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32.色々戻ってきた

「ハジメ殿、戻ったぞ!」


「相変わらず賑わってるわね、ハジメ」


「アイリスさん、ココさん、いらっしゃいませ。大遠征から帰ってきたんですね!」


 入店音が響いたので入口を見たらアイリスさんとココさんが来ていた。

 アイリスさんたちが大遠征に出発したのが五日前のこと。あの八層を攻略してきた帰りらしい。着ている鎧や衣服が薄汚れていた。

 変わっていることはそれくらいで怪我もなさそうだ。無事に帰って来てくれたことがまず嬉しかった。


「どうでしたか、大遠征は?」


「ああ、無事に踏破して帰ってきたところだ」


「あたしも参加したのよ、失敗するわけないわ!」


 良かった。ちゃんと八層もクリア出来たみたいだ。

 予定では〈転移石〉を使っても一週間掛かると言っていたはずだけど、二日も早いとは。


「よぉ、アキ!」


「あ、デイヴィッドさんたちじゃないですか!」


 さらにアイリスさんたちに続いてあの【ジャックライダー】まで来店した。彼らは確か八層攻略後、すぐ九層攻略に向かっていたはずだけど……。


「もしかして、もう九層を攻略したんですか?」


「そうだ……と、言いたいところだが、あいにくと攻略が難しくてな。疲れも溜まったから、一旦攻略を諦めて帰ってきたところだ」


「無理して全滅なんて良くないからね〜」


 デイヴィッドさん後に続いて、ベルナールさんがそう言った。八層の攻略に三年も費やしていたのだ。九層も一筋縄では行かないらしい。


「それで、久々に地上まで戻ってきたから、ここの弁当が食べたくなって来たんだ」


「レトルトとかカップ麺は確かに美味しいのだけど、やっぱりサンドイッチとか恋しくなっちゃったのよ〜」


「俺はカップ麺とかでもいいんだけどな〜」


「もうベルちゃんったら、本当にカップ麺が好きね?」


 デリカさんの言葉に寡黙のカイオスさんが頷いていた。迷宮から帰って来て早々に食べたいものとして、うちの商品を選んでくれるのはありがたい限りだ。


「分かるぞ、私もおにぎりが食べたくて食べたくて仕方なかったんだ!!」


「あたしもまぁ、そんなところよ」


 ……どうやらアイリスさんたちも大遠征中にそんなことを思っていたらしい。アイリスさんのはおにぎり中毒な気がするんだけど、気のせいかな?


 おにぎりや弁当と言った消費期限が短い食品は迷宮の奥地まで消費期限が持たないから、食べたくても食べられないんだよね。

 ちなみにココさんは今週号目当てだろうなぁ。週刊誌も入荷するのは店舗だけだから迷宮の奥地まで届けられない。


「皆さんうちの店の商品を贔屓にしてくださってありがとうございます」


 コンビニの商品を好きだと言ってくれて嬉しい。こっちとしても店をきちんと管理して、接客を続けた甲斐がある。


「ところでアキ、少し相談したいのだが……」


「なんでしょうか?」


「九層は植物型のモンスターが多く出たんだ。殺虫スプレーのような、何か対策に使えそうな物はないだろうか?」


「と言われましてもそこまで便利なものは……あぁでも植物型のモンスターですか……」


 僕はちょっと思い当たるものがあったのでバックヤードに戻り、パソコンを操作して倉庫からある商品を取り出した。


「除草剤がもしかしたら効くかもしれないですね」


 元いた世界では、少し田舎な立地にこの店舗はあったから、たまに除草剤を買いにくるお客様がいたんだよね。店側でも普通に雑草処理をするために使うこともあった。


「うわっ、マジで出てきた! くそっ賭けは負けかよっ!」


「残念だったわねー、ベルちゃんー」


 ……何やら賭けの対象にされていたらしい。


「とにかくありがとう、アキ! さすがスマスト、万能雑貨店だ!」


「いえいえ、たまたまこの店では取り扱っていただけですよ」


 店舗によって品揃えは変わるからね。まぁロンダール迷宮第一層店は発注してすぐに届くから、ない商品というのはほぼないだろう。コンビニで扱える商品に限るけど。

 ……この前のロウシェさんが欲しがったアイスのように発注不可な場合もあるけどね。


「そうそう、ハジメ。私もあんたに聞きたかったことがあるのよ」


「なんですか、ココさん?」


「フジカの魔法を再現したいのだけど、今の魔法で扱える雷の色が濃すぎるのよね。藤色にならないのよ。どうにかできないかしら……?」


「ま、魔法の色ですか……。さすがに僕は魔法が使えないのでよくわからないのですが……」


「まぁそうよね……」


「でも、雷なんですよね? 雷の色って確か空気中に含まれる窒素の放電色が紫だから、紫に見えるそうです。だから窒素の量を調整すれば色を変えることもできるかもしれないですね?」


 以前天気予報を見ていた時に、豆知識としてキャスターが言っていたことを思い出した。


「あんた……天才!? 本当に魔法使えないの??」


「いえ、常識的なことを言っただけです」


 それどころか僕はそういうの詳しい方じゃないんだけどなぁ……。たまたま知っていただけだ。


「あんたに聞いてみてよかったわ! これでなんとかできそうよ!」


 なんにせよ、ココさんが喜んでくれてよかった。

 にしても推しの魔法を再現しようとしていたなんてすごいな……。元いた世界にも推しの武器とか再現している人は見たことあるけど……魔法そのものを再現するなんてことは難しかった。

 さすが異世界人の魔法使いだ……。やることが違う。完成したらぜひ見せてもらおう。


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