取るために休憩室に来たところだ」


「……ははっ。そう、そうだったわね……。ここ、迷宮騎士が24時間駐在していたわね…………」


 ココさんはアイリスさんの話を聞いて納得すると、何故か僕の方を睨んできた。


「ハジメ! こういうことはちゃんと言いなさい! あたし勘違いしちゃったじゃない!!」


「えっ、ごめんなさい? というか勘違いって何を……」


「あ、あたしがあんたの……その、部屋に泊ま……ああもうなんでもないわ!!」


 何故かまた怒らせてしまったらしい。うーん、何がいけなかったんだ?

 アイリスさんに話を通して泊まる場所の確保ができることを言わなかったのはダメだったらしいけど。ああ、それで不安にさせてしまったんだね。

 さすがに僕の部屋に女の子を泊めるわけにはいかないから、きちんと配慮したつもりだったんだけど、足りなかったようだ。


「お詫びと言ってはなんですが、明日朝食を用意しますから……」


「い、いいわよ。そんなの!!」


「そうですか……」


 相当怒らせてしまったなぁ。どうしよう……。


「あ、アイリスさんは明日の朝食どうします?」


「またハジメ殿のおにぎりが食べたいが良いだろうか?」


「いいですよ。味噌汁は白味噌にしますね」


「はぁ? ちょっとなに?」


 ……また『はぁ?』って言われたんだけど!? どうしたの、ココさん!?


「ハ〜ジ〜メ〜、これはどういうことよ?」


「えっ、どうって言われても……朝食の希望を聞いただけですけど……!?」


 本当になんなんだ! なんで僕が問い詰められているの!?


「なんだココ殿。お前もハジメ殿のおにぎりが食べたいのか?」


「いやまさか。そんなアイリスさんじゃないんだから……」


「………………くっ、食べたいわ!」


「本当にそうなのっ!? えっ、さっき朝食要らないって言ったのに!?」


「気が変わったのよ! あたしも食べるわ!!」


 よく分からないけど、ココさんも一緒に朝食を食べることになった。

 ……とりあえず、明日の朝食はアレでいいかな。


 ――翌日の朝。


 用意した朝食は至ってシンプル。

 白味噌のお味噌汁とご飯。そして、焼き鮭。


 焼き鮭はコンビニで売っているものだ。一人分の鮭がパックに入ったもので、電子レンジでチンすれば簡単に焼き鮭が食べられる。忙しい朝にも手軽に用意できる一品だ。


「これって、一巻の二話でマイが食べていた朝食じゃない!」


「ええ、そうですよ!」


 さすがココさん。僕がどうしてこの朝食にしたのか分かったようだ。

 僕らにとっては当たり前の朝食セットでも、ココさんからしたらマンガでしか見たことがない朝食だ。僕らが異世界の料理に憧れるのと同じだね。


「すごくおいしいわ! あたしも再現してみたけどそれよりおいしい……!」


 再現はすでにしていたようだ。まぁコンビニにはインスタントの味噌汁やご飯もあるから再現は手軽にできる。違うのは味噌汁は僕が作ったもので、ご飯は炊き立てというところかな。


 昨日怒っていたのは嘘のようにココさんは上機嫌に朝食を食べてくれた。


「そうだとも、ハジメ殿の料理はおいしいんだ」


 うんうんと頷きながら、アイリスさんは鮭おにぎりを食べていた。アイリスさんにはおにぎりにして出したんだよね。もちろん彼女のお腹を満たすために、大きいおにぎりだ。


「料理と言っても、今回そこまで手は込んでないですけどね」


「いやいや、このおにぎりの絶妙なにぎり具合は素晴らしいぞ? 私がやるとカチコチになってしまってな……」


「それはアイリスさんが力を入れ過ぎているだけですよ……」


 ……この前アイリスさんに、味噌汁の作り方とかご飯の炊き方とか教えてみたんだけど、一応はできたけどだいぶ危うかった……。なんで豆腐切るだけでまな板まで切っちゃうかな……?


 一緒に作ってみて分かった。料理できないんじゃない、やらせたら危険な人だってことに。


 ご飯だけは安全に炊けそうだったけど、肝心のおにぎりはまるで鉄のように硬い何かになっていたし……。


「ん? なんですか、ココさん?」


「……あんたたちって、やっぱり一緒に住んでるわけじゃないのよね?」


「そんなわけないですよ」


「そうだぞ。私も仕事でここに居るからな」


 アイリスさん以外の騎士だってここによく泊まるからね。彼らともたまに一緒に食事をすることだってある。


 この前はハートンさんと一緒に食べたくらいだ。ハートンさんも大食いで、一人でかなりの量を食べていたよ。


「……そう、ならいいのよ」


 そのことを話したら、何故か安心したような表情をしていた。


 最近の若い子……いや、異世界の若い子ってよく分からないなぁ。

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