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35.実は移動できるんです

 あれから討伐隊が編成された。討伐隊は三十人になったらしい。その中には【ジャック・ライダー】はもちろんのこと、ココさんも参加したそうだ。


『八層九層は無理だったけど、今回こそは七層の時のようにあたしが踏破まで導いてあげるわ!』


 出発前に週刊誌を抱えながら、自信満々にココはそう話していた。


 討伐隊はきっと無事にフロアボスを倒して十層をクリアする……そう信じながら今日もコンビニを営業していたのだけど……。


「……戦況が難しいんですか?」


「うん、物資を届けた時そんな感じだったにゃ」


 店に来たロウシェさんが最前線の状況を話してくれた。クローバー商会は討伐隊からの依頼で、必要な物資を九層にある十層に続く転移陣前まで届けている。今日コンビニに来たのも、必要なコンビニ商品を取りに来ていた。


「必要な物資は届いているのにか?」


「みんなおにぎりが食べたいだとか、弁当やサンドイッチが食べたいだの言ってました〜。レトルトやカップ麺よりそっちの方が力が付くらしくて」


「……確かにその通りだな」


 アイリスさんが納得したように頷いていた。実感が伴った頷きだった。

 不思議なことに、保存食よりも、消費期限が短い食べ物を食べた時が一番調子がいいらしいんだ。

 ゲームでいうところの、バフのかかる倍率が高いのかな? まぁよくは分からないけど。


 ただ、十層までおにぎりなどを持っていくのは難しい。転移ポータルがある五層から、十層まで出来るだけ速く行っても三週間は掛かる道のりだ。これでも案内図などで短縮した方らしい。

 ロウシェさんは足が速いから二週間で行けるらしいけど、それでも先におにぎりたちの消費期限が切れる。

 消費期限が切れた商品は廃棄処分されるのか、問答無用で消失してしまう。一日くらい大丈夫なんて手も使えない。食中毒になる心配がないのはいいけど……。


 〈転移石〉を使えばいい話だけどアレは実に貴重品だし、高価なものだ。この前一つ買ってみたんだけど、一個三十万ギールもした。

 物資を届けるために往復すれば六十万ギール。それは流石に赤字になるとロウシェさんは渋い顔をして答えてくれた。

 討伐隊もそこまで出せないみたいで、この方法は諦めたみたいだ。


「〈時忘れの箱〉みたいに入れた物の時間が経たない神器があれば話は別なんですけどね」


「このコンビニも同じような力を持っていたな?」


 確かにこの店の商品たちは、未開封な物に関しては消費期限や賞味期限が経過しない。


「いっそのこと、このコンビニが最前線まで行ければいいのにな」


「本当ですね〜」


 そんなことは――


「――出来ないこともないですよ」


「「……えっ!?」」


 二人は驚きながら、僕の方を見た。


「本当にできるかはまだ分かりませんが……あの、一層から十層までって通しで行ったらどれくらいかかります?」


「えっとパーティにもよるけど三ヶ月くらい? それ以上は掛かるかも?」


「それって歩きの場合ですよね。もっと速い速度……馬くらいの速度で、あと道中のモンスターも全部無視した場合はどうなりますか?」


「え、それなら、もっと速いかな? 一ヶ月?」


「なるほど……じゃあ道中、馬車が通れるほどの道はありますか?」


「……あるな。無くても切り崩せばなんとかなるが……」


 ……ならなんとかなりそうか。

 僕はバックヤードに向かって、パソコンを操作した。


「一体何をなさるつもりですか、アキナイ様ー?」


「馬車では行けないぞ? 馬がモンスターに狙われるからな。馬だって恐怖で動いてくれない」


「行けたとして馬車じゃ遅いですよ。だからもっと速い物で行きます」


 SPは……現在80万SPか。この前増築に使ったとはいえまた増えたな。あと少し経てば二号店も建てられるらしいけど、そこまで待っていられない。

 僕は30万SPを消費してあるものを引き換えた。

 パソコンを離れてバックヤードから店の裏手に続く扉を開けて外に出た。

 そこには僕が想像した通りの物が、ちょうど転移の光と共に届けられていた。相変わらず、速達だ。


「ハジメ殿、あれはなんだ?」


「あれは移動販売車ですよ」


 過疎地域や高齢者のため、場合によっては被災地に、軽トラに商品を載せて直接お届けする……移動式コンビニ!

 そう! コンビニは店舗だけじゃない。移動販売だってしているのだ!

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