16.おにぎりと味噌汁は鉄板
「……ところでハジメ殿、それはなんだ?」
「味噌汁ですよ」
「ミソスープ……」
お客様の客足が途絶えた休憩時間に、僕はもらった昆布のおにぎりと共に、味噌汁を飲んでいた。
これは汁物コーナーに置いてあるカップのインスタント味噌汁だ。一杯分の味噌汁をお湯を注ぐだけで手軽に楽しめる優れものだ。
「おにぎりと味噌汁はとても相性がいいんですよ」
日本人として思う、やはりお米には味噌汁だよね!
異世界に来てお米と味噌汁にありつけなくて苦労する主人公の話とかはよく見たけど、それに比べれば僕は幸運だと思えた。
一から米や味噌を作るという面倒をせずに、手軽に両方食べられるのだから。まぁ、そういう苦労を試行錯誤するのが異世界ものの醍醐味なのかもしれないけど。
「そうなのか! なら私も一緒に食べてみる!」
そう言って、アイリスさんが汁物コーナーに向かって行った。
「なぁ、ハジメ殿……いっぱい種類があるのだが?」
「それぞれ具材の種類が違いますね」
「同じスープなのにこんなに分かれているのか……」
とうふ、わかめ、長ネギ、あおさ、なす、しじみ、豚汁など定番のものはすべて揃えてある。迷うのも無理はない。
「一番シンプルで定番なのはとうふかな?」
「とうふだな!」
アイリスさんがとうふの味噌汁を手に戻ってきた。
会計は後でいいと言ったので、そのまま僕が教えた通りにカップを開けて、中身を入れていく。
最初におにぎりをうまく開けられなかった経験から、僕の説明をよく聞いてくれる。
そして店内に常設されている電気ポットからお湯を注いだ。
「お湯を注ぐだけとは……実に簡単だな」
「インスタントは大体そうですよ。ほらあそこにあるカップ麺は全部そうです」
「あれはなんだろうと思っていたが……そうだったのか」
アイリスさんは今までカップ麺には興味がなかったらしい。まぁ、今までおにぎり一筋だったもんね……。だけど今日から少し変わるかもしれない。
「たったの数秒でできるとは……」
フリーズドライなので、お湯をいれてすぐにとうふの味噌汁が出来上がった。
白い湯気と共に味噌汁のいい匂いが広がってきた。
忙しい現代社会を生きる上で、インスタントのこの手軽さは本当に便利だ。例えば残業で疲れて家に帰った時とか。何も作る気力がない時は、おにぎりや弁当と共にこれを買って帰り、お湯を注ぐだけで温かな食事ができる。
出先のホテルなどで食べるものとしても重宝したことがある。容器を用意しなくてもすでにカップがあるから、実に便利だった。
「……うまい!」
もちろん、味も申し分ない。
アイリスさんは一口飲んで、さっそくおにぎりと食べ合わせていた。味噌汁も口にあったようでなによりだ。
「……? ハジメ殿のはスープの色が違うぞ?」
「ああ、これは赤味噌だからですよ。アイリスさんのは白味噌ですよ」
白味噌、赤味噌、合わせ味噌。これだけでもだいぶ好みが分かれるよね。僕のばあちゃんが赤味噌派だったから僕も赤味噌が好きなんだけど、僕が住んでいた地域の人たちはみんな白味噌派だったから、その時は家庭のギャップを感じたことがある。
ちなみにカップの味噌汁もほとんどは白味噌系だ。ちゃんと赤だしもあるけどね。僕が今飲んでいるのがそれだった。
「ハジメ殿はそれが好きなのか?」
「そうですね、僕はこっちのほうが好きです」
「なら、次は私もそっちを飲んでみるとしよう!」
味噌汁のことも気に入ってくれたみたいだ。もう赤だしと食べ合わせる次のおにぎりについて考えて始めている様子だった。さすが、おにぎりの騎士というべきなのかな……。




