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33.フロアボスがいるらしい

「アキー! 九層クリアしてきたぞー!」


「え、もうですか!? 早くないですか!?」


 除草剤を渡してから一週間後、コンビニに入ってくるなり実に嬉しそうなデイヴィッドさんがそう報告してくれた。


「ああ、除草剤が効果てきめんでな!」


「そうそう。植物を完全に殺すまでには至らなかったけど、明らかにしなしなって弱くなってさ。戦い易かったんだぜ」


「ウフフ、まるで聖魔法をかけた時のゾンビみたいだったわよ〜」


 ベルナールさんとデリカさんの言葉が続き、カイオスさんが頷いていた。


「すごいですね。八層に続いて、九層までクリアしてしまうなんて」


「これもこのコンビニとアキのおかげだ! 本当にありがとう!」


 またデイヴィッドさんにお礼を言われながら、握手をされた。

 スマストの店舗と共に異世界に来て三ヶ月以上が経過していた。その間に三年も攻略が止まっていた八層が攻略され、さらには九層も攻略されたとなれば、確かにこの店のおかげなのかもしれない。


 ただ凄いのはこの店の商品であって、僕は説明をして売っただけだ。あとは普通にデイヴィッドさんたちが凄いだけかも。


 まぁでも、今回はこのお礼は素直に受け取っておこう。ちょっとくらいは僕も役に立ったと思うからね。


「すぐに十層に向かわれるのですか?」


「いや、十層にはフロアボスが居たからすぐに引き返してきたよ」


「……フロアボス?」


「階層を渡る転移陣を守る、非常に強いモンスターのことだ。守護者とも呼ばれている。一般的に五層ごとにフロアボスがいるんだ」


 ああ、ゲームでもよくある中ボスみたいなやつか。

 聞けばロンダール迷宮の第五層にもフロアボスがいたらしい。フロアボスは基本的に一度倒されると復活はしない。倒した後、その階層は安全地帯となり、地上との直通の転移ポータルまで開かれるそうだ。


「基本的にフロアボスは少人数で倒せるものじゃない。だから大規模な討伐隊を組んで行くことになる」


 五層をクリアした時も同じように討伐隊を組んでいたそうだ。ちなみに五層がクリアされたのは今から十三年前なんだってさ。


「あの時俺たちはまだ探索者でもなんでもなく、一層で遊んでいるだけの子供だったな」


 ……やっぱり、地元の子供が一層で遊ぶのは常識なんだ……。迷宮なんだから危ないって思うのは僕だけなのかな?


「そうそう! 懐かしいなー。あの時の討伐隊に入ってた探索者たちに憧れたんだっけ。……気付いたらその探索者たちの殆どは居なくなってたけどさ」


「……当時の探索者さんたちはもう居ないんですか?」


「一応探索者としているけど、このロンダールには居ないって感じだよ、アキくん。段々と厳しくなる階層に限界を感じて、他の迷宮に行っちゃった探索者も多くてね」


「この三年でだいぶ減っちゃったわよね。そうね、まだ残っているのは【白影】くらいかしら?」


「【白影】か。彼ももう何年も姿を見せていないから、ロンダールを離れたという噂があったが……」


 二つ名持ちの探索者でも迷宮を離れて行ってしまうくらいには、このロンダール迷宮は難しいらしい。


「ま、今度は俺たちが伝説を刻む番ってところだよ」


「ああ、そうだな」


 ベルナールさんの言葉に、デイヴィッドさんたちが頷く。なんだか楽しそうだ。子供の頃に憧れた存在になろうとしているのだから、当然か。


 いいな、夢があるって。僕は特になかったかな? なんとなくでこれまでを生きてきたような人間だ。

 ……強いて言えば、人のためになるようなことがしたかったんだと思う。

 母親は僕を置いてどこかに行ったから、婆ちゃんには迷惑をかけた。だから人に迷惑をかけることなく、逆に誰かの役に立ちたかった。

 そう思えば、今のこの状況は少し夢が叶っているのかもしれない。


「それに先駆けてだな……なぁ、アキ。ハートンはいるか?」


「ハートンさんですか?」


 僕は少し迷った。ハートンさんからは彼らが来ても自分の存在は言わないように口止めされていたから。

 だから、デイヴィッドさんたちはハートンさんと、このコンビニ内で出会ったことはないんだけど……。まぁ、騎士団に所属しているのは把握しているだろうし、ここにも勤務しているかもしれないって思うよね。


「……ええ、居ますよ。ちょうどバックヤードでアイリスさんと業務の引き継ぎをしています」


 僕は悩んだ末にハートンさんがいることを伝えた。


「そうか、やっぱりいたか」


「……バックヤードに案内しましょうか?」


「いいのか?」


「ええ、大丈夫ですよ」


 なんたってオーナーは僕だからね!

 僕はデイヴィッドさんたちを、バックヤードの騎士団の休憩室に通した。

 実はバックヤードはあれから拡張して、騎士団用の休憩室を増設したのだ。ちなみに増設した分は外からだと見えなくて分からない。外から見た店舗の大きさは変わっていないのだ。


 ちょっとした廊下を歩いて、僕たちは騎士団の休憩室に入った。ノックをして許可を得てから扉を開けた。


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