18.ソフトクリームと猫耳少女
「そうだ、アキナイ様! 一つ頼みごとがあるのですが!」
「頼みごと?」
業務提携に関して色々と取り決めを終わらせたタイミングで、ロウシェさんが言い出した。
「実は……あの、ソフトクリームというものを食べてみたいのですにゃ」
「ああ、いいですよ」
「やったー! ありがとございます〜!」
臨時休業中とはいえ、せっかくこれから業務提携する相手だ。ソフトクリーム一つを作るくらいは安いものだよ。
それに最近はワンオペ業務過ぎてその手の少し手間のかかる商品の提供はやめていた。
ロウシェさんは食べてみたかったけど注文するのを控えてくれていたんだろう。
僕はソフトクリームマシンに向かい、コーンを用意し、レバーを動かした。
にゅるりと出てきた白いミルクのソフトクリームをコーンで受け止めて、ぐるぐると巻き上げていく。
「はい、できましたよ」
「おぉ〜〜〜!!」
目をキラキラとさせながら、ロウシェさんがソフトクリームを受け取った。……なんというか、さっきまでは商売人の顔をしていたのに、今は年相応の子供らしさが見えていた。
そしてロウシェさんはチロチロと小さく舌を出しながらソフトクリームを食べ始めた。
「はにゃ〜! ミルク感たっぷりでおいしい〜! 冷たくて甘くて最高〜!!」
ロウシェさんが尻尾を振りながら、満面の笑みをしていた。
ソフトクリームの柔らかい食感とかもすごくおいしいよね。
「ハジメ殿……私にも一つくれないだろうか?」
「いいですよ」
おいしそうに食べるロウシェさんを見て、アイリスさんも食べたくなったらしい。なのでもう一つ作ってあげた。
「作るのがうまいな」
「九年も作り続けていますからね」
初めてソフトクリームを作った時はうまく巻き上げられなくて、歪な形になっていたなぁ……。
まっすぐ、美しく、巻き上げられるようになるまで結構大変だった。
「この土台部分も食べられるのだな」
「サクサクしてておいしいですよ〜」
ソフトクリームのコーン部分もおいしいよね。ちなみにコーンは円錐形を意味しているから、トウモロコシではないんだ。ソフトクリームのコーンは主にウエハースで、トウモロコシは一切使われていない。
それから結局僕も食べたくなって、三人でソフトクリームを食べた。
「ではでは、今後ともよろしくお願いしますね、アキナイ様〜!」
そう言ってロウシェさんはビニール袋を片手に地上へ帰っていった。
……あの中身は帰り際に彼女が買っていった商品だ。
『ソフトクリームもおいしかったのですが、やっぱりコレが一番なんですよね〜!』
彼女が手にしていたのは……猫缶と猫チュールだった。
……そっか! 半分人間で半分猫だもんね! そっちも好みなんだ……! これは言ったほうがいいのかな……それはペット用のやつだって。
結局悩んで僕は何も言わなかった。この異世界では獣人用の食品でもあるってことにしました……!
さすが異世界だ。今までにない商品需要があるみたいだなぁ!!
「なぁ、ハジメ殿。この猫缶というのはおいしいのか? ツナマヨのツナみたいだが」
「人間の口には合わないのでやめておいたほうがいいですよ、アイリスさん」
僕は猫缶に興味を持ったアイリスさんを止め、代わりに人間用のツナ缶を教えておいた。
7/3はソフトクリームの日でしたので。




