15.千客万来!?
この世界に来てからすで一ヶ月が経過していた。
突然コンビニのオーナーとして、異世界に飛ばされたことには驚いたけどなんとかやっていけそうだ。
正式な営業許可だって頂いたし。
「おはよう、ハジメ殿」
「おはようございます、アイリスさん」
今日もいつものようにアイリスさんが来てくれた。いや彼女だけでなく、最近は騎士団の皆さんもよく来てくれていて、店内にはすでにお客様として彼女以外の騎士の皆さんがいた。
これも調査の一環らしいけどね。アイリスさんもただおにぎりを食べているだけじゃなかったみたい……だよね?
「ハジメ殿、実は今日からこの店の存在が探索者たちに正式に発表される」
「ああ、ついに今日からなんですね」
今までこの地区は封鎖され、このコンビニの存在も秘匿されていたらしい。その情報がついに公になるという。
「事前にトラヴィスから規制について説明されたよな?」
「はい、そこら辺は抜かりなく」
このコンビニで取り扱うすべての商品は規制の対象となった。規制……と言ってもこちらが販売する分には問題はない。ただここで買った商品はロンダール迷宮から持ち出すことは禁止にされたのだ。
うちの商品の一部は、色々とこの世界に影響を及ぼすかららしい。ただうちの商品は迷宮攻略に役立つとして、この迷宮内と地上にある迷宮街オルウェイまでなら持ち出していいことになったそうだ。
これらはすべてロンダール迷宮伯が新しく決めた、迷宮条約だという。
ちなみに書物に関しては検閲中につき全面規制され、迷宮伯の許可を得た人以外は購入ができないようになった。
あのココさんはもちろん許可をもらっているうちの一人だ。やっぱりすごい魔法使いらしい。水曜日になると魔法少女マイが連載されている週刊誌と、他の本もいくつか買っていってくれる。
他の人に売れないものを置いておいても仕方ないので書籍コーナーと、あとプリペイドカードコーナーは片付けておいた。空いたこのスペースをどうするかは今は考え中だ。
「ほら、噂をすれば来たようだぞ?」
「え……?」
入店音が鳴り響いたと思ったら……何十人もの探索者たちが一気に店に流れ込んできた!
「ここか! 異世界の店ってやつは!」
「騎士団やジャックライダーたちが言っていた話は本当だったんだな?」
「い、いらっしゃいませー! ようこそ、スマイルストアへ!」
ぞろぞろとやってきては、すぐに色んな商品を買い込んで、レジに並ばれた。……こ、こんな大人数を相手するのは久しぶりだっ!
「なんだてめぇ、お前みたいなガキが店員かよ?」
「店員って言うか、オーナーですけど……」
態度悪っ! まさか一番に並んできたお客様に絡まれるとは思わなかった。とりあえずさっさと会計して、下がってもらおう……。
「おい、貴様。店主のハジメ殿に向かって失礼だろう?」
「あぁ? ……げぇっアイリスさ、ささん!?」
厳つくて大柄なその人はアイリスさんを見るなり、顔を青くさせて面白いように萎縮した。
「い、いやぁ! ちょ、ちょっと驚いただけですよー! 店主がガキ……いえとてもお若い方でしたので!」
僕に向かって謝るように何度も頭を下げたその人は、会計が終わった瞬間に商品を受け取ってすぐに店の外に出ていった。
「おい、やっぱりあれ、迷宮騎士団のアイリスじゃないか……?」
「ああ、問題を起こした攻略組二人を容赦なく制裁したって言う……」
なにやら他のお客様まで、アイリスさんを恐れながら遠巻きに見ていた。
「あの……アイリスさんってもしかして、すごい人ですか?」
「すごい人かどうかは分からないな。ただ剣には自信がある」
そうアイリスさんが言った瞬間、さらに店内から悲鳴が聞こえてきたのはきっと幻聴ではなかった。
……とりあえず、アイリスさんは怒らせない方がいいってのはよく分かった。
「しかし、やはり探索者は粗暴な者が多いな。大丈夫だったか、ハジメ殿?」
「ええ、大丈夫ですよ。慣れてますから」
ああいうお客様には何度も当たったことはあるから大丈夫だ。
「だが、ハジメ殿では対応できない場合もあるだろう。だから、今日から警備として私たちがこの店に常駐するつもりだ」
「え、いいんですか……?」
確かにアイリスさんや騎士団の人たちが居てくれるなら心強いけど。
「元より騎士団長からの命令でもあるんだ。ハジメ殿は異世界人だからな。こちらの常識を知らない若者だ。探索者たちの中には今のような者も多いし、ここは異世界の商品を扱う店でもある。トラブルが起きないように、我々がこの店とハジメ殿を護ることになったんだ」
「そうだったんですか! ありがとうございます!」
元の世界でも警察官が立ち寄ってくれる時があったけど、その時はとても安心感を覚えるほどに頼もしかった。
アイリスさんや、騎士団の人たちが常駐してくれるならありがたいことこの上ない。
「そうだ、一つ聞きたかったのですが……」
「なんだ?」
「僕って何歳に見えてますか?」
アイリスさんたちとはきっとこれまで以上の付き合いになりそうだった。だからここで一つ確認を取ることにした。
「……私と同じ、17歳くらいではないのか?」
「…………24です」
「えっ……?」
「僕、24歳です……」
「う、嘘だろう!? 成人してる!? しかも7歳も年上だとっ!!??」
あ〜〜〜! やっぱりか! やっぱりかなり年下に見られていたかぁ!!
童顔だって言われていたけど、まさかそんなに年下に見られていたなんて!!
「えっとあの、申し訳ない……」
「大丈夫です……よくあることなので」
「あの、お詫びにおにぎりはいるか? 昆布好きだっただろう?」
なんで慰めの仕方がおにぎりなんだ……? 昆布は確かに好きだし、それを覚えていてくれたのは嬉しいけど。
「あのー……すみません。会計のほう……」
「ああ! こちらこそすみません!」
色々あってストップしていたレジ業務を再開する。なかなか混雑具合は解消しなかったけど、多くのお客様がこのスマイルストアに来店してくれたのは嬉しかった。
ちなみにちゃんとアイリスさんは、昆布を奢ってくれた。……でもだからって十個も奢るのはやめようね? 僕の食は普通なほうだからそこまで食べられないからさ……。
でも気遣ってくれたのは嬉しかったからきちんとお礼は言っておいた。




