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10.あなたとコンビニ

 僕がオーナー兼店長を務めるスマイルストア、ロンダール迷宮第一層店。

 無事に迷宮伯から営業許可証を貰ったことで、正式にコンビニとして営業できるようになったのだが……。


「お客様が来ない……」


 僕は誰もいない店内を見渡した後、カウンターに突っ伏した。

 営業許可を頂いてからすでに三日。客足は全然良くなかった。

 まったく誰も来ないわけじゃない。アイリスさんが毎日朝と夕方にやってきてはおにぎりを買って行ってくれる。ちなみに一度に買えるおにぎりの数には購入制限を付けて、十個までとした。


『ツナマヨと梅干しは確定として……他には何を買うか……昆布もいいし明太子もいい……あっちの五目ご飯も気になる……くっ、悩ましいな!!』


 アイリスさんはその十個を買うだけでも、毎回おにぎりコーナーの前で何の種類をいくつ買うか悩んでいた。正直お客様が他に来ないから買い占められてもいいのかもしれないけど……他の客にも同じことされても困るしこれでいいかな。……まだ他の客来てないけど。


 あとはトラヴィスさんも来ていたよ。


『あのコーヒーの味が忘れられなくて……とりあえず十杯ほど頼めますか?』


『何がとりあえずなんですか、カフェイン中毒になりますよ!?』


 なんなの、騎士団の人たちはアメリカンサイズで頼むのが基本なのかな??

 カフェイン中毒について知らなかった様子なので、僕はトラヴィスさんに説明して、コーヒーの飲み過ぎに注意するように言った。

 異世界の人だから身体の作りとか違うかもしれないけど、何があるかわからないし。ちなみにカフェイン中毒にならない為には、一日に飲むコーヒーは三杯までに抑えておいたほうがいいよ。コーヒーだけじゃなくてエナジードリンクとかも気を付けてね。


 まぁそんなことがあったけど、この三日間来たお客様はこの二人以外には居ない。


 やっぱり立地がくそ悪いんだろうなぁ……。まったく誰だよこんな場所に店舗を置いたのは……。

 あー……でも、宣伝も何もしてないからまったく来ないのもそうか。

 でも地上に行っても言葉は話せないし、探索者たちにどうやって宣伝すればいいやら……。


 そんな風に悩んでいた時だ、入店音が鳴り響いた。


「いらっしゃいませ! ようこそ、スマイルストアへ!」


「ふぅん、これが異世界の店ね?」


 そこに居たのはアイリスさんでもトラヴィスさんでもない知らない女の子だった。

 新しいお客様だ! 僕は嬉しくなって明るい笑顔でその女の子を出迎えた。

 まず目を引いたのは黒髪のツインテールだ。僕も日本人らしく黒髪だけど、その子の黒髪は同じ色の髪とは思えないくらいに艶があった。

 服装は黒いローブを来ていて魔法使いみたいだった。いやというか、彼女の身長を越すほどの杖を手にしていた。うん、これは間違いなく魔法使いっぽい!


「あんたが店主であってるわよね?」


 気の強そうな桃色の瞳が僕を品定めするように見ていた。僕より年下の子に睨まれている感じがするけど、まぁここは大人の対応をしておこう。


「はい、そうです。オーナー兼店長の春夏冬(あきない) (はじめ)です」


「……こんな奴がねぇ?」


 170センチある僕より頭一個分は背の低いその子は、下から見上げながら、さらに近づいて僕を見てきた。相変わらずジロジロ無遠慮に見てくるんだけど……僕の顔おかしいのかな? 寝癖とかなら直したはずなんだけど。


「あんた、魔力も何もないくせにその翻訳魔法どうやってるのよ?」


「え、そんなこと分かるんですか!?」


「あたしのこと一体誰だと思ってるのよ? ……いや、あんたは異世界人だったわね……」


 どこの誰かもわからない女の子は、仕方なさそうに自己紹介をしてくれた。


「あたしは偉大なる魔法使いジョナスの弟子が一人、ココ・ファミリアよ!」


 すごく偉そうにココさんは自己紹介をしてくれた。師匠のジョナスさんって人がどれほど有名な人かわからないけど、この話し方と態度からしてココさんは優秀な魔法使いなのかもしれない。


「で? さっきの答えは?」


「ああ、それはですね……。僕がやっているのではなく、どうやらこの店舗が僕にその魔法を掛けているみたいで……」


「確かにあたしには掛かった感じがしないわ。あんただけに効果があるようね?」


 ココさんは説明を聞いたら、店舗を見渡した。


「……駄目ね。あたしでも全然、情報が見えないわ……」


「えっと、何をしているんですか?」


「この店の調査に決まってるじゃない」


 何を言っているんだと言いたげに、ココさんは僕を睨んだ。


「調査なら迷宮騎士団の方がされましたが……」


「その騎士団から頼まれたのよ。魔法使いの観点から調べてくれって」


 おっと……まさかの追加調査だった。でも、そういうことなら無碍にはできないな。僕はココさんの調査に協力することにした。


「ちょっと! 今のどうやったのよ!」


「このパソコンで商品を入れ替えただけです」


「転移魔法をボタン一つで……!? あたしにもやらせなさい! ……は? なんで動かないのよ!」


「あなたには操作権限がありませんって、画面に出てますね……」


「嘘でしょ!? 何でよぉ!」


 どうやらバックヤードにあるパソコンは、オーナーである僕にしか操作を受け付けないらしい。画面に表示されている文字も日本語で、ココさんにはまったく読めないそうだ。


「神の力……転移魔法……ちょっとでも扱えると思ってたのに……」


 ココさんはすごく残念だったのか、その場に崩れ落ちていた……。


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