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27.コンビニのおかげらしい

「あれ、デイヴィッドさんじゃないですか、いらっしゃいませ〜」


 三週間ぶりくらいにデイヴィッドさんがコンビニに来てくれた。前回は確か第八層攻略に向けて出発して行ったと思うけど……それにしてはずいぶんと帰りが早いなぁ。しかも一人で来店だ。


「アキ、聞いてくれ! 第八層攻略が出来たんだ! 俺たちはついに第九層に到達できたんだよ!」


「えっ!! 本当ですか! 凄いじゃないですか!」


 確か第八層の攻略って三年は詰まっていたって話だったはず……攻略には一ヶ月以上かかるか、もしくはまた無理かもしれないなんて言われていたのに。


「九層に到達した奴がいるのか!?」


「あいつはジャックライダーのリーダーか!」


「くそっ、先越された……!」


 店内に来ていた他の探索者たちが騒ぎ出す。やっぱり、彼らにとっても驚くことだったらしい。


「これも全部、アキとこのコンビニのおかげなんだ!」


「えっ……どういうことですか?」


 デイヴィッドさんが僕の手を掴んだ。興奮しすぎでちょっと握る力が強いよ……!


「なんと言ってもブラッドイーター対策に蚊取り線香が効いたおかげで俺たちは血も魔力も奪われずに進めたんだ! 道中に現れる植物モンスターの花粉や毒蛾の鱗粉はマスクで防げただろ? あとは種類の豊富な食料で道中しっかりとした食事をして栄養を損なわなかった。心なしかいつもより調子が良かったよ。さらに、後半に出てきた蝶はこっちを睡眠状態にする力があったんだが、これも缶コーヒーの力でどうにかなったんだ。まぁ、最終的にエナジードリンクの力に頼ったんだけど……あれは凄いな? 不眠不休で戦う羽目になった時はどうなることかと思ったんだが、エナジードリンクで乗り越えることができたよ」


「……そ、そうなんですか」


 興奮した状態で一気に八層のことをデイヴィッドさんが語ってくれた。

 正直、僕にはちょっとよく分からないこともあるけど、コンビニで買った商品が役に立ってくれたようだ。


「ああ! 本当にありがとう、アキ!」


「……僕は何もしてないですよ」


「何言っているんだ、君が色々と教えてくれたからだ!」


 そうかな? 僕はただ元の世界では一般的な物の知識を彼らに教えただけだ。

 元の世界の時から変わらない、このコンビニのオーナーとして、普通の接客をしただけだ。


「そんなことないですよ」


「……なんだか、君はハートンに似ているな」


 愛想笑いをしたら、デイヴィッドさんにそう言われた。……確かにハートンさんとは気が合うというか、似た気質を感じているけど。


「まぁ、君がなんと言おうが、君とスマイルストアのおかげなのは変わらない。感謝を伝えたくて、真っ先に来たくらいだからな!」


 デイヴィッドさんは底抜けに明るい笑顔をしていた。

 ちなみに他の三人は地上の街の方に戻っているらしく、もうすでに九層に向けての準備をしているのだとか。


「この調子ならば九層も行けるかもしれない。だから早速行こうと思っている!」


「……ずいぶんと気が早いですね。休憩とかしないのですか?」


「本来の想定より早くたった三週間で攻略が出来たんだ、この勢いを殺したくはない。それに、九層は前人未到の階層だ。せっかくの最初の一歩を誰にも奪われたくないだろ?」


 なるほど、そう言うことなら仕方ないね。

 デイヴィッドさんはその後、コンビニの商品を買って補充を終わらせた。


「では、行ってくるよ」


「ええ、またのお越しをお待ちしております」


 自動ドアを潜り抜け、入店音にも見送られながら、デイヴィッドさんの姿は外に出た瞬間に消えた。

 手には青い結晶石……〈転移石〉を持っていたから、それで転移をしたのだろう。……本当、すごい力だなぁ。


「店長! ジャックライダーが買っていった物を俺たちにも売ってくれっ!」


「……えっ!?」


 気付けば僕は店内にいたお客様の探索者たちに囲まれていた。ジャックライダーが八層を攻略したことに焚き付けられたらしい。みんなやる気に満ちた顔をしていた。


「お、押さないでくださ……うわっ」


「――全員、ハジメ殿から離れて一列に並べ!」


「は、はいぃ!!」


 押し潰されそうになった時にアイリスさんが助けてくれた。アイリスさんの号令一つで、探索者たち怖がりながらも僕から離れていく。


「ハジメ殿、大丈夫だったか?」


「あはは……いつもすみません。ありがとうございます、アイリスさん」


 なかなか僕では探索者たちには敵わないから、アイリスさんが居てくれて本当に助かっている。


「さて……彼らが買っていった商品についてでしたね」


 アイリスさんのおかげで落ち着いた場で、僕はいつものように接客を再開した。

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