38.迷宮ドライブRTA①
そんなわけで僕とアイリスさんは討伐隊が待つ十層(正確には九層だけど)に向けて、移動販売車を走らせた。
「今なんかひいちゃったんですけどっ!?」
「安心しろ、ただのゴブリンだ」
突然飛び出してくる鹿やイノシシみたいに、ゴブリンをひいてしまったりした。ちなみに車体には店舗にもあった結界が張られているみたいで傷一つ付かなかったよ。
第二層は第一層と同じく森林地帯だった。ただ第一層よりも広大な階層だったから、踏破に一日かかった。
車内では寝るのは少し難しいので、寝る時は外にテントを張って寝た。
車は軽トラだけど移動販売車だから、荷台部分は改造されて商品棚にされている。
だからテントの運び方は〈魔法鞄〉に収納して持ち歩いた。テントも〈魔法鞄〉もクローバー商会を通じて購入したんだよね。ロウシェさんが用意してくれたよ。
収納量が大きめのサイズを買ったから、150万ギールだった。ちょっと高い買い物したけど、特に貯金の使い道がないから奮発して買っちゃった。
……まぁロウシェさんの口車に乗せられた感じもするけど。やっぱりロウシェさんは商売上手だ。
僕が寝ている間はアイリスさんが見張りをしてくれた。アイリスさんは日中、僕が運転している間、助手席で睡眠を取るというサイクルがいつの間にか出来上がっていた。
寝づらくないのかと聞いたら、立って寝るより寝やすいらしい。……騎士団の仕事には、これより過酷な時があるんだろなぁ。
第二層を走り抜け、第三層に到着する。第三層はなんと草原と丘陵が広がっていた。
久々に何もない青空を見たかもしれない。
視界を遮り、周囲に並び立つ木々がなく、清々しい開放感溢れる景色を見た時は、思わず車を止めて、見入ってしまった。
草原に作られた道に沿って車を走らせた。……たまに見かけた探索者には二度見されたけど。休憩中のみだけど、彼ら相手にも商売はした。
「第三層は主に野菜や食肉になるモンスターが生息していてな。これら迷宮産の食材採取を専門にする探索者も多いんだ」
「へぇ〜そうなんですね」
……草原に浮かぶトマトや走る大根を見た時は目を疑ったけど。あれもモンスターなんだってさ。
ちなみにトマトなら食べてみたけどおいしかったよ。
コンビニの商品としても売っている食パンとベーコン。レタスはサラダ用のものが小袋売りされているのでそれを。そしてアイリスさんが狩ってくれた草原トマトの身を挟めば、BLTサンドができた。
BLTサンドは普通にコンビニ商品としても売っているけど、こうやって現地の食材を使って作るのも悪くなかった。アイリスさんもおいしいって言ってくれた。
……でもやっぱりおにぎりには敵わないみたいだった。今度おにぎらずでも作ろうかな? それなら満足してくれるかもしれない。
その軽食の後は牛型のモンスターの群れに襲われかけて大変だったけどね。なんとか軽トラの速度で振り切った。
第四層はまた森になったんだけど……土砂降りの雨が常に降る階層だった。
傘やレインコートの売れ行きがそこそこあったけど、もしかしてこの階層用だったのかな? 今度店のPOP広告にも四層攻略にオススメって書いておこう。
「この階層は雨で衣服が濡れるからそれで体力が持っていかれたりするし、雨で視界が見え辛いなどそこそこに厄介な階層だったんだが……」
そんなの関係ないと言うかのように、ただ今雨の中を走行中。
車なら雨の日でも濡れることなく移動ができる。フロントガラスに打ち付ける雨はワイパーが攫っていき、ヘッドライトが少し薄暗い道を照らし出していた。
「なぁ、やっぱり普通ではないよな?」
「いや、普通ですよ」
カエル型モンスターの群れの横を突っ走りながら僕は答える。このカエルは猛毒を持っているから触ったら危ないんだって。車内にいる限りは安全だから絶対に出ないけど。
そのまま第四層を突破して第五層に着いた。
第五層は他のフロアと比べて大きくないけど、綺麗な湖が広がる場所だった。
ここにはかつてフロアボスと呼ばれる守護者が存在し、探索者たちの行手を阻んでいた。
今はその守護者は倒され、フロア全体は安全地帯となっている。
だから湖のほとりには小さな街が出来ていた。ここは探索者の為の中継拠点にもなっていて、宿屋や道具屋など一通りの店が揃っていた。
業務提携しているクローバー商会の店もあったから覗いてみたよ。第一層店から仕入れたらしいおにぎりや弁当が並んでいた。
第一層店のほうは従業員として入っているクローバー商会の販売員たちに任せている。
僕は現場にはいないけど、ノートパソコンから監視カメラを通じて店の状況は見られるし、商品補充もできるから問題はない。
そうそう、第五層には地上と繋がる転移ポータルがある。ポータルは第五層に到達した人しか使用できない。僕は今第五層に到達したから、やっと使える権利を得たわけだ。
第五層の宿屋で一泊して疲れをとった。久々のベッドの感触が最高だったよ。




