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30.新商品サイクル

「ない! ない! どこにもないにゃー!!」


 今日も通常通りに営業していたら、店内にそんな悲鳴が響き渡った。


「どうしたんですか、ロウシェさん?」


 アイスコーナーの前にはあの白猫少女のロウシェさんがいた。カップアイスやアイスバーなど様々なアイスが並んでいるその場所を、ロウシェさんは覗き込むようにして、何かを探していた。


「アキナイ様ー! ここにあったティラミスアイスバーはどこに行きましたか!」


「あぁ、申し訳ありません。ティラミスアイスバーなら販売終了しました」


「販売……終了……?」


「はい、あれは週替わりの商品でしたので」


 コンビニには毎週のように新商品が発売される。その数は数十種類にも及ぶ。おにぎりや弁当から、スイーツ、そしてアイスなど並んでいる商品のラインナップは週替わりでどんどんと変わっていく。

 だからそれらの新商品を求めて次に来た時には、もう店頭にないなんて商品もざらにある。

 特にロウシェさんが欲しがっているティラミスアイスバーは、スマストのプライベート商品である。

 定番商品でもなければ、他社の商品でもないとなると、販売終了とした時点で新たに発注もできない。まさに一期一会だ。


「そ、そんな……」


 ロウシェさんがショックを受けたように項垂れた。


「あれ……おいしかったのに……にゃんで……」


 泣いている姿が等身大の少女すぎる。仕方ないこととはいえ、申し訳ない……。


 ちなみにティラミスにはココアが含まれているから、普通なら猫には毒になりえるんだけど、最初に買う時に確認したら大丈夫だと言われた。

 なんでもロウシェさんは人間とのハーフ獣人らしいから大丈夫だという。確かに彼女は猫耳と尻尾しかないとは思っていたけど、そうだったんだ。


「えっと元気出してください……あのよかったら、今週発売のいちごミルクバーを食べてください……」


「いちごミルク……!」


 興味を持ったのか尻尾を揺らしながら、ロウシェさんが立ち上がり、僕が手にしたアイスバーを見る。


「実はさっきから気になっていたのですよね……!」


 ロウシェさんは前回のソフトクリームといい、アイスには目がない様子だ。

 ティラミスアイスバーの販売終了はショックだっただろうけど、新しい商品であるいちごミルクバーに興味が移っていた。


「ではアキナイ様、このいちごミルクバーを在庫あるだけください!」


「……買い占め禁止です! 十個までにしてください!」


 なんでここの人たちは買い占めがデフォルトなんですか!!


「そこをなんとか! この商品もいつか消えてしまうなら、消える前に買わせてくださいにゃ〜!」


「ダメです。この店のルールです! というか、そんな大量に買ってどうするんですか、溶けますよ?」


「凍結箱の魔導具くらいあるに決まっていますよ?」


 なるほど……冷凍庫代わりになる魔導具があるってことですか。たぶんそれも神器なんだろうなぁ。


「そうですか。しかし、それでもダメです。クローバー商会の方の買い占めを許したら、他のお客様の方々に示しがつきませんよ」


「にゃうぅ〜〜〜」


 悔しそうに唸った後に、諦めたようにロウシェさんが頷いてくれた。……彼女の『にゃ』はビジネス『にゃ』な時もあれば、感情的になる時にも出やすいらしい。


 ロウシェさんは渋々といったようにいちごミルクバーを十個買っていった。ちなみに一日あたりの制限なので、当然明日も来るらしい。


「まさかとは思いますが……猫缶や猫チュールもいつか店頭から消えてしまうのでは……?」


「安心してください、その商品は消えませんよ」


「それは良かった……あの猫缶と猫チュールまでなくなったらどうしようかと思いましたにゃ……」


 青い顔をしながらプルプル震えていたロウシェさんにそう言えば、安心したように尻尾を揺らしていた。

 さすがに店頭から猫缶や猫チュールが消える日はないと思うよ……。


 ちなみにドッグフードなどの売れ行きもいい。当然買っているのは犬の獣人さんだ。

 中にはウサギの獣人や鳥の獣人も居て、彼らのために新たに入荷したペット餌……じゃない獣人用食品もある。

 かなり充実した獣人用食品コーナーを見た時は、ペットショップかな? とつい思ってしまったのはここだけの秘密。

 このコンビニに来るお客様の需要に応えた結果ですからねっ!


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― 新着の感想 ―
ネコって結構冷たいもの好きですよねー。 うちではちゅー〇を加水した物を製氷皿で凍らせてスタンバイ。 暑い日や猫がグテッとしてる時におやつに1個あげてます。 ああ、冷蔵庫の前で鳴いて要求する時もですがw
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